こんにちは!
本日は「クラシックを再解釈。Sartoria Sharon によるカシミア ダブルフェイス アルスターコートが納品!」と言うテーマで、先日納品を頂きました、Sartoria Sharon のアルスターコートをご紹介したいと思います。
それでは、まいりましょう!
■クリエイティブディレクターたる所以
実は私、昨年11月12日から14日にかけて開催されたSartoria Naoi / Sartoria Sharonのトランクショーにおいて、新たな商品として企画されていた、"Sartoria Sharonのカシミア ダブルフェイス アルスターコート"をオーダーしておりました。正直まったくオーダーするつもりはなかったのですが、店内に掛けられていたコートの何とも言えない柔らかな雰囲気に魅了され、試しに着てみた結果、気付いたらオーダーをしている自分がおりました。(笑)

ちなみに今回のサルトリアシャロンによるカシミアのダブルフェイス アルスターコートですが、自分の中での固定観念、既成概念が大きく揺さぶられる結果となったことを、まずは告白しておきたいと思います。
まず、そもそもSartoria Sharonによるカシミアのダブルフェイスを用いたアルスターコートの特徴は、『副資材は「ボタン」と「糸」のみ。究極の柔らかさと手縫い本来のアジを感じ』ることが出来る点にあると、公式HP(※)の中で謳われています。
※「新しい生活様式を見据えた至極の大人用コート Sartoria Sharon」
実際、着心地もビジュアルのそれを裏切らず、軽く、驚くほど柔らかい。コートと言うよりも、公式HPにも記載のある、”ブランケットを羽織っている”感覚に近いような驚くほどの心地良さがありました。
それはカシミア100%の生地による柔らかさと手縫いならではのソフトな仕立てに加えて、芯地や裏地などの副資材が使われていないことによって実現しているのだと思うのですが、個人的に驚いたことが、ハンガーにかかっている状態でも驚くような美しいナチュラルなドレープ感が出ている点。
一般的に、服の立体感と言うのはキャンバス芯などの芯材、副資材を使うことで実現していくものだと思うのですが、サルトリア・シャロンのコートは、そう言った副資材無しに、これを実現しておりました。
そのような軽くて柔らかい、まるでブランケットのようなコートが企画された背景には、時代の変化があると言います。
ビジネスマンの誰もがスーツを着てネクタイを締めると言うビジネススタイルは過去のものとなり、ビジネスウェアのカジュアル化はコロナ禍によって更に進行。今後もその大きな流れは止まることはないと思われます。
このような中でファストファッションではなく、化繊素材を使ったスポーティウェアでもない、それでも大人の男性がリラックスして着用することのできるコートとして考案されたのが、今回のコートになるわけです。
※これまでのクラシックなコートを否定するのではなく、新たな選択肢としての提案
私が普段着用しているような手縫いのスーツやジャケットに合わせることで、よりリラックスした表情をつくることも出来ますし、ノーネクタイのビジネスカジュアルスタイルや、ジャケットにタートルネックを合わせるような、よりカジュアルなスタイリングにばっちりとハマる。それでいて、しっかりと大人っぽい雰囲気を醸し出すことが出来ると言う点が新しい。
クリエイティブディレクター。
最近よく耳にする言葉の1つです。”クリエイティブ”ディレクターとは、決して既存のアイテムに対して、色や素材を変えたり、パターンの一部を変えて商品を企画することが本来の仕事ではないはずです。時代、社会の流れ、変化に対して新しいスタイル、ファッションを提案していくことこそ、本来クリエイティブディレクターが生み出す、最大の価値ではないでしょうか。
Sharonオーナーであり、プロデューサー的ポジションでもあるK氏、そして仕立て職人であり、サルトリアシャロンのクリエイティブディレクターである直井茂明氏が新たに生み出した、クラシックなドレスウェアを好む大人のためのカシミア ダブルフェイス アルスターコートは、数年後に時代の転換点における名作だったよね、と語られることになるのではないか、と大げさながら個人的には思っていたりします。
以前ご紹介をしたSharonオリジナルのブランドであるラテッラのスエードブーツ(※)もそうでしたが、何かを真似たり、トレースするのではなく、独自のフィルターを通して新たな付加価値をつけた商品を生み出し、提案をする。そんなとことろに、服好きとしてドキドキ、ワクワクしてしまう自分がいたりします。
※「LA TERRA(ラ テッラ) By イル・クアドリフォーリオ のスエードブーツが快適すぎた!」
そのような新しい価値、スタイルを提案するSharonさんの今後の展開には目が離せないですし、もしかしたら今年の秋冬や来年あたりには、ラテッラのスエードブーツやサルトリアシャロンの副資材を使わない手縫いのアルスターコートに似た商品が、他のブランドから登場することもあるかもしれませんね。
■クラシックを再解釈:Sartoria Sharon によるカシミア ダブルフェイス アルスターコート
さて、今回私が選んだ生地は、密な毛羽としなやかさに加えて、上品な光沢感を有するカシミア100%のダブルフェイス(目付は640g)になります。色はグレージュカラー。サンプルゲージに使われていたキャメルカラー(ヴィキューナカラー)も魅力的だったのですが、よりナチュラルな色合いと、1着分しかないと言う点に惹かれ(笑)、こちらを選びました。

