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Think Elegant !

ファッションを通して自らの人生と向き合い、美しいと感じるスタイルを追及するブログです。

LA TERRA(ラ テッラ) で名刺ケースをビスポークしてみた!

皆さま、こんにちは!

本日は「LA TERRA(ラ テッラ) で名刺ケースをビスポークしてみた!」と言うテーマで、少し前にオーダーをし、先日受け取ったラテッラの名刺ケースをご紹介したいと思います。

それでは、まいりましょう。

■クラシックをニューノーマルな生活様式に合わせて再解釈したLA TERRA(ラ テッラ)
さて、LA TERRA(ラ テッラ) とは私がお世話になっている北参道にあるメンズクロージングのショップであるSharonさんのオリジナルブランドです。

私はこれまでペッカリーグローブを色違いで購入したり、
ラテッラ_ペッカリーグローブ_7

製作はイルクアドリフォリオを主催する久内氏の奥様が手縫いで行っているクラッチバックも色違いでビスポークをしたり、
ラテッラ_クラッチバック2_9

更にはリラックス感とエレガントさが同居しており、極上の履き心地がクセになるスエードブーツ(木型及び製作はイルクアドリフォリオのアトリエ)などを購入してきました。
ラテッラ_スエードブーツ_2

このような中で、近年はブランドの方向性がよりハッキリと打ち出されたようで、クラシックなスタイルであるサルトリア・ソリート、直井重明氏のビスポーク、そして手縫いのMTMことサルトリア・シャロンに対して、クラシックスタイルをコロナ禍を経た現代の空気感で再解釈し、リラックス感とチャーミングさを有する大人のニューノーマルなカジュアルウェアを展開されています。

例えば、最近のトランクショーでは多くのオーダーが入ると言うコンフォートジャケット。デザインとしてはPコートのような雰囲気がありますが、柔らかい襟の表情や広めにとっている肩幅、そしてボックス型のシルエットなど、やりすぎ感のない、大人が着ることの出来るオーバーサイズシルエットが特徴的です。



体に沿うことのないオーバーサイズなシルエットをクラシックなスーツやジャケットに用いるような一流の生地を用いて、あえて手縫いで仕立てると言う、大人でないとオーダー出来ない、超贅沢な仕様です。化繊やマシンメイドではない、テーラード仕立ての大人のためのリラックス・カジュアルウェア。

他にもニットパーカーやクルーネックロングスリーブニットなど、ラテッラのコンフォートジャケットのインナーに合わせることも出来るアイテムも新作として登場していますし、


コンフォートジャケットもブレザーのような仕様であったり、


ミリタリー起源のユーティリティジャケットをカシミアかつ手縫いで仕立てるなど、世界で類を見ないアイテムを多数提案しています。


クラシックウェアをビスポークすることに慣れた顧客からは、近年のトレンドであるリラックスしたオーバーサイズなサイズ感や、カジュアルな空気感の中で大人が着ることの出来る世界唯一のアイテムと言うことで支持を受けており、今ではトランクショーのオーダーの半数を占めるほどになっているそうです。


『顧客の体型に沿わせることがビスポークにおける重要な価重の1つである』と位置づける欧米の価値観では到底生み出すことの出来ない提案であり、和装から洋装へと舵を切っていった、日本の柔軟な感性ならではの提案かなと感じています。今後は日本をはじめ、もしかしたら海外のサルトや職人の中にも、同じようにクラシックとは距離を置く、カジュアルなアイテムを高級な服地と手縫いで仕立てると言うスタイルを模倣していく方が出るのではないかと感じています。

私は自身のスタイルの中心をシンプルでベーシックかつ、エレガントなスタイルに置いているので、リラックス感とチャーミングさのあるラテッラのニューノーマルなアイテムをビスポーク/MTMしたことはまだないのですが、店頭で試着をしてみると「コレ、良いかも!?」と感じるアイテムが複数あったりしますので、そのうち私自身のスタイルに変化があれば、オーダーすることもあるかもしれないと思っています。

■LA TERRA(ラ テッラ) で名刺ケースをビスポークしてみた!
このような中で、先日参加させて頂いたイルクアドリフォリオのトランクショーにおいてビスポークしたものがありました。それが、名刺ケース!

身の回りの様々な変化に合わせて、気分を新たにするために名刺ケースを新調することにしたのです。ラテッラの革小物、そして靴はイルクアドリフォリオのアトリエであったり、久内氏の奥様が手縫いで仕立てていますので、イルクアドリフォリオのトランクショーのタイミングでオーダーすることにしました。

若干トラブルがあって納品が遅れてしまったのですが、先日待ちに待った名刺ケースを納品頂きましたので、ご紹介をしてみたいと思います。


今回選んだ革は、初めてビスポークしたクラッチバックで用いた革と同じ、ワインハイマー社のワープロラックス。生後6か月までの仔牛の革なのでキメが細かく、革自体も薄くて柔らかさがあり、何より上品です。
LaTERRA_クラッチ2

