スーツの持つチカラ:WORK WEAR SUIT
こんにちは!
本日は、「スーツの持つチカラ」と題しまして、前回同様スーツネタのコラムをお送りしたいと思います。
それでは、まいりましょう。
■洋装文化が浅いからこそ生まれた!?:WORK WEAR SUIT(ワークウェアスーツ)
さて、皆さんは「WORK WEAR SUIT(ワークウェアスーツ)」なるものをご存知でしょうか!?
水道工事やそのメンテナンスを行っているオアシスソリューションのグループ会社であるオアシススタイルウェアが開発した製品で、「スーツのように見える作業着」が「ワークウェアスーツ」です。
近年は若者の減少からどの業界も人材を獲得するのに苦労していると聞きますが、作業で汚れたり、仕事が辛そうなどのイメージが先行してしまいがちな清掃や設備、建設業界のイメージを向上させて人手不足を解消し、顧客からのイメージアップをも視野にいれて開発されたのが「ワークウェアスーツ」(※)だったそうです。
※参照記事はコチラ。
実は私、少し前に朝の情報番組が何かでワークウェアスーツが取り上げられていたのをチラッと見ていたこともあって頭の片隅には入っていたでのすが、実際にワークウェアスーツが発売され、ネットを中心にちょっと話題になっている!?と言うことで本日取り上げてみました。
ところで、日本人と洋服とが出会ってから、実はまだそんなに時間が経っていないのを皆さんはご存知でしょうか!?それこそ日本人が初めて洋服を目にしたのは、ポルトガルやスペインなどからキリスト教の宣教師が渡来した時期だと思うのですが、本格的に日本人の多くが日常着として洋服を着用するようになったのは、戦後だと言います。
つまり、まだ日本人と洋服との歴史はそれこそ60~70年程度しかないと言うことですね。
伝統と言うのは脈々と長い時間をかけて変化をしながら固まってきたものですから、それらを壊したり、大きく変化させるのは難しかったりすると思います。しかし、そうではない物と言うのは壊すのも、変化させるのも容易。
そういう意味では、洋装文化やその歴史が欧米に比べると圧倒的に浅い日本であるからこそ生まれたアイテム(※)が、本日取り上げているワークウェアスーツなのかなと思っていたりします。
※オアシススタイルウェア調べによると、スーツのデザインを擁した作業着は世界初
もちろん他にも、様々な物事の境界線を曖昧にしてきた日本人特有の文化?の影響もあると思いますし、大戦によって色々なことがリセットされたと言う背景も多分にあるのだとは思いますが、軍服に起源をなし、階級を象徴する手段として用いられて来たと言う歴史的背景(伝統)を持つスーツのデザインを作業着に乗せると言う発想は、欧米では決して生まれなかったのではないかなと想像します。
■ワークウェアスーツとは
ワークウェアスーツが生まれた背景は冒頭に簡単に記載致しましたが、ワークウェアスーツはあくまで作業着ですから作業がしやすいように「ストレッチ性」があり、「汚れにくく」、「撥水性」もある。その上、「洗濯機で丸洗い」出来、かつ「形状記憶機能」により、ノーアイロンでも大丈夫と言う、デザインは一見スーツ風ですが、本質的には作業着なのがワークウェアスーツなわけです。
実際上述したような機能を有しながらも、一見するとテーラードジャケットのようなデザインとなっています。
ただディティールを見てみますと、例えば胸のポケットは作業によってしゃがんだ際にポケットに入れているものが落ちないようにジップ仕様になっていたり、
フロントのパッチポケット風のポケットの横には収納を増やすためのサイドポケットがついていたり、
更には通気性向上のために内側はメッシュ素材になっている上、
パンツの裾は防寒やひっかかり防止?の為にリブデザインになっていたりと、随所にワークウェアであることを感じる配慮がなさていることが分かります。
※上記画像は全て、ワークウェアスーツの公式HPより拝借致しました。
ちなみに、当初はつなぎやストリートファッションをベースに”男性目線によるカッコ良いワークウェア”の開発を進めていたと言いますが、開発の打ち合わせに参加していた人事担当の女性による『若者ウケするスーツみたいなスタイルで作業ってできないんですかね?』と言う言葉をきっかけに、デザインがスーツへと決まったそうです。
※『』は、コチラの記事より引用
この女性社員の発した言葉。男性かつ、普段当たり前のようにスーツを着て仕事をしている私からしますと、正直新鮮な感覚であり、仕事でスーツを着る人が少なくなったと言われるこの世の中において、改めて「スーツの持つチカラ」を感じることが出来た言葉でした。
■スーツの持つチカラ
ワークウェアスーツを開発したオアシススタイルウェアが完成したものを社内にて試験導入したところ、当初は批判的な声が圧倒的に多く、8割もの社員から元の制服に戻してくれ!と言った声が届いたそうです。例えば、
・毎日洗わなくてはならない(から面倒)
・髪形に気を遣わなければいけない(から面倒)
※()内はrm55にて補足追記
ただ、導入から1~2カ月もするとポジティブな評価が増えてきたと。具体的には、
・動きやすい
・着替えずに帰れる
(作業着だと恥ずかしいので着替えてから帰宅する必要がある)
と言ったもの。更には、以下のような嬉しい効果も見られたそうです。
・社員の髪形が変わって身だしなみを気にするようになった
・作業車の中が綺麗になった
・自社のサービス利用者からの評判も上がった
つまり、スーツに対する「堅苦しさ」「綺麗に着ないといけない」「ちゃんとした身なりで着ないといけない」と言ったイメージから当初は拒絶反応があったものの、ワークウェアスーツを着ることによってマインドが変わり、その結果行動(身だしなみが整い・作業環境が綺麗になり)が変わり、仕事に対する顧客からの評価も向上したと言うことですよね。
※上記内容はコチラの記事を根拠に執筆しています。
NYヤンキースで活躍した松井秀樹選手が座右の銘としていたことで知られる、以下の言葉があります。
「心が変われば行動が変わる。
行動が変われば習慣が変わる。
習慣が変われば人格が変わる。
人格が変われば運命が変わる。」
ワークウェアスーツを着ることで人格や運命までもが変わったのかどうかは分かりませんが、少なくとも心が変わり、行動が変わり、習慣が変わったと言う事実はあったのかなと想像致します。そして、その心を変えるきっかけとなったものこそ、紳士服における正統な装いとして脈々と受け継がれてきた、「スーツ」と言うデザインであったのだと。
もちろんこれまでの作業着であっても良い仕事は出来ると思いますし、Tシャツやデニムでも仕事で結果を出すことは出来ますよね。それでも「スーツの持っているチカラ」をうまく活用することが出来れば、仕事だけではなく、人に対しても良い影響を与えることが出来ると言う1つの事例ではないかと感じた次第です。
そんな「スーツの持つチカラ」に気付いた方、魅力を感じた方が1人でも増え、もう1歩進んでメンズドレスファッションの世界に足を踏み入れて来られることを個人的には願っています。
ちなみに本日ご紹介したワークウェアスーツですが、東京23区内でごみの回収を手がけている会社に導入が予定されている他、大手商業施設等からも引き合いがあるそうですので、今後我々が実物を目にする日も近そうですね!