そして納品されたサルトリアシャロンのカシミア ダブルフェイルのアルスターコートがこちらです。何とも言えない優しく、エレガントなグレージュカラー。力が程良く抜けた、リラックスしたシルエット。

直井氏が工房まで行って職人さんに縫い方を指導することで実現した、不均衡の美を有するステッチ。

アルスターコートの襟型。クリエイティブディレクターであり、カッティング(パターンメイキング)を務める直井氏のスタイルが良く表れている襟の表情です。

ボタンと糸以外の副資材は一切使われておらず、もちろん形を整える芯材も使われていなのですが、このシルエット。好きな方にはたまらない表情かと思います。(笑)

このような美しいドレープ感が出せるのも、ダブルフェイスのカシミア生地の柔らかさ、そしてアイロンワークと甘く縫うことの出来る手縫い技術、そして副資材が一切使われないことによる賜物。

袖にはボタンがつかず、よりリラックスしたコートであることが表現されています。

肩ひじ張らず、ウエストを絞り込むこともないAラインの、”ゆるい”シルエット。この辺りまでくると、このコートが持っている本質的価値に気付き始めた読者様もいらっしゃるかもしれませんね。

ダブルフェイスのため、インナーにもカシミアが表れているのがとても贅沢。

そして芯材が入っていない、柔らかい襟。ここは、このコートの着用時における肝となるポイントです。

ご存知の方も多いと思いますが、ダブルフェイスの生地は通常と仕立て方が異なりますので、量産品ともなると、ダブルフェイスを扱うの専門技術を有するファクトリーが担当することが多い生地の1つです。特に仕立てにおいて手間、暇がかかるポイントが、この裾の処理。

ダブルフェイスはその名の通り、生地を2枚重ね合わせることで成立しています。実際、今回は640gのカシミア生地なので、320gのカシミア生地が2枚重ね合わさることで出来ています。これは特殊な機械を用いて下記の写真のように2枚の生地が縫い合わせれているのですが、裾の処理は2枚の生地を一旦剥がして、内側に縫い込むように整形していきます。

ダブルフェイスなので、2枚分の生地量を使いながら仕立てにおいても手間と暇がかかっている、非常にラグジュアリーなコートがカシミアのダブルフェイスのコートなのですが、これを今回のようなリラックスした仕立てにすること自体がとても贅沢なことだと思っています。
ただ、私が冒頭にて「自分の中での固定観念、既成概念が大きく揺さぶられる結果となった」と記載したのは、カシミアのダブルフェイス生地を用いているからであるとか、ボタンと糸以外の副資材を一切使っていないからであるとか、手縫いだからと言うことではありません。
私が上記のように記載した理由は、これまでのクラシックウェア、ビスポークと言う世界観を新たに現代の価値観、空気感でもって再解釈したコートだと感じたからです。
これまでの画像や、下記画像からもお分かり頂けると思いますが、肩幅が広く、落ちている点や、Aラインであることから、あえて"身体に沿うようなシルエットになっていない"点こそ、このコート最大のポイントだと思うのです。