と言うことで、納品を頂いたのがコチラ。色はグレージュになります。
ラテッラ名刺ケース_1

サラッとしており、手に馴染みの良い革質が特徴的。ワープロラックスの上品な雰囲気も気に入っています。
ラテッラ名刺ケース_6

今回はビスポークなので、細かな仕様はイメージを久内氏と共有させて頂きました。
ラテッラ名刺ケース_2

背面にはポケットを付けて頂き、名刺やカードを入れることが出来るようにしてあります。
ラテッラ名刺ケース_3

ラテッラ名刺ケース_5

開けるとラテッラの刻印があり、名刺を収納する箇所とは別に、蓋裏にもポケットを二つほど設けて頂きました。
ラテッラ名刺ケース_4

少し前に納品を頂いた、カザミノのトートバックと色合いは近いのですが、シボの大きさや雰囲気は若干異なります。それでもともに手縫いで仕立て頂いているので、柔らかい、独特のリズミカルなステッチなどに共通性を見出すことが出来、大満足でした!
ラテッラ名刺ケース_7

ちなみに革やデザインによって値段の変動はあると思いますが、私が選んだ革とデザイン、仕様での価格は3万3千円(税込)。自分だけのオリジナルの名刺ケースを手縫いかつ、好みの雰囲気で仕上げてもらえると言う観点で言えば納得感の高いプライスではないでしょうか。

他にもコインケースやキーホルダー、ミニウォレットなど、様々な革小物をオーダーすることが出来るようですので、イルクアドリフォリオの靴をビスポークされている方や、ラテッラのスタイルが好きな方にはおススメです!気になる方は是非、次回のトランクショーにて相談されてみてはいかがでしょうか!?





SALEでLA TERRA(ラ テッラ)のペッカリー・グローブを追加購入!

こんにちはっ!
先日、セールで秋冬の定番小物であるグローブを追加購入しましたので、本日は「SALEでLA TERRA(ラ テッラ)のペッカリー・グローブを追加購入!」と言うタイトルで、これをご紹介したいと思います。

それでは、まいりましょう。

■7年ちょっとぶりに購入した、ペッカリーグローブ
今から遡ること、7年と3カ月ほど前に、自身初のペッカリーグローブを購入していました。

LA TERRA(ラ テッラ)のペッカリー・グローブを購入!

当時憧れていたペッカリーグローブを購入したことがとても嬉しかったであろうことが、文面から伺い知ることが出来ます。(笑)その際に購入していたのはベージュのペッカリーグローブでした。
LA TERRA(ラ テッラ)のペッカリー・グローブ①

他にもDENTSのディアスキンのブラウンカラーのグローブも所有しているのですが、やはりスタイリングの際に革小物の色を揃えることは基本中の基本。
DENTS デンツ ディアスキン

これまでブラウン系の靴を履く際にはコーディネートの色合いによってベージュやブラウンを使い分けていたのですが、ドレッシーな黒靴を履く際にはブラックカラーのグローブがないために、寒いのを我慢してポケットに片手を突っ込むことでしのいでいました・・・。(汗)

しかし冬の乾燥した風の冷たさは歳を重ねた私にはキツく、これはブラックのグローブも買わないと体がもたない!と言う危機感だけは持っていました。それでも”我慢をしているうちに春が訪れる”と言うことを、ここ数年ほど繰り返していたのです。このような中で、先日Sharonさんに訪問した際にブラックのペッカリーグローブがセールになっていることを知りました。

いや、正確に言うとオンラインストア上でセールになっていることは認識していたのですが、手が大きくはない私のサイズは「7H」であるところ、ブラックで在庫のあったものは「8H」だったために、”大きすぎる”と言う理解でいたのです。

ところが、店頭にて何気なく手にはめてみると、「合う!」ではありませんかっ。(笑)

今回購入したラテッラのペッカリーグローブはイタリアメイド。どうやら、日本人の職人さんのような精緻さと言いますか、手先の器用さ?があるわけではないので、グローブのような小物アイテムはどうしても個体差にバラツキが出る傾向が強いようです。

確かにサイズ毎にパターンが存在していたとしても、グローブのような小物ですと縫い代が少しズレるだけで、サイズ感が異なってしまうことは容易に想像がつきますよね。

本来の「8H」サイズだと私には明らかに大きいのですが、今回はイタリアメイドならでは?の個体差によって、私にとってはとてもハッピーなお買い物となりました♪(笑)

■カシミアコートに合わせるなら、ペッカリー
と言うことで、早速連れ帰ってきたのが、こちらのグローブになります。
ラテッラ_ペッカリーグローブ_1

ペッカリーならではのシボの表情、しっとりとして、手に吸い付くような質感がたまりません。
ラテッラ_ペッカリーグローブ_2

今回私が購入をしたのは、ベージュのペッカリーグローブと同じ、アンライニング仕様。カシミアライニングもぬくぬくした感じも良いのですが、コートの胸ポケットに入れる際にどうしてもボリュームが出ることと、東京で過ごす冬であれば、アンライニングでも十分寒さをしのぐことが出来ると言う実感があること。そして、アンライニングならではの”手に吸い付く感覚”も魅力的でした。
ラテッラ_ペッカリーグローブ_3

なお、こちらは「7H」を着用した際のサイズ感。
ラテッラ_ペッカリーグローブ_5

そしてこちらが「8H」。確かに甲周りを中心にやや余裕を感じるのですが、指の長さなどには全く違和感がなく、バックを持ったり、交通系ICカードを取り出したりと言ったグローブをしたまま操作する動作には支障はないと言う判断でした。
ラテッラ_ペッカリーグローブ_4

