好きなスタイルの話:Sartoria Sharon Model 01(サルトリア・シャロン モデル・ゼロワン):後編
こんにちは!
本日は前回に引き続き「好きなスタイルの話」の後編と言うことで、スタイル、着心地、プライスと言う点で非常にバランスが良いと感じているサルトリア・シャロンを取り上げながら、お送りしたいと思います。
それでは、まいりましょう。
■体型とスタイル
さて、スーツには様々な”機能”があると思っているのですが、その中でも私が重要視しているポイントの1つが、”体型補正”の機能の有無です。
一般的に、イギリスなどのアングロサクソン系の人種は、日本人に比べると”なで肩”の人が多いように思います。このような体型を持つ方々が、肩がビルドアップされた、構築的な表情を持つスーツやジャケットを着ると、とても”美しく”、また”映える”ように感じます。
ただ、もしかしたら本来の話は”逆”なのかもしれません。
現代スーツ発祥の地である英国では、スーツは地位や権力、威厳を表すためのツールとして生まれたと言う歴史的事実があります。
もし”なで肩”の人が、ナポリに代表されるような柔らかい、優しい表情を持つ袖付けのスーツを着たら、威厳を表すことは難しいように思うのです。そこで肩幅を広く、そして力強く見せる為に、肩をビルドアップするように仕立てたのが英国のスタイルのはじまりだとしたら、個人的にはとても納得のゆく流れになります。
つまり、”映える”ようにビルドアップされた構築的な肩回りが与えられたのが、ブリティッシュスタイルであると言う考え方です。スタイルが設計された根底には、地位、権力、威厳を表現すると言う思想、目的があると。
※ナポリのスタイルは、地位、権力、威厳のある方々が、ひと夏の休暇を楽しむために仕立てられた服が起源。つまり、リラックスしながら休む際には地位や権力、威厳の表現は不要。だから、柔らかい仕立てと優しいシルエットになった。
一方で、いかり肩、もしくは首から肩のラインに傾斜がついていない体型を持つ日本人がビルドアップした英国的なスーツを着るとどうなるでしょうか。
様々な意見はあると思いますが、私個人の感覚で言えば、必要以上に肩幅が強調され、また欧米人に比べる背が低く、顔が大きい日本人は、その顔の大きさまでもが強調されてしまうように感じるのです。
つまり、私の感性で言えば、それはカッコ良いとは思えません。
そして私の体型は「なで肩」と「いかり肩」のどちらに近いか!?と問われれば、間違いなく「いかり肩」の方に近い体型です。
よって、出来ればショルダーラインに傾斜を持たせ、必要以上に肩を強調しないような”体型補正を行ってくれる”スタイルを持つスーツ/ジャケットが、私にとってまさに理想の1着になるわけです。
ちなみに、この理想のスタイルを、自分が着用した上で実現してくれると言う点が重要です。
他の人が着ているとカッコ良く感じるのだけれど、自分が着ると、想いの他カッコ良いとは感じない・・・、と言うスーツがあるとしたら、それはカッコ良く見える要因が、スーツ自体が持つ体型補正機能にあるのではなく、着用している方の体型に大きく依存している可能性が高いと思われます。
従って自らの体型を踏まえた上で、それをカッコ良く見せることが出来るスタイルを持っていると言うのがポイントになるのです。
■Sartoria Sharon Model 01(サルトリア・シャロン モデル・ゼロワン)のスタイル
では、前編で掲げた、私がスタイル上重要視している以下の3点に加えて、サルトリア・シャロンのゼロワンモデルによる体型補正がどのように効いているかを見ていきたい思います。
1:ショルダーライン
2:袖付けの雰囲気
3:ラペルの表情
まず下記が静止した状態です。
分かりやすいようにラインを入れます。首から肩にかけて滑らかにショルダーラインが傾斜をしながら、硬すぎず、柔らか過ぎない袖付けによって、綺麗にラインが落ちていきます。これにより、肩幅が変に強調されることがありません。