英国で生まれたメンズクラシックウェアの世界におけるビスポークの基本は、その人の身体に合わせてスーツを仕立てること。肩幅を合わせることはもちろん、身体のサイズに合わせて、それぞれのテーラーやサルト、職人が考える理想の男性像を、スタイルと言う形で表現をする。例えば肩を広くとり、ウエストを絞ることで逆三角形の上半身を強調し、力強い男性像を表現したり、またはサルトリア・ソリートのように、ショルダーラインはナチュラルにとりつつも、ボリュームあるバストによって色気を出すアプローチ等、様々。
しかし、どんなスタイルであれ、基本はその人の体型、サイズに合わせること。
ところが今回のサルトリアシャロンのアルスターコートは、誤解を恐れずにいえば、そうはなっていないのです。着心地と言う意味では、首筋にしっかりとフィットさせることでコートの重量を支え、コートが身体からブレることのないポイントを作るのですが、肩を落とし気味につくり、Aラインとすることでウエストを絞らない、身体に沿わせないスタイルは、メンズクラシックウェアのオーダーアイテムとしては、これまでなかった在り方ではないでしょうか。

これを化繊やマシンではなく、手縫いのパターンオーダーかつ、ダブルフェイスのカシミア生地を使って表現することで、クラシックウェアが好きな大人が大人っぽさを失うことなく、カジュアルに、リラックスした表情を持って着用することが出来るのです。
恐らく、ビスポークの歴史が長く、本場であるイギリスやイタリアでは発想することの出来ない、日本人だからこそ出来た提案ではないでしょうか。
時代や価値観が変化していく以上、何かを維持するためには立ち止まったままではなく、自らも変化をしていく必要があると思っています。そう言う意味では、そんな社会の変化、価値観の変化を上手く取り込み、"クラシックをSharonと言うフィルターを通して再解釈する"ことで生み出されたのが、Sartoria Sharon によるカシミア ダブルフェイス アルスターコートである、と言うことが出来そうです。

今月18日から開催予定のサルトリア・ナオイ/サルトリア・シャロンのトランクショー(※)では、本コートに春夏用の生地を載せた新たな提案もなされる予定と伺いましたので、気になる方は是非、お問い合わせされてみてはいかがでしょうかっ!?
※「<Sartoria Naoi・Sartoria Sharon>トランクショーのご案内」
是非、Sharonと言うクリエイティブディレクターが新しい時代に提案する、"クラシックを再解釈"したメンズクラシックウェアを堪能されてみてください。
こんにちは!
前回に引き続き、本日は「COL(コルウ)神戸のトランクショーに行ってみた!:納品編 【後編】」と言うことで、COL神戸のトランクショーにて納品頂いたジャケットの詳細について、ご紹介出来ればと思います。
※過去の記事
「COL(コルウ)神戸のトランクショーに行ってみた!」
「COL(コルウ)神戸のトランクショーに行ってみた!:仮縫い編」
「COL(コルウ)神戸のトランクショーに行ってみた!:中縫い編」
「COL(コルウ)神戸のトランクショーに行ってみた!:納品編 【前編】」
なお、後編では以下の4点について語ってみたいと思います。
・COL神戸によるビスポークジャケットのディティール
・着用した際の着心地及びデザインに関する評価
・サルトリア・ソリートとの違い
・COL神戸にビスポークを依頼する際の注意点と、次回オーダーするなら検討したいこと
■COL神戸によるビスポークジャケットのディティール
今回COL神戸の齋藤さんから納品を頂いたジャケットですが、スタイルは3つボタン段返りのベーシックなシングルジャケット。生地はカチョッポリのウール×シルク×リネンと言う春夏用の生地を用いています。よって表地を補強し、型崩れを防止。また、着用時の摩擦軽減したり、吸湿する役割を持つ裏地は必要最低限に、と言うことで背抜き仕様。生地の持つ、軽やかな風合いを大切にしました。