実際に「7H」と「8H」を重ねてみても、大差がない・・・。(笑)
ラテッラ_ペッカリーグローブ_8

こういった良質な革小物は1度買ってしまえば、余程のことがないと買い替える必要はないですし、トレンドの影響も受けません。よって今回のようなセールでお得にマイサイズを購入することが出来るのであれば、その機会を逃さない手はないかなと思っています。
ラテッラ_ペッカリーグローブ_7

個人的にはカシミアのコートの胸ポケットにはペッカリーグローブを入れて歩きたいですし、手にはめても質感が合うように感じていますので、残り短い冬と、また数か月後にやってくるであろう冬に活躍してくれることを楽しみにしています。

ちなみに、私が購入した際にはセールは3月頭で終了予定と伺っておりますので、もしグローブの補充を考えている方は、是非店舗に訪問し、試着されてみてはいかがでしょうか?今週末あたりが最後のチャンスかもしれませんよ!?
LA TERRA(ラ・テッラ) SUEDE CASHMERE GLOVES
・LA TERRA(ラ・テッラ) DEER SKIN CASHMERE GLOVES






装いとは考えていることが表現された結果である:PRADA Re-Nylon ベースボールキャップ

こんにちは!
本日は「装いとは考えていることが表現された結果である」と言うテーマを掲げながら、少し前に購入をしておりました小物アイテムを取り上げてみたいと思います。

それでは、まいりましょう。

■内側のモノは自然と外側に出る
人間って年を重ねると、自然と人間性が顔(表情)に現れると言いますが、皆さんはどう思われますか?

私はその通りだと、実感していたりします。単純に良い人そう、悪い人そう、と言う人柄のお話だけではなく、どういった人生を歩んできたのか、どんな思想を持っているのか、そんなことが自然と顔や表情に現れてくるような気がしています。

もちろんそれは、年を重ねた大人だけのお話ではありません。

例えばお子さんをお持ちの方であればご実感頂けると思うことが、「子供のウソ」(笑)。子供であれば大なり小なり、怒られることを恐れて、または何か別の理由で大人に対してウソをつくことってあると思うのです。ただ、自分の子供であればなおさら、それが嘘だと分かってしまう。普段とちょっと違う目の動き、表情などによって、親は子供のウソをいとも簡単に見抜いてしまうのです。

また、学校や幼稚園で楽しいことがあったのか、嫌なことがあったのかなど、その日子供たちが経験した出来事が、自然と表情に現れることもある。

他にも、若いころは厳しい目つきだった方が結婚し、子供を持つと、柔和で柔らかい目つきに変化する、なんてこともある。それはきっと、外側が変わったのではなく、内側が変わったからなんだろうと思うのです。

つまるところ、人間と言う動物は、内側のモノが自然と外側に出てしまう動物なのではないか、と感じています。

そしてそれは、きっと装いと言う観点でも同じことが言えるのかなと。服の好き嫌いを問わず、その人が選ぶ服と言うのは、どこかでその人の内面であったり、思想や考え方を、本人に代わって代弁しているように思います。

それはセンスの有無や、適切な装いであるのか否か、また服としての良し悪しと言う意味ではなく、装いからその人が何を考えているのか、感じているのか、大切にしているのかが、なんとなく見えてくる。

例えば普段はカットソーやリラックスしたパンツを履いてる方が、ネクタイはせずともジャケットを羽織ってきたり、シャツを着てきたら、ちゃんと見せようという意図、考えが働いているのだろうと想像しますし、逆に普段はスーツとシャツ、ネクタイを締めている方が、ジャケパンにノータイで現れたら、よりリラックスした、カジュアルな雰囲気を望んでいるのかもしれないと思ったりするわけです。

装いとは考えていることが表現された結果である。

私は服、とりわけ自分が着る服が好きで興味があるのですが、最近ではそんな周りの方々が着ている服の裏側にはどんな思想、思い、事情があるのだろうと想像してみることもまた、興味をもっていたりします。

■PRADA Re-Nylon ベースボールキャップを買ってみた
そんな話をした後でなんですが、少し前にPRADAのRe-Nylon ベースボールキャップを買ってみました。最近オフの日にキャップを被ることがあるのですが、基本的にはアメリカンカジュアル、または場合によってはストリートカジュアルのスタイリングになることが多いのです。
プラダ_ベースボールキャップ1

ただ、ちょっとシックに、大人っぽいカジュアルスタイリングを楽しみたいなと言うときもあり、ブラックカラーのキャップを探していました。いや、正確に言うと、New Eraのブラックキャップを購入してみたのですが、どうしてもカジュアル感が抜けきらずに違うかなと。


そんな時に思い出したのが、プラダのベースボールキャップでした。


私がプラダに憧れを持ったのは、記憶が正しければ大学生のころ。友人がエルメスのキャンバストートを買ったり、私はプラダのショルダーバックを買ったり、ラグジュアリーブランドのアイテムをまとってイキリたいお年頃だったと思います。(笑)

