LUCA AVITABILE(ルカ・アヴィタービレ) のオーダーシャツが最高であった3つの理由
こんにちは!
本日は「LUCA AVITABILE(ルカ・アヴィタービレ) のオーダーシャツが最高であった3つの理由」と言うテーマとともに記事をお送りしたいと思います。
それでは、まいりましょう。
■LUCA AVITABILE(ルカ・アヴィタービレ) のオーダーシャツが最高であった3つの理由
先日「控えめに言っても最高か!?:LUCA AVITABILE(ルカ・アヴィタービレ) MTMシャツ」と言う記事において、この度納品を頂いたルカ・アヴィタービレのオーダーシャツが、タイトルの通り、控えめに言っても最高だった!と言うことをお伝えしておりました。
上記の記事内でも申し上げておりましたが、これまで私が経験したオーダーシャツは4着。1着はビスポークで、3着がMTMのシャツです。
ビスポークとは、その人の体型に合わせて型紙(パターン)から作成していくアプローチであることに対して、MTMとは、基本のパターンが存在し、そこから体型に合わせて長短を調整していくアプローチである事が一般的です。
今回のルカアヴィタービレのトランクショーはMTMと言うことでオーダーをしてきたわけですが、そのフィット感が尋常ではないくらいの出来栄えであったことは、お伝えした通り。なぜMTMでこのレベルまで到達できるのか、たった4着の経験値だからと言うこともありますが、過去の自らの経験と照らし合わせても理解することが出来ませんでした。よって先日Sharonさんに伺った際、オーナーであるK氏にいくつかの質問をしてきました。
すると、なぜルカ・アヴィタービレのオーダーシャツが最高であったのか、その理由が分かりましたので改めて記事化することに致しました。
まず、その第1の理由は「ベースのパターンが秀逸であること」です。これは既に上記記事内でも申し上げていたことですが、MTMである以上、基本のパターンが存在します。
※ルカ・アヴィタービレのプレタポルテのシャツ
MTMでは長短を調整するので、ベースパターンに対してネックが太ければ出す、細ければ詰める。肩幅が広ければ出す、狭ければ詰める。腕が長ければ出す、短ければ詰めると言う作業を行っていくわけです。
そう言う意味ではパターンを修正するわけではないので、ベースパターンがどれだけ体型に合っているのか否か、と言う点がMTMでは特に重要(※)になります。
※着心地の観点で
シャツの着心地は基本的には縫製ではなく、パターンに大きな影響を受けます。つまり、手縫いかミシンか、と言う縫製の違いは直接的には着心地に大きな影響を与えることはなく、あくまでシャツの着心地はパターンが体型に合っているか否かによると。
そうなるとMTMの場合はベースのパターンが体型にフィットしているか否かが着心地面においては最も重要で、例えば腕が動かしにくい、肩が当たっているなどの不快感の完全な解消は、MTMでは難しいと言うことになります。
このような中でSharonさんで扱うルカ・アヴィタービレのプレタポルテ(既製品)のシャツは、長い時間をかけて日本人の体型に合わせてパターンが作成されており、これがMTMにおけるベースパターンとなっています。
インポートのシャツの中には「ジャパンフィット」と言うモデルが存在することがありますが、この場合、行っているのはネックサイズを変える、もしくは袖丈(着丈)を短くする、と言う長短の調整がほとんどです。ルカ・アヴィタービレのプレタポルテのように、肩幅や前身頃、後ろ身頃、ヨークなど、全面に渡って調整を行っているメーカー(代理店)は聞いたことがありません。
つまり、それ位の調整が既に行われているパターンがベースとなっていますので、スポーツ等で体格が発達している等を除けば、かなりの確率でベースのパターンの状態でも着心地の良さ、フィットの良さを実現することが出来るわけです。
そして2つ目の理由が、「フィッターと呼ばれる採寸を行うルカ氏が優秀である」と言うこと。もっと言うと、採寸を行ったルカ氏本人が「カッティング(パターンの作成)も手掛けているから」と言うことになります。
※トランクショー時のルカ氏によるフィッティングの様子
洋服をビスポークする際には、ざっくり言うと「フィッティング(採寸)」「カッティング(パターン作成)」「ソーイング(縫製)」と言う工程が存在します。
その際、着心地面において特に重要となるのがフィッティングとカッティングです。