※裏地は齋藤さんからご提案頂いた、ブルーグレーカラー。
テーラーとしてのロゴは左胸の裏(向かって右側)に入り、

生地のネームは右胸(向かって左側)のポケットの中に縫い付けられています。

COL神戸さんでは、マシーンメイドによるパターンオーダーと、手縫いによるパターンオーダー、そしてビスポークの3つがオーダーメニューとして存在しますが、今回は手縫いによるビスポーク。型紙は私の採寸値をもとに齊藤さんが作成し、カッティングまでを行って頂いています。

COL神戸さんのスタイルは英国をベースにしながら、やや構築感を抑えたクセのないクリーンさが特徴的ですが、今回は私が好んでいるナポリのスタイルを意識頂き、表に見える縫い方などには”手縫い感”がより出るような表現方法を採用頂いています。

日本人は手先が器用なので意識をしないと精緻なステッチになりがちですが、今回はそのあたりも私の好みを意識、手縫いならではのナチュラルな表情を大切にして頂いているように感じました。

ボタンはグレーカラーのシェルボタン。こちらも齋藤さんからご提案頂いたものをそのまま取り入れています。

袖の処理はナポリのスポーツジャケットに多くみられる1つボタンで仕上げて頂きました。ちなみにCOL神戸さんに依頼されるお客様の中では珍しい仕様とのことですが、軽やかでカジュアルな生地感にはぴったりかなと個人的には思っています。

そして今回特にこだわったポイントの1つが、袖付けの表情。極力ナチュラルに、またマニカカミーチャのような雨降りの表情はありつつも、あまりやりすぎ感の出ない塩梅でご対応頂きました。個人的には想像以上の出来栄えで、とても満足度の高いポイントです。

イタリアのナポリらしい風合いや手縫い感を大切にして頂いておりますが、それは決して”雑”と言う意味ではありません。あくまでテイストの問題で、均等の間隔で縫われている様からは丁寧な仕事ぶりが伺えますし、

正統な、クラシックな製法に準じて仕立てが行われていることがよく分かります。

なお、表からは見えない形を整えるための芯材については必要に応じてミシンが使われ、一定の効率化も図られていることも感じ取ることが出来ます。

当然ハ刺しなどは手作業ですが、表から見えず、着心地に影響をしないところで強度が必要な箇所などにはミシンを使うテーラーや職人さんが圧倒的に多いので、このあたりはバランスを見ながら対応をされているように思いました。

恐らくスタンダードなCOL神戸さんのスタイルに比べると手縫い感、ソフトな風合いが強く出ているディティールだと思いますが、これは私が依頼をし、好みをしっかりと仕立てに反映頂いた結果だと認識しています。
■着用した際の着心地及びデザインに関する評価
では実際の着用イメージを見ながら、まずは着心地面における私なりの評価をしてみたいと思います。
一般論として、厚く、重みのある硬い生地に比べて、薄くて軽い、そして柔らかい生地の方が仕立ての難易度は上がると言われています。その理由の1つには、生地の自重がかかりにくいのでしっかりと身体に合わせてカッティング(パターンメイキング)する必要があるからだと思っています。今回はその難易度の高い、薄くて軽く、柔らかい生地で仕立てて頂いていますが、1着目としてはかなり良い出来栄えと言う着用感。

首すじから肩への生地ののり方も良く、それでいて大きすぎず、小さすぎない、後ろから優しくハグされているかのような納まり感のあるサイジングは流石の一言。

着心地面において最も重要な点の1つだと私が考えている首筋へのフィット感も合格点。まだ芯材が馴染んでないのですが、馴染むともう少し接地感が増すのかなと感じています。