プラダのイメージと言えば、シンプルでスタイリッシュ。余計なデザインがなく、ミニマルなスタイルがクールだと思っていました。

学生時代はプラダの服もいくつか買っていました(ラグタグで。笑)が、その後はだいぶ前に旅行でイタリアへ行った際、せっかくだからとプラダのリュックを買った程度。年を重ね、また自分の趣向の中でラグジュアリーブランドに興味を持つことはほぼなくなっていました。ところが、ここ最近、シックでクール、大人っぽいイメージがあるプラダのシンプルなTシャツを買ってみたり、たまに身に着けてみたくなる気分になるのです。特に子供と一緒に遊んだり、出かけたりするカジュアルシーンにおいてそれが顕著。

王道のアメカジ、ストリートなどのカジュアルスタイリングも良いのですが、あえて子供と遊ぶ際にラグジュアリーブランドのアイテムを取り入れながら、シックで大人っぽい雰囲気の装いで公園や外で遊ぶ。クラシックなジャケットやビスポークシューズを身にまとって子供と外で遊ぶのには抵抗がありますが、ラグジュアリーブランドであれば全く問題はありません。

そこで、プラダのベースボールキャップを実際に買ってみたわけです。
プラダ_ベースボールキャップ2

世の中には様々なラグジュアリーブランドがありますが、自分の中ではブラックのイメージが強いプラダは、カジュアルシーンの中でも、あえてシックに、大人っぽく装いたいときにぴったり。

今回私が選んだのは、ナイロン素材のブラックカラーのキャップ。
プラダ_ベースボールキャップ3

6パネルのベーシックなベースボールキャップのデザインを採用しており、
プラダ_ベースボールキャップ5

キャップのサイドには、アイコニックなエナメルメタルのトライアングルロゴが入ります。
プラダ_ベースボールキャップ7


最近はSDGsをはじめ、アパレル業界にもサステイナブルを意識した商品作りを求める声が日に日に高まっていますが、プラダの良いところは、ブランドを代表するナイロン素材をしっかりと切り替えたこと。プラダと言えば、リモンタ社の強靭なナイロン素材をアイテムに用いて、一世を風靡したことはご存知の通り。
プラダ_ベースボールキャップ4

それでも最近では『海から回収されたプラスチック、漁網、繊維を再利用、浄化して作られた再生ナイロン糸のRe-Nylon』を製品に用いることで、サステイナビリティを意識した商品を積極的に開発をしています。
プラダ_ベースボールキャップ6

ファッション業界の出すゴミの量の多さや環境に与える負荷の大きさは度々メディアで取り上げられていますし、私自身も多少なりとも勉強をしています。そして自分自身の子供や将来の世代のことを考えると、自分(の時代)さえ楽しめれば、良ければよいという考えを持つことは出来ない状況。
プラダ_ベースボールキャップ9

では服を買わないという選択肢が持てるかと言われると、私の人生における大きな柱の1つになっているファッションをとることは難しい。それであればせめて自分が選ぶアイテムには、そんな環境負荷のことを考慮したアイテムを出来るだけ取り入れていこう、また極力不要なものは買わずに行こうという意識が、せめてもの罪滅ぼしになるのかなと。
プラダ_ベースボールキャップ11

シンプルでベーシックでありながら、シックでモダン。更に環境意識の高い人にとっても選びやすいブランドが、プラダであるように感じています。自分自身が感じていること、表現したい要素が詰まったプラダのベースボールキャップ。サイドのロゴプレートはもう少し小さくても良い気がしていますが、これから軽装となる夏の日に、シンプルな無地の白Tや黒Tに合わせて活用したいと思います。
プラダ_ベースボールキャップ10














理想の鞄を求めて:Kazami no トランクショー at Sharon:後編

こんにちは!
本日は「理想の鞄を求めて」と言うテーマの後編と言うことで、先日5月14日-15日にかけて北参道にあるセレクトショップであるSharonさんにて開催されていた、ビスポークのバックを手掛けているKazami no(カザミノ)の トランクショーにて私がオーダーさせて頂いたバックを取り上げたいと思います。

それでは、まいりましょう。

■至高のトートバック
この度私がオーダーをしたのは、トランクショーの会場となったSharonさんのインスタグラムにも投稿されていた、トートバックになります。しかも革の色やステッチなどのディティールもほぼいじることなく、このままでオーダーをさせて頂くことに致しました。



私はこれまでスーツやジャケット、靴やクラッチバックをビスポークさせて頂いてきましたが、私にとってビスポークとは何か?と言うと、やはり職人さんが培われてきた美意識や世界観を受け入れることだと感じています。従って最初の1着、1足は特に、自らの要望は最低限に抑え、まずは職人さんの提案を極力そのまま受け入れてみることを大切にしています。

そういった考えから、今回もSharonさんの店頭に置いてあり、トキメキを感じたトートバックをそのままオーダーさせて頂くことにしました。
Kazamino_カザミノ_トランクショー4

色はトープ。革にはドイツのタンナーのシュリンクレザーを用いており、見るからに柔らかいフォルムを持ち、Kazami noのアイコン的存在ともなっているセンターに入るベルトとオリジナルのバックルがエレガントさを醸し出します。
Kazamino_カザミノ_トランクショー8

バック本体は継ぎ目無しの革を贅沢に使用し、インナーには大き目のポケットが2つ備わっています。また、ベルトはギボシで外すことが出来る仕様。
Kazamino_カザミノ_トランクショー6