フィッティングとは、いわば服の設計図(パターン)を作成する際の大元となるデータ(採寸値)を取る工程です。採寸を行うと言っても、人間の体には、ここから、ここまでを測ると言った具合に、線が引いてあるわけではありません。よって肩幅一つとっても、採寸する人が10人いたら、mm単位で考えれば、10人全員が異なる数値を採寸することも可能性としてはゼロではない。
よって、どこからどこまでを測るのか。どこを、どのように測るのか、と言うのは技術であり、これは経験値が大きくモノを言う世界になります。
この採寸(インプット)データが間違っていたら、パターンを作成するカッターがどんなに優秀であったとしても、アウトプットされるデータ(パターン)は、間違ったものになります。
そう言う意味では世界中に顧客を持ち、毎年大量のオーダーを受けている経験値を有するルカ氏のフィッターとしての能力が高いことは想像に難くないですし、相当数のビスポーク経験を有するK氏によるルカ氏のフィッターとしての評価が非常に高いこともうなずけます。
そしてビスポークシャツや今回のトランクショーにおいてオーダーされたシャツは「ルカ氏本人がカッティングも行っている」と。つまり、フィッティングとカッティングと言う、別の人間が担当することも多い2つ工程をシームレスにつなぐことが出来ると言う点も、MTMながらクオリティが高いシャツが出来上がる大きな要因となっています。
結局フィッターとカッターとの情報の連携が上手くいかないと、上述の通り良いモノがアウトプットされません。従って、この両方の工程を1人で担っているのは実はとても貴重なのです。ちなみに私がスーツやジャケットをビスポークしているサルトリア・ソリートも同様に、ルイジ・ソリート氏が1人で両方の工程をこなします(※)。
※カッティングはマエストロであるジェンナーロ・ソリート氏も行う
そして最後の理由、これが個人的にはルカのシャツのフィット感が高い理由として最も納得感が高かったのですが、実は「パターンの修正まで行っている」のが、このトランクショーのMTMだったのです。そう言う意味ではMTM以上、ビスポーク未満と言うのが、より正確な表現であったのかもしれません。
確かに思い返してみると、フィッティング時にルカ氏がバックヨークの一部をつまんだりしていたように思うのです。この”つまむ”と言う行為は、長短を調整するのではなく、パターンそのものを調整している行為にほかなりません。
そう言う意味ではサルトリアシャロンと同じように、パターンの微調整まで行い、これを型紙に落としているのが、Sharonさんで行われたルカ・アヴィタービレのトランクショーであったと言うことになります。
個人的には、インポートの既製品シャツで最も難しのがバックヨークのフィッティングだと思っています。欧米人は日本人に比べると体が厚く、特に背中側のボリュームが大きいのです。よって、ジャパンフィットのインポートシャツであっても、たいていバックヨークにはツキが出たり、生地があまったりしてしまいます。
試しにお手持ちのイン―ポートのシャツ(既製品)を着用し、鏡などでバックヨークを確認してみてください。恐らく生地があまっていたり、ツキが出たりしてしまい、綺麗にフィットするシャツは稀ではないでしょうか。
もし綺麗にフィットするシャツがあったとしたら、それは体型に合っているシャツである可能性が高いので、大切にされることをおススメします。
と言うことで、ルカ・アヴィタービレのオーダーシャツが最高であった3つの理由は、以下の3点。
1:ベースのパターンが日本人にフィットするように作られている
2:フィッターが優秀かつ、カッティングまでシームレスに行っている
3:MTMながら、パターンの微調整まで行っている
今後ルカ氏が来日するトランクショーが開催されるのか否かは分かりませんが、前回のトランクショー参加者への納品が始まって間もないながら、非常に反響が大きく、リピートオーダーが続出しているそうです。
プライスは、シクテスやトーマスメイソンの生地で55,000円(税別)、アルモで65,000円(税別)だと伺っています(※)。シャツ単体としては安くはないのですが、ルカ・アヴィタービレのプレタポルテが49,000円(税別)であることを考えると、このクオリティとしては破格かも!と思えてしまうから不思議です。
※正確な価格は、念のためSharon店舗までお問い合わせください。イニシャルは別途費用。
気になる方は、まずはプレタポルテの試着から初めてみることをお勧めします。プレタでも十分すぎるくらい良いのですが、オーダーでは更なる感動を味わうことが出来ると思いますよ!