また、電車の吊革につかまるイメージで腕を上げても肩のラインが大きく崩れることなく、また脇下からウエストのラインも引っ張られることなく維持されています。肩やカマの大きさ、位置が適切な範囲内にあることを表していますね。

腕を上げた際に肩のラインが大きく崩れたり、脇下の生地が大きく引っ張られる場合にはパターンやサイズが合っていないことが考えられますので、オーダースーツやジャケットの納品チェックや、既成のスーツを購入する際にはチェックしたいポイントです。

腕を大きく曲げてみても背中が不快につっぱることなく、しっかりと生地がついてきます。生地には多少の差はあれど、ナチュラルなストレッチ性が備わっているものですが、人間の皮膚のように伸縮することは不可能です。化繊のストレッチ素材ではなく、自然由来の生地でこの着心地を実現するには適切なサイジングとカッティング、そして可動域に柔軟性を持たせる手縫い(縫製技術)あってのことだと思います。

もちろん腕組みも余裕です。腕を組んだ際に腕が動かしにくい、引っ張られている感じが強い、肩のラインが崩れる等があると、それはテーラー、または職人としての技術が未熟であることを示唆(※)しているのだと理解しています。

※マシンメイド(ミシン縫い)の場合には、可動域に限りがあるためこの限りではない
着心地面においては秀逸な出来栄えであることが分かりましたが、デザイン面ではどうでしょうか?ここからは着心地以上に個人の好み、感性が評価に反映されるポイントになります。
結論としては、こちらも想像以上に良かったというのが個人的な評価です。まず、バルカポケット、第1ボタン、第2ボダン、第3ボタンの位置と前身ごろの丈の長さのバランスが好みです。

私はこれらの服全体としてのバランス感を最も重要視していますので、どんなに著名なテーラーやサルト、職人であってもバランスが自分好みではないと全く惹かれないと言うのが個人的な感覚です。その点、今回納品頂いたジャケットは齋藤さんがCOL独自のスタイルに私の好みを多分に反映頂いたということもあるのだと思いますが、非常に良いバランス感でした。
また、私がスタイル上譲ることのできないノボリから肩にかけての傾斜と、そこから肩、腕へとつながっていくナチュラルなラインもしっかりと実現されています。

そして左右の肩のシルエット、袖の付き方にも要注目。左右差がなく、どちらも同じ仕上がり(ライン/シルエット)になっています。実はこれ、結構難しいことなんです。当然職人さんにも利き腕が存在しますので、縫う方向は1つ。そうなると、右と左の袖付け時には、縫う方向が異なってくる(前から後ろ/後ろから前)のです。この結果、右と左の肩の雰囲気やシルエットが微妙に異なっているビスポーク・ジャケットが結構存在するのですが、COL神戸さんのビスポークジャケットは左右の肩、袖の付き方が綺麗に整っている点もポイントが高いと感じました。

今回はゴージラインの位置、角度も微調整頂いておりますが、端正なラペルの表情にはCOL神戸さんらしさを感じますね。ラペルの形状は肩のデザインと並んで最もテーラーや職人さんのスタイルが現れるポイントの1つだと思っています。

上記の画像の再掲。改めて見てみると、COL神戸さんらしい端正さやクセのなさと、私の依頼したシルエットとナポリらしいナチュラルさが見事に調和しているように感じます。テーラーとしての軸をブラすことなく、顧客の要望を取り入れるのは簡単そうで実は難しいのではないでしょうか。

私は普段、サルトリアソリートやサルトリアシャロンで仕立てて頂く場合にはほぼお任せのスタイルとなっておりますので、ここまで自分の感性、美的価値観を”Bespoke”したのは初めてでしたが、斎藤さんとCOL神戸の職人さんのお蔭で、1着目としては大成功だったと評しても良いのかなと思っています。

ちなみにジャケットの裾もCOL神戸さんのスタンダードなデザインに対して前下がりを強くしてもらっています。前から後ろにかけて切れあがるライン。これにより前から見た時の印象がシャープに、よりスポーティに感じますね。

