Shibumi Firenze(シブミ フィレンツェ)によるビスポークスーツやジャケットを仕立てる際にチェックしたいポイント!?
こんにちは!
本日は「Shibumi Firenze(シブミ フィレンツェ)によるビスポークスーツやジャケットを仕立てる際にチェックしたいポイント!?」と言うテーマで、私自身が約10か月間に渡って経験をしてきました「Shibumi によるビスポークジャケットの納品までの道のり」を踏まえてお送りしたいと思います。
それでは、まいりましょう。
■Shibumi Firenzeによるビスポークスーツやジャケットを仕立てる際にチェックしたいポイント
さて、前回、前々回と2回に渡って私自身がこの度納品を頂きました、Shibumiによるビスポークジャケットのスタイルや着心地等についてご紹介をしてまいりました。
スタイリッシュさやクリーンさと言う特徴を有するShibumiのスタイルが直線で構成されたラインによって実現される一方で、カーディガンのように気軽に羽織ることの出来るライトな着心地はアルフォンソシリカやデペトリロに近い感覚であることを述べました。
また、私にとっての今後の要望としましては、アームホールのサイズをより身体に近づけるとともにカマの位置を上げて貰うことで肩や腕を大きく動かした際のツッパリ感をなくし、着心地の改善を実現することだとしておりました。
そんな私の改善希望点を書きますと、スタイルとしては気になるけれど自ら仕立てることに不安を覚えたり、躊躇してしまう!?方もいらっしゃるかと思います。従いまして、本日はShibumiにおけるビスポーク1発目の満足度を上げる為には、こんなことをチェックしたら良いのではないか!?と言うことを自身の経験を踏まえてお伝えしてみたいと思っています。
①着心地に関するフィードバックを自ら行えることが条件
まずお伝えしたいのは、ファーストフィッティング(仮縫い)やセカンドフィッティング(中縫い)において、自分が感じた感覚、特に改善希望点をしっかりと言語化して、フィッターであるベネディクト氏に適切にフィードバック出来ることがとても重要だと感じています。
例えば私がいつもお世話になっているSharonさんにてサルトリアソリートのトランクショーに参加させて頂いた際には、Sharonのスタッフさんが適切なタイミングで私に”問いかけ”をしてくださったり、一緒に確認をしてくれていましたので、自ら積極的にフィードバックを発信する必要性はありませんでした。
また、直井茂明氏によるスーツや久内淳史氏による靴のビスポークの際には、日本人ならではのキメの細かい確認が入りましたし、母国語である日本語でやりとりが出来ますのでコミュニケーション上の問題が発生したことはありません。
これに対してShibumiによるトランクショーの場合はサポートスタッフが居てくれる訳ではなく、また通訳の方はいらっしゃいますがメンズドレスファッションにおけるビスポークに精通しているわけではございません。従いまして、私の片言の英語力では自分が感じたことの100%をベネディクト氏に直接フィードバックするのは簡単ではありませんでした。
ところで、Shibumiのビスポークはジャケットで30万円(日本円決済の場合)からですので、イタリア仕立てのビスポークジャケットの価格としては大きな魅力を感じる価格です。実際私が選んだ生地もアップチャージはありませんでしたので、今回はスタート価格(※)にて仕立てて頂いております。
※私はクレジットカード決済のために€払い。よって、為替による変動等は有り。
よってイタリアはナポリ仕立てのビスポークにチャレンジしたい!と言う方にとりましては大変魅力のある選択肢になり得るのですが、それでもビスポークの経験がないと言う方には個人的にはあまりおススメはしません。他のサルト等で数着ほど仕立てたご経験を有しており、フィッティングにおいて着心地等に関する改善要望をしっかりとフィードバック出来ると言うことが必須の条件だと感じています。
②好みの着心地を有するスーツやジャケットを着てトランクショーに参加する