革の裁断面であるコバは「切り目」で処理。番手の違うヤスリを数種類使い、荒いものから細かいモノへと変えながら綺麗に処理をしていく、結構手間暇のかかる部位。職人さんの仕事に向かう姿勢や丁寧な仕事ぶりが分かります。ちなみに革鞄で有名なエルメスは塗料を塗ってコバ処理をしていますよね。この方法だと見た目は綺麗になるのですが、使っていると割れたり、剥げたりして補修が必要になるので、カザミノでは塗料は塗っていないそうです。
Kazamino_カザミノ_トランクショー7

柔らかいフォルムが出るように調整を重ねたというだけあって、とても優しい表情です。
Kazamino_カザミノ_トランクショー5

また、ベルト部分には杉山氏がデザインをして作成した、真鍮製のオリジナルバックルが備わっています。このバックルは個人的にかなりツボ。繊細なラインが少しフェミニンで、これがエレガントな雰囲気につながっている気がしています。


今回のオーダーで私が唯一要望を出したのが、底面に薄い芯材を入れて補強をすること。実は仕事においてノートPCを持ち歩くことがたまにあるのですが、底面が柔らかいとたわんでしまい、フォルムが崩れる原因となるのです。Sharonさんにサンプルのトートが置いてある時にちょうどPCを持ち歩いていたので試しに入れてみたところ、思ったよりたわみは少なかったのですが、念の為、その点のみ要望としてお伝えさせて頂きました。
Kazamino_カザミノ_トランクショー10

今回のトランクショーでは製作期間の関係もあって受注数を6つに限定すると伺っていましたが、既にその枠を超える?ようなオーダー数が入っている予感・・・。完成には6~7か月ほどかかりそうとのことでしたが、職人さんが自分の為だけに時間を使って作り上げてくれるということが本当のラグジュアリーであるようにも感じます。

完成まで楽しみに待っていたいと思います♪

■Kazami noのラインナップ
今回のトランクショーでは私がオーダーさせて頂いたトートバックの他、ちょっとした買い物の際に財布や鍵などを入れておくポーチ型のバックとリュックがラインナップとして展示されていました。
Kazamino_カザミノ_トランクショー3

他にも1泊程度の旅行鞄であるオーバーナイトバックもあるようですが、制作にかなり手間暇、時間がかかるそうで、今回のトランクショーではラインナップから外れたとのことでした。


今後もクラッチバックなど、ラインナップに加えたい鞄はあるようですが、嬉しい悲鳴か?サンプルを制作する時間がなかなか取れないと仰っておりました。ただ、思想とスタイルに共感したファンの1人としては、是非新しいラインナップも見てみたい気がします。(笑)

ちなみに、トートバック以外ではこちらのリュックがかなり良かったです!先日「スーツにリュックはアリか、ナシか?」と言う記事をお送りさせて頂いたこともあって!?、もちろんスーツやジャケパンに合わせる気はありません。(笑)ただ、トランクショー当日は週末と言うこともあってカジュアルスタイルで訪問させて頂いていたのですが、そのスタイルに合わせて背負わせて頂いたら、かなり良き!


背負い心地も良く、リュックの納まる高さも高すぎず、低すぎず、絶妙。また手持ちも可能な仕様となっており、その雰囲気の良さと実用性の高さにかなり惹かれた次第です。正直子供と公園に行くと言ったアウトドアシーンでしかリュックは使わないのですが、Kazami noのリュックであれば、それ以外のシーンであってもアリかもと強く感じましたよ。タイミングあれば、こちらもチャレンジしたみたいと思います。

次回、SharonさんでのKazami noのトランクショーがいつになるのか分からないのですが、気になる方は是非、お問合せしてみてはいかがでしょうか!?

私を同じようなスタイルを好まれている方には特におススメで、唯一無二の理想の鞄となってくれると思いますよ!





理想の鞄を求めて:Kazami no トランクショー at Sharon:前編

こんにちは!
先日5月14日-15日にかけて北参道にあるセレクトショップであるSharonさんにて開催されていた、ビスポーク バックを手掛けているKazami no(カザミノ)の トランクショーに参加させて頂きました。よって本日は「理想の鞄を求めて」と言うテーマを掲げて、その時の様子をご紹介したいと思います。

なお、本記事は前編と後編の2部構成とさせて頂き、前編では私がカザミノのバックに惹かれた理由や、職人である杉山氏の秘密?魅力?に迫りつつ、後編では私がオーダーしたバックについてご紹介したいと思います。

それでは、まいりましょう。

■ようやくみつけた、理想の鞄:Kazami no(カザミノ)
私が「これぞ私にとっての理想の鞄であり、アガリの鞄だ!」と直感的に感じて参加させて頂いたのが、杉山和秀(すぎやまかずひで)氏が立ち上げたビスポークバックのブランドである、カザミノのトランクショーでした。
Kazamino_カザミノ_トランクショー1
※承諾を頂き、撮影しています。

実は少し前からSharonさんの店頭にはカザミノのサンプルバックであるトートバックが展示されており、またイルクアドリフォリオのトランクショーにて、職人の久内氏が仕事道具を収納し、愛用していたバックがカザミノのバックであったため、その存在は見聞きしておりました。



そして、それらのバックを見た瞬間、これは「自分にとっての理想の鞄だ!」と言うトキメキを感じたのです。

これまで私はいくつかのブランドのバックを使ってきましたが、現時点でビジネスにおいて主に愛用しているのが、CHAMBORD SELLIER(シャンボール セリエ)のトートバック。エルメスやカルティエと言ったフランスの有名メゾンの鞄の生産を請け負ってきたことでも知られるファクトリーが、2004年から展開を開始したオリジナルブランドです。