なお、脇下からウエストにかけてのラインも綺麗でした。一般的には肩、そして腕の運動量をパターンとイセ込みにて確保することになると思うのですが、必要以上にジャケットの前身ごろでとりすぎると、この脇下がダボついて、綺麗なラインを出すことが出来ません。その点、今回納品頂いたジャケットは、シルエットの美しさと運動量の確保のバランスが良いと感じました。

■サルトリア・ソリートとの違い
着心地、デザイン面ともに個人的に高評価のCOL神戸の齋藤さんに仕立てて頂いたジャケットですが、私が普段着ているサルトリア・ソリートと比べると、どんな点に違いがあるのでしょうか。
COL神戸さんにビスポーク頂いたのは今回が初めてですし、まだ自宅での試着のみなので詳細な比較は難しいのですが、ここがちょっと違うかなと感じる点を着心地面、デザイン面で各1つずつ取り上げてみたいと思います。
着心地面において最も違うと感じたのは、首筋への生地ののり方です。ソリートの方が、最初から、よりしっかりと首筋にフィットしてくる感覚があります。襟の仕立て方は難しく、ジャケットづくりにおけるキモになる点のようにも感じています。よって、この辺りは2着目、3着目と仕立てる中で今後改善できそうなポイントになるのかもしれません。

また、デザイン(シルエット)面でここが違うかもしれないと感じたのは、胸回りのボリューム感の出し方です。ソリートがより男性らしい、豊かなバストを描き出している一方で、COL神戸の方はスッキリとまとめています。COL神戸は全体のバランスの中で、このバストの作り方をしていますので、単純にソリートのようなボリューム感を出せば良いと言う話ではありませんね。この辺りは、個人の好みによってきますし、私はCOL神戸のスタイルは今くらいでも良いとも感じています。ただ、あえて異なると言えば、このバスト周りが違うかなと言う印象でした。

■COL神戸にビスポークを依頼する際の注意点と、次回オーダーするなら検討したいこと
では最後に、今後COL神戸さんにてビスポークを検討されている方に向けて、オーダーする際の注意点と、私が2着目をオーダーするのであれば検討したいことを記載してみたいと思います。
・COL神戸にビスポークを依頼する際の注意点
スーツを作られる際にカジュアルな服装でテーラーやサルトへ行かれる方がいらっしゃいますが、個人的にはスーツをオーダーするのであれば、普段着ているスーツやシャツ、ネクタイを締めていかれることをお勧めします。
そのほうがテーラーや職人さんがその方の好みや着こなしから得られる情報が増えますので、提案がしやすくなる。またそれ以上に、手持ちの服との相性を判断しやすくなるという側面があるからです。
例えば、シャツ。私は普段からカッタウェイカラーのシャツを好んで着ているのですが、今回の試着画像からもお分かりのとおり、ジャケットのゴージラインとシャツの襟とがかなり近くなっています。

※シャツのブランドはモンテサーロ
自分の感性では、もう少し「襟」と「ゴージライン」とを離しておきたいというのが本音です。これは仮縫い、中縫い時に着ていた自分のシャツとの相性からも分かっていたので調整はして頂いたのですが、既に記載した通り、ラペルのデザインにはテーラーや職人さんのスタイルが反映されてくるポイントですので修正するにも限度があり、注意が必要。