自らの感覚を言語化して適切にフィードバック出来ることに加えて、ご自身のお気に入りの着心地を有するスーツやジャケットを着てトランクショーに参加すると言うのが、初回のビスポークにおける満足度を上げる2つめのチェックポイントかなと思います。
※写真はサルトリアソリート(Sharonモデル)のスーツ
わざわざShibumiのトランクショーに参加してスーツやジャケットをビスポークするわけですから、Shibumiのスタイル、オーナーであるベネディクト氏のスタイルに惹かれていると言うのが大前提ですよね!?従いまして、ディティールにおける好みの指定はあれど、スタイルそのものを大きく変えて欲しいと言う要望は基本的にないはずです。
そうであれば、着心地面で最も気に入っているスーツやジャケットをトランクショーの当日に着て行き、着て行ったスーツやジャケットのサイズを念のために計測頂くと言うのは、1つのアプローチとしてありかなと思っています。
もちろんShibumiのスタイルを踏まえた上での採寸になりますので、持ち込んだスーツやジャケットと仕立てあがってくるスーツ等のサイズが全く一緒になることは有り得ません。それでも、特に着心地に影響をする肩や腕周りの数値を採寸して頂くだけでも、初めてのビスポークの完成度はグッと高められるのではないか!?と素人発想ながら感じております。
③肩、腕周りなど動きのある箇所は入念に確認すべし
最後は、ジャケットであれば最も動きのある肩や腕まわりのチェックは”仮縫い時”から入念に行うべきだと思います。
例えば袖丈や着丈なんかはセカンドフィッティングの際にも十分変更できますが、布を切ってしまうアームホール周りにつきましては、セカンドフィッティング時からの修正では出来ること、出来ないことがあると言うのは既にお伝えした通りです。
よって、ジャケットに袖を通してみたら鏡の前で静止しているだけではなく、歩いてみたり、肩や腕を回してみたり、曲げてみたり、また腕組なんかをして、突っ張る箇所がないかを入念にチェックされると、より良いフィッティングを実現することに繋がるかなと。
もちろんスーツをビスポークされた場合はパンツも同様にチェックすることが重要ですね。1日着たスーツのパンツはジャケット以上にシワがよるように、負荷がかかりやすいアイテムです。よって、こちらも試着をしたら歩いてみたり、座ってみたり、屈伸をするなどして、負荷がかかるポイントがないのかはちゃんとチェックしておいた方が良さそうです。
とは言え、私自身もさほどビスポークの経験が多いわけではございませんので、とんちんかんな事も記載してしまっているかもしれません。それでも自分自身への備忘録として、また本記事が今後Shibumiでビスポークをされる方にとって少しでも有益になれることを期待して、私自身がチェックしておいた方が良いと感じたことを記載させて頂きました。
■想定の範囲内の意味
前回の記事におきまして、この度納品を頂いたShibumiによるビスポークジャケットの着心地で改善をして頂きたい箇所が発生したことについては「想定の範囲内だった」と言うことを述べておりました。
本記事の最後では、この言葉の”真意”について記載しておきたいと思います。
最初に申しあげますと、Shibumiにてビスポークのシャツやジャケットを依頼する前から、ある程度の”着心地面における課題が残り得る”ことは想定しておりました。その根拠は「経験年数」です。
Shibumiは2012年にイタリアはフィレンツェにおいて高品質なハンドメイドのネクタイを世の中に送り出すことを目的として設立された、新しいブランドです。また、オーナーであるベネディクト氏はそれまでファッション関係の仕事にも携わっていたと言いますが、決してフィッターとして、またネクタイやシャツ、スーツの職人としての経験を有していたわけではございません。
更に言えば、今でこそスーツやシャツ、ストールやグローブ、ポケットスクエアにブレイシーズなど、トータルでメンズファッションのアイテムを提案出来る体制が整っておりますが、ブランド設立当初は記載の通りハンドメイドネクタイからスタートしておりますので、スーツやシャツの取扱いにおける歴史はまだまだ浅いのです。