※私が愛用しているのは、上記モデルの色違いです。

シンプルだけれど上品さのある表情が気に入っており、またブランドとしての主張も強くないので、ビジネスにおいても使いやすい点が重宝しております。

またトートバック以外にも小型、中型のクラッチバックも3種類ほど保有し、オフの日を中心に利用。

※上記は小型のクラッチバック

そしてオンの日でもPCを持ち歩くことのない日には、Sharonさんのオリジナルブランドであるラテッラ(製作はイルクアドリフォリオの職人である久内氏の奥様が担当)のクラッチバックが大変お気に入り。
LaTERRA_クラッチ15

A4サイズの書類が無理なく入る大きさと、持った際の手のひらへの馴染みが抜群で疲れが少ない上、全て手縫いで仕立てられた独特のステッチ、風合いが、自ら好んで着用している手縫いの柔らかい風合いを持つスーツやジャケットと抜群に相性が良いのです。気に入りすぎて、色違いで2つ目もオーダーしたほど。
ラテッラ_クラッチバック2_7

あまりにも気に入りすぎてバックもオーダーしたいくらいでしたが、現在は小物アイテムとクラッチバックのみしか受注していないとのことで、バックの受注が開始されるのを期待していました。

もちろん世の中にはビスポークバックを手掛けている職人さんやブランドは多数あり、それらも一通りチェックしていたのですが、自分好みのスタイルに合わせようとすると、雰囲気が硬すぎる、または主張が強すぎるものばかりでした。

日本人の職人さんが制作する鞄はどれも美しく、評判も良さそうなのですが、どんなに素晴らしくても自分のスタイルに合わないのであればしょうがない・・・、と言う状態だったのです。

このような中で今回出会いの機会を頂いたのが、上述した杉山氏が手掛ける”カザミノ”だったのです。何がそんなに良いのか?何が私のトキメキを想起させたのかと言うと、Sharonさんのトランクショー開催告知ページに記載されていた、カザミノの職人である杉山氏の言葉に凝縮されています。

『柔らかさがあり、主張し過ぎない、しかし普通とは少し違う鞄を目指しております。』
※Sharonさんのページより引用

日本におけるスーツのビスポーク文化と言うのは、英国から入ってきているわけです。もちろん最近はイギリスからイタリア、更にはもっと砕けたリラックスしたスタイルへとトレンドは大きく変化しておりますが、クラシックの世界におけるベースは英国。よって靴の世界も、鞄の世界も、英国的な表情を持つものが多い。特に日本人の職人さんが仕立てる靴や鞄のビスポークアイテムの中心は英国的なスタイルだと感じています。

実際、クラシコイタリアと言われるスタイルがブームになったのが90年代くらいからと言われていますが、当初はメディアが煽っていただけで、本質的に市民権を得たのはここ20年くらいだと思うのです。そうなると、現在トップ前線で活躍している職人の方々はイタリアよりイギリスに馴染みがある方が多く、自然とイギリスよりのスタイルに影響されている方が多いのではいかと個人的には考えていたりします。

なお、英国的なスーツと言えば、肩幅を広めにとり、肩にパッドを入れて構築的な、威厳あるカチッとしたスタイルが特徴的。まさに”スーツは鎧”ではないですが、装いが威厳や階級を表してきたという歴史が、そこに現れているわけです。もちろん英国のテーラーもトレンドの変化によってイタリア的な、ソフトな風合いに変化をしていますが、アイデンティティーを失うほどの変化ではありません。

そして、これらのスーツに合わせて持つことを想定して作られたバックは、自然とカチッとした頑丈なつくりのバックになりますね。


英国的なスーツに合わせるのであればスーツのスタイルとのバランスもとれ、トータルとしてまとまったスタイリングとなると思うのですが、私が好んでいるイタリアの中でもナポリのように、特に柔らかいスタイルのスーツに合わせると主張が強すぎて、浮いてしまうほどのアンバランスさが出てしまいます。


よって自らのスタイルに合わせ、バックも硬さのない、またクラシック過ぎないモダンさのあるものを求めていたわけですが、カザミノのバックは見た瞬間に感じる「柔らかさ」と「モダンな上品さ」が自分のスタイルにピッタリだと思ったのです。

更に、多くのブランドにありがちな「主張の強さ」が良い意味でなかったことも大変気に入りました。やはり職人さんが自らの手で生み出したものは、当然”作品”、そして”子供”であり、世の中に対して強くアピールしたくなる気持ちはわかるのです。ただ、その想いゆえに、あまりにバックの主張が強いと装い全体におけるバランスが崩れてしまうので、取り入れにくいというのが個人的に思っていること。

そのような中で『人と洋服を引き立てる鞄を提供すること』をテーマにしているカザミノのバックは、強く主張をすることなく、それでも見る人が見ると普通のバックではないことが分かる点が自分の感性に刺さったわけです。それはまさに、私が求めていた”理想の鞄!”と言った印象でした。