下記のシャツはG.イングレーゼのカッタウェイカラー。やっぱりちょっと近いですね。

そして以下は、私が最近着ることの多い、ルカ・アビターヴィレ。このくらい離れると、個人の感覚としてはアリかなと。

ちなみにチリエッロのカッタウェイカラーだとかなり近いので、合わせない方が良いと感じています。

COL神戸さんはレスレストンさんと共同でトランクショーを開催することもあるほど、近い関係性。レスレストンのメインカラーはレギュラーからセミワイドくらいの印象で、実は納品会には私が唯一所有するレスレストンのシャツを着て訪問しておりました。このレスレストンのシャツのセミワイドカラーとの相性は良かったので、レスレストン好きの方にはぴったりかもしれません。
ラペルのデザインと言うのはスタイルを表現するうえで重要なため、ゴージラインを含めて大きな変更が難しい箇所になります。よってカッタウェイカラー好きの方は、普段愛用しているシャツを着てサンプルゲージなどを着用し、COL神戸さんのスタイルとの相性に問題がなさそうか、チェックされることをお勧めします、と言うことが、まず申し上げたい注意点となります。
また、もう1つ申し上げておきたいことは、私が今回仕立てて頂いたジャケットのスタイルは、COL神戸さんのスタンダードなスタイルとは異なるという点です。これまでの記事にも記載してきた通り、私の好みを踏まえて修正を依頼し、また齋藤さんも私の好みをCOL神戸のフィルター、美意識を通じて取り込んでくださった結果、生まれたものだと理解しています。
従ってCOL神戸さんに依頼をすると、私が今回ご紹介したようなジャケットが出来上がるわけではありませんので、注意が必要です。COL神戸さんの英国ベースの端正でクセのないクリーンなスタイルは、それこそ齋藤力さんのインスタグラムやCOL神戸さんのHP等を拝見されるとより明確に分かりますので、そちらをご確認ください。
・次回オーダーするなら検討したいこと
では、私が次回、2着目をオーダーするとしたら、どんな点を話し合ってみたいかを記載したいと思います。1つ目は、上述した通り、首筋への上衿ののり方の改善。現状でもかなりの接地感を感じており、満足できるレベルにはありますが、さらなる着心地の良さを目指すのであれば、検討して頂いても良い箇所なのかなと思っています。
ただ、上衿のサイズを含めて検討となると、テーラーとしてのスタイル上の兼ね合いも出て来ますので、そのあたりは対応の可否を含めてまさにBespokeの部分になってきますね。
また自宅での試着を繰り返している中では、カマの位置をもう「3~5㎜」程度上げても良いのかもしれないと感じています。現時点においても腕の可動域には問題はなく、着心地も良いですが、あと数㎜ほど上がってくると、より良い着心地になりそうな予感がしています。

と言うことで、少ないながらも私が現時点で持っている知識と経験、感性をもとに、COL神戸の齋藤さんに納品を頂いたファーストジャケットを一切忖度することなく、独断と偏見をもとに素直に評価してみました。
今後COL神戸さんにてオーダーを考えられている方の参考になれれば幸いですし、rm55はこう言っているけれど、実際どうですか?と言う、話(Bespoke)のネタとしても使って頂えければ嬉しいです。
最後になりましたが、改めまして約10カ月と言う期間を使って素敵なジャケットを仕立てて頂いた齋藤力さん、COL神戸の職人の皆様、本当にありがとうございました。日本のテーラー、職人さんの有する情熱と高い技術力を感じることが出来、とても幸せでした。また機会がありましたら、その際はどうぞよろしくお願い致します。