その一方、体型よりも、やや肩幅を広めにとってあるので袖付けのラインが内側に入りこみ、男性らしい逆三角形の上半身のシルエットを描きます。これに、肩の傾斜に平行して高い位置からゴージラインが降りてきて、ワイドなラペルは美しい孤を描いてフロントカットに落ちていきます。
必要以上に肩幅や肩回りを強調せず、それでも男性的なシルエットをモダンに表現(体型補正)している点が、魅力的です。
なお、以下はイタリアのナポリを代表するサルトの1つである、サルトリア・ソリートのプレタポルテ(Solito house exclusive per Sharon)のスーツです。サルトリア・シャロンと同様に、肩の傾斜はついているのですが、首から肩、そして袖先に至るラインはもっと柔らかく、丸っこいカーブを描いているのがお分かり頂けると思います。これがソリートの持つ、柔らかいナチュラルなシルエットです。
では、ゴージラインやラペルをアップで見てみたいと思います。緩やかにカーブしたゴージラインは、手縫いならではの表情。ワイドなラペルは、欧米人よりも顔の比率の大きい日本人の顔を小さく見せる効果もありますので、モデル体型ではない方には特におススメのディティール。
こちらにもラインを引きます。ゴージのスタート位置は特に重要で、低くなればなるほどクラシックな感じが強くなるように思うのですが、サルトリア・シャロンはスタート位置が高いのが特長。その一方で、ゴージラインの傾斜角度がついているので、これがモダンかつ大人っぽいクラシカルな表情を与えているポイントの1つだと考えています。
ゴージラインの確度によって、その印象が大きく変わります。こちらがサルトリア・シャロンのゴージライン。
そして以下は、サルトリア・ソリートのプレタポルテ(Solito house exclusive per Sharon)の持つゴージライン。クラシックな表情を強めるのか、スポーティさやスタイリッシュさを強めるのか。その辺りは職人/サルトの持つ美意識によるのです。
正直スーツやジャケットに興味がない方が見たら、その違いを理解するのは難しいほどの差異なのかもしれませんが、服好きにとっては上記に掲載したサルトリア・シャロンとソリートの持つ”ショルダーライン”や”袖付け”、”ラペルの表情(ゴージライン等)”には”大きな”違いがあるのです!?(笑)
なお、肩の傾斜や袖付けの表情が理想とは異なるスーツと比べてみます。左側の写真は肩の傾斜が弱く、また袖付けも構築的なラインになりますので、肩から袖口にかけてのラインが直角的に落ちていきます。スーツ/ジャケットの持つスタイルによって、同じ体型でも見え方は全く異なってくるのです。
もちろん本日のテーマは「好きなスタイルの話」ですから、良し悪しの問題ではなく、好き嫌い、好みの話です。
どちらが好みのスタイルかと問われれば、右側のサルトリア・シャロンのスタイルの方が私は好みです、と言う話になります。
サルトリア・シャロンは手縫いのパターン・オーダーとなりますので、ショップであるSharonさんに訪問すれば、ゲージサンプルが置いてあります。本日ご紹介した私rm55が好きなスタイルにご共感頂けるのであれば、後はサンプルを試着して、自分が着てもそのカッコ良さが表現出来そうなのか否かを確認するのみ。
しかも手縫いを主体としたスーツが25万円(税別)スタート(ジャケットは19.5万円:税別)と言うのは、様々なショップの手縫いのプライスを踏まえても、かなり良心的な価格(※)だと感じています。
※東京周辺では尚更
特に、細かな改良が施された最近の「01」及び「02」モデルの完成度はかなり高いので、手縫いのビスポークスーツに興味のある方がチャレンジするには最適な選択肢の1つだと思いますし、私以上にビスポークの経験を有する方々が立て続けにリピートしているのを拝見するに、手縫いの服の経験が豊富な方にとっても魅力的な選択肢になり得るのだろうと感じています。
私に直接メール等で「初めてのビスポークはどこがおススメか?」「サルトリア・シャロンは実際どうなのか?」と言ったお問い合わせ頂く方にもおススメしておりますので、スタイルがお好きであれば、是非チャレンジされてみてはいかがでしょうか!?