■Kazami no(カザミノ)の職人:杉山和秀氏の魅力
今回参加させて頂いたシャロンさんで開催されたカザミノのトランクショーですが、私は14日(土) 13時からの1時間枠で予約をさせて頂きました。事前にモデルや革、色などの仕様を決めていましたので、オーダーに関するビィスポーク(話し合い)は早々に済ませて、職人である杉山氏のバックグラウンドや、どのような経緯でこれまでの日本人の職人さんには見られなかったスタイルが生み出されたのか、色々とお話を伺ってきました!
Kazamino_カザミノ_トランクショー3
※承諾を頂き、撮影しています。

一応小さなブログを持っていることをお伝えし、お話させて頂いた内容を記事として公開することに承諾を頂きましたので、以下に、その時伺ったお話をご紹介させていただこうと思います。
※記事公開後に訂正等が入った場合には適宜修正させて頂きますことを、予めご了承ください。

まずは杉山氏ご自身について。Sharonさんのトランクショー告知ページにも記載されていますが、杉山氏はまさに先月、2022年4月まで、外資系IT企業に勤務されていたビジネスマンでした。

一言でIT企業と言っても実はかなり幅広い業界なのですが、中でも杉山氏は時間的、体力的、精神的にかなり負荷のかかる業務に携わっておられたようです。もちろん、その世界のトップ前線でこれまで活躍されて来られたので、そのままのキャリアを進んでも大きな成果を残されたと思うのですが、ご自分の理想や、より充実した人生を送るために、趣味が高じて始めたビスポークバックの職人として2022年5月に独立。今回Sharonさんにて開催されたトランクショーが職人としての初の受注会だそうです。

「趣味が高じて」始められた鞄つくりですが、そのきっかけは、まさに私が悩んでいた!?ことと同じようなことだったようです。

実は杉山氏は大の服好き。私も少し前にお世話になった神戸のテーラーであるCOLさんなど、様々なテーラーや職人さんで服を仕立てられてきたそうですが、中でもイタリアのフィレンツェのスタイルが特にお好きなようです。実際、靴は私もお世話になっている久内淳史氏が手掛けるイルクアドリフォリオでビスポークされているそうですし、トランクショー当日はフィレンツェのサルトリア コルコスで宮平氏が仕立てたジャケット、そしてパンツには五十嵐トラウザーズを合わせておられました。

そんな杉山氏ですが、自分の好きなイタリアの服にフィットする”柔らかさのある鞄”や、主張が強すぎず、オーナーや服よりも前に出ることのない”控えめな鞄”を探したようです。しかしながら、そういった鞄は探しても見つからない・・・。世の中にないのであれば自分で作ろうと、まずは趣味として革鞄の制作を開始。

めきめきと実力がついていき、自分の鞄を持ち歩いていると「それはどこのブランドの鞄?」と聞かれることが増えていったと言います。そしてビジネスマンとしての傍ら、少しずつ仕事として鞄の受注を開始。結果として「柔らかさがあり、主張し過ぎない。そして人と洋服を引き立てるような鞄」と言った杉山氏ご自身が追求した理想が、「Kazami no」のビスポークバックの根幹をなすに至ったようです。

正直、職人さんであれば自らの作品を主張したいはずだと言う固定観念があった私は、トランクショーの告知ページにあった『人と洋服を引き立てる鞄を提供すること』をテーマとしていることや『柔らかさがあり、主張し過ぎない、しかし普通とは少し違う鞄を目指しております。』と言う杉山氏のお言葉に驚きとともに強い共感を覚えていたのですが、上記のお話からなぜそういったブランドコンセプトに至ったのかを理解したわけです。服や靴と言った、ファッションが好きな杉山氏だからこそ、鞄のみならず、頭のテッペンからつま先まで、ファッショントータルでの視点を取り入れたモノ造りが出来たのかなと。

ちなみに、杉山氏はビジネスマンとして働きながら10年間ほど教室に通って鞄つくりを学んできたご経歴があるのですが、実は、あのORTUS(オルタス)を主催する小松直幸氏から鞄作りを学んでいたそうです。これには私もビックリ!なぜなら様々なビスポークバックのブランドがある中で、個人的に以前気になっていたのがオルタスのバックだったからです。

繊細な美しさとエレガントさを感じていたものの、やっぱり気になったのは「硬さ」。それゆえ、自分のスタイルを考えるとバランスが取れないなと感じて見送っていたのでした。そんな過去?があったので、杉山氏が小松氏から鞄つくりを学んでいたことを伺った際には、どこかで”縁”を感じるとともに、大変驚きました。

なお、私は職人さんが何処で、誰から学んでいたのか、修行をして来たのかと言う経歴を比較的重視しています。なぜなら、最も長く修行をして来た所(テーラー/サルト/師匠)の影響が、その人の作風(スタイル)に必ず影響を与えると感じているからです。しかし杉山氏の生み出すKazami noのバックには、正直オルタス、小松氏のスタイルを感じることが出来なかったので、それを率直にお伝えしました。

すると、鞄の作り方の基礎、技術はしっかりと小松氏から学んでいるものの、杉山氏は自らの理想とするバックが元々あったために、ブランドとしてのスタイルの影響を受けなかったのだ、と言うと語弊があるのかもしれませんが、限りなく影響は少ないとのことでした。