何事もそうだとは思うのですが、”上手くこなす”際に最も重要な要素の1つは、「経験」です。
例えば私がお世話になっているサルトリソリートのマエストロであるジェンナーロ・ソリート氏は、その経験年数が60年を超えております。そう言った圧倒的な場数をこなし、世界でも最も名の知れたサルトが行う仕事と、設立数年であるShibumiが全く同じクオリティで仕事を提供出来ると言う考えは、少なくとも私の中にはありませんでした。
それではなぜ、そう言ったことを踏まえてもなおShibumiにてシャツやジャケットのビスポークをお願いしたのか。
理由は色々とありますが、大きなポイントはオーナーであるベネディクト氏のお人柄やチャレンジ精神、熱意に惹かれたと言うことでしょうか。まだ若いブランドながら、イタリア内外をはじめとして様々な工房を自らの足で渡り歩き、ご自身が納得するスタイルとクオリティを有する工房と提携して自らのテイストを有する商品(ブランド)を一から作り上げる。
更にベネディクト氏ご自身が日本、そして京都が好きだとは言え、決して名の売れた状態ではない頃から単身日本に乗り込んできて、代理店や小売店と協力するのではなく、単独でトランクショーを開催すると言うチャレンジ精神。
正直これをやり遂げる(これからも更に飛躍されると思いますが)と言うのは、並大抵のことではないと私自身が感じたわけですね。
服を仕立てる、と言うことは文化だと思っています。
今は偉大なマエストロであるジェンナーロ・ソリート氏であっても、初心者の頃はあったわけです。それでも駆け出し直後で経験が少ないジェンナーロ氏に対して自らの資金で仕事を発注し、”経験を提供”してきた方々がいらっしゃるおかげで、私はある意味で既に完成された領域にあるサルトリアソリートの服を手にすることが出来ているのだと理解しています。
よって、ちょっと偉そうに聞こえてしまうかもしれませんし、また大した資金力で多彩な経験を提供出来るわけではありませんが、高い志と、チャレンジ精神を持って努力をされていらっしゃるベネディクト氏率いるShibumiと一緒に成長をさせて頂きたいと言う想いも込めて、この度ビスポークをお願いしたと言う背景がありました。
なお、現在では各国のファッション業界でも名の知れた方々がShibumiにてビスポークをされていらっしゃる様子がShibumiの公式インスタグラムアカウントでは発信されておりますし、ベネディクト氏ご自身も着々と素晴らしい経験を重ね、フィッターとしての経験値を積み上げていらっしゃるように感じます。
と言うことで、誰かの提供した経験によってフィッターや職人さんのスキルが向上し、その恩恵を私自身が受けている以上、次の世代、時代に残っていくようなブランドの経験値に少しでも寄与することが出来れば、仕立て文化は廃れることなく、脈々と受け継がれていくはずだ、と言ったら話が大きすぎるでしょうか。(笑)
もちろん自ら汗水垂らして働いたお金から大金を出すわけですから、誰しもパーフェクトな仕事を手に入れたいと思うのは当然です。それでも人の手が介在し、人が受け継いでいく必要のある技術であれば多少のミスと言うのは必ず起こり得ますし、練習と言う名の経験が絶対的に必要になる領域であるとも思っています。
と言うことで、そんな大きなコトに想いをはせながら、私自身が頂いたこの貴重な経験を、バトンとして次に繋げて行ければこんなに嬉しいことはないと思っています。
もし本内容にご共感頂ける方がいらっしゃいましたら、Shibumiはもちろんですが、まだ経験は少ないながらも、高い志とチャレンジ精神を持った職人さん(店)に注文をされてみてください!きっとそのバトンは、次の方が受け取ってくれると思います。
最後になりましたが、素敵なジャケットとシャツを納品頂くとともに、貴重な経験をさせて頂きましたShibumiオーナーのベネディクト氏、通訳・調整等を頂きましたYさん、本当にありがとうございました!次回は5月のトランクショーでお会いできればと思います。そして、読者の皆さまも長文ながらお読み頂きありがとうございましたっ!