ところで、手縫いをうたうビスポークバックの中でも、「Kazami no」や「ラテッラ」のようにほぼ100%を手縫いで仕立てるブランドは実は多くはありません。カザミノは1つのバックを仕立てるのに1か月程度かかる(※)ことを明言していますが、はじめは手縫いで始めたバックブランドであったとしても、売り上げや利益、またコスト構造を変えようとすると、ミシンを多用せざるをえなかったり、外注に出さざるを得ないのです。
※バックによって3週間で出来るもの、1か月以上かかるものがあるそうです。

つまり”何を大切にする”のか、によって仕立て方が変わるわけですね。
※もちろん経済性以外の耐久性などの観点からミシンを使用することもある

これは、実は服や靴の仕立ての世界でも同じです。例えばインスタ等で納品物をたくさんアップしている職人さんがいたとすると、それはその方が一人で仕立てているのではなく、外注を多用することで生産数、納品数を上げているのだと教えて頂きました。職人さんであれば、一人で仕立て上げることの出来る限界数量は自ずと決まってしまうことを知っているわけです。

個人的には外注を使うこと自体を「悪」だとは思っていません。着心地や履き心地に影響を与える部分、顔となる部分は自分で行い、それ以外は外注に頼むことで一定の経済規模を作り上げることは、業界を維持し、また仕事を受ける側の職人仕事に従事する方々のためにとっても必要なことだからです。

例えば日本を代表するビスポークシューズ職人である福田さんは、外注を使っていることを公言(※)しています。これは、福田さんが目指すところが「日本の靴を世界に広める」ということを重視しているからで、これを実現するには生産数に限界がある自分1人で仕立てるのではなく、お弟子さんや外注に出すことで規模を拡大し、存在感を発揮する必要があることは明確です。
※アトリエに訪問した際に直接ご本人から伺いましたし、雑誌のインタビューでもお話されていたと記憶。

しかし、自分1人で仕立てているような宣伝をしながら、外注を多用することはお客さんをだますことになるので「悪」だと思っています。1人で仕立てることが正義であり、唯一絶対の価値だとは全く思いませんが、もし自分が対話している職人さんに仕立てて貰いたい、または職人さんの目の届く範囲内で仕立てて貰いたいというお考えをお持ちの方がいたら、メディア等で喧伝されていること鵜吞みにするのは避けた方が良いと思います・・・。

少し話がずれてしまいましたが、杉山氏ご自身が型紙作成から革の裁断、縫製まで行っているカザミノ。杉山氏に、なぜ手縫いにこだわっているのか?と言う質問をしてみました。そこで返ってきた答えが非常に興味深いと言いますか、なるほどと思ったのです。

それは、「ミシンを買うお金がなかったから」と言うものでした。

革の鞄を手作りしようするときに、絶対に必要になるのが革を薄く、漉くための機械だそうです。これは必須だと。よって限られた資本の中で革の鞄づくりを始めた時にはミシンを買うお金までは回らなかったのが、手縫いのバックになった理由だそう。

今では手縫いであることの価値が見直され、世界的にも有名となったナポリのサルトと同じ理由です。ヨーロッパに近い中部から北のサルトは工業化の波を受けて手縫いからマシンメイドに切り替わっていきましたが、ミシンを買うお金がなかったナポリのサルトは、そのまま手縫いを続けた。これが時代が流れ、ほとんどがマシンメイドになった世の中で逆に価値を発揮することになったのですから、興味深いですよね。

なお、今では”手縫いの方がステッチが綺麗になる”という拘りもあり、一部内部の処理にミシンを使う場合もあるようですが、意図をもって、ほぼ100%を手縫いで仕上げているそうです。

私は「手縫いの方がステッチが綺麗になる」と言うお言葉を更に深く聞いてみました。と言うのも、美しさの定義を「精緻さ」とするのであれば、手縫いよりもミシンの方が狂いなく精緻なステッチになるからです。その質問に対する杉山氏の回答は、こうでした。下の画像をみてください。ステッチが分かりやすいようにモノクロにしていますが、これはカザミノのバックの手縫いのステッチです。このステッチは、右から左上に斜めにステッチが入っているのが分かると思います。
Kazamino_カザミノ_トランクショー2

ミシンで作ると、こういうリズミカルな表情のステッチにはならず、真っすぐに、機械的なステッチを描くことになるのだそう。実際、私の持つシャンボールセリエのバックは直線的なステッチとなっていました。
シャンボールセリエ_ステッチ

この辺りは「美」の感覚、定義次第であり、”美しさをどのようにとらえるか”によりますが、手縫いの服や靴を愛する者同士、杉山氏の「手縫いの方がステッチが綺麗になる」と言う言葉の意味をしっかりと理解したことは言うまでもありません。

他にも、フランスの某メゾンのバックはなぜ高いのか?どんな点が凄くて、どんな点が普通なのかと言った、革の鞄を扱う職人だからこそ分かるリアルで興味深い話なども伺いましたが、これは本記事の趣旨とは異なってきてしまいますし、ラグジュアリーブランドの値付けに関する話は、個人の小さなブログ記事とはいえ、なかなか書きにくい部分でもありますので、気になる方はトランクショーに参加した際に是非、杉山氏との”ビィスポーク”を楽しまれてみてください。(笑)

と言うことで、少し長くなりましたが前編はこのあたりで締めさせて頂き、後編では私が今回オーダーしたバックを取り上げたいと思います。