※同じ期間、トランクショーをご一緒させて頂いたシロさんもありがとうございました!
なお、前編、後編に記述した内容は、私rm55の知識と経験、感性に基づく内容ですので、全ての方に当てはまるものではありません。また斎藤さんにも事前に本記事の内容を開示することなく、ヒアリングも行うことなく個人の感想文として記述していますので、今後修正や補足等が必要であれば、本記事を更新したり、別途補足記事を書き足す場合がありますことを予めご了承ください。
こんにちは!
この度、2021年3月に初めてCOL神戸のトランクショーに参加させて頂いてから約10カ月を経て、ビスポークジャケットが待望の納品となりました!よって本日は「COL(コルウ)神戸のトランクショーに行ってみた!:納品編 【前編】」と言うことで、納品会?の様子や納品直後の感想等をご紹介をしたいと思います。
※過去の記事
「COL(コルウ)神戸のトランクショーに行ってみた!」
「COL(コルウ)神戸のトランクショーに行ってみた!:仮縫い編」
「COL(コルウ)神戸のトランクショーに行ってみた!:中縫い編」
なお、前編では納品会の様子と、納品頂いた際に感じた率直な感想。後編では納品頂いたジャケットを自宅にて試着をし、吟味をした結果感じたことを記載してみたいと思います。それでは、まいりましょう。
■忖度なしに、語ります。(笑)
トランクショーに参加させて頂いた最初の記事でも記載をしておりますが、COL神戸さんの存在を知ったのは2015年。まだスーツやジャケットに関する知識もなく、ビスポークの経験もない。また自分のスタイルさえも決まっていない中でしたが、とても綺麗なスーツだなと感じてブログにて取り上げておりました。
その後月日が流れ、COL神戸の職人(フィッター/カッター)兼セールスを担当されている齋藤力さんと偶然ながらインスタグラムにおいて繋がることができ、それがきっかけとなって2021年3月に東京で開催されたトランクショーに参加させて頂いた経緯があります。
なお、2015年から本日までの間に、私も書籍等による知識に加えて、パターンオーダーや日本、イタリアの職人さんによるビスポークもそれなりに経験させて頂きました。これらの過程において自分好みのスタイルも見つけることが出来、自分なりの視点からの評価が出来るようになってきたと感じています。
よって本日(前編・後編)は、自分自身の知識、経験と感性を踏まえて、この度COL神戸の齋藤さんから納品を頂きましたビスポーク ジャケットを一切忖度することなく、語ってみたいと思います。
■納品会 with シロさん の様子
今回も仮縫い時からトランクショーをご一緒させて頂いている、ブログ仲間から始まり現在ではインスタグラムで交流をさせて頂いているシロさんとともにThe Okura Tokyoにて開催されたCOL神戸のトランクショー(納品会)に参加させて頂きました。

シロさんとホテルのロビーで待ち合わせ、アポイントの時間になると齋藤さんが迎えに来て下さります。そして、皆で一緒にトランクショーの会場となる部屋へ移動。


今回納品されたり、仮縫い等が予定されているスーツやジャケットがかかっているのを横目に、まずは齋藤さんが持ち込まれた生地をシロさんとともに物色。(笑)

顧客さんの中には「こんな生地を探しておいて欲しい」と予めリクエストされる方々がいらっしゃるようで、そのリクエスト用の生地を含めて生地談話が盛り上がります。私は生地に関する知識はほぼないのですが、齋藤さんはもちろん、シロさんも相当にお詳しいので、「これは良い生地ですね~。」「ヌメリ感がたまりませんね~。」「あまり見ない、珍しい生地ですね~。」と言った言葉が飛び交います。(笑)
※室内では皆マスクを着用し、適度な距離感を保ちながら会話を楽しみました。
また、他の顧客さんがオーダーされたスーツやジャケットの生地なども拝見させて頂きながら会話が弾み、場が温まった頃合いをみて、まずは私から納品頂くジャケットの試着を行います。

詳細は後述しますが、結論から言うと少々の驚きを感じるくらい、想像以上の出来栄えで、とても満足ゆく仕立てに仕上げて頂きました!

職人の方々がよく仰ることの1つに、「納品する際が一番緊張する」と言う言葉があります。今回齋藤さんがどうだったのかは伺っていませんが、私から見ると若干緊張気味にジャケットを着させてくださった印象があります。
特に、これまでの記事をお読み頂いてる方であればご存知の事と思いますが、「仮縫い」から「中縫い」にかけて私の体型が若干ながらボリュームアップした関係で、納品前の「中縫い時」のフィッティングにおいて、「仮縫い時」はなかったシワが背中側に出てしまっていたのです。

※2021年10月に開催されたトランクショー(中縫い)時点における、背中のフィッティング
私自身もこれがどのように処理されてくるのか、興味がありましたし、恐らく齋藤さんとしては、しっかりと納まっているのか否かが”相当に”気になられていたのではないか、と勝手ながら想像しています。
ちなみに私は年末年始の暴飲暴食のせいで(汗)、年始の時点では2㎏弱ほど増量してしまっておりましたが、納品会の時点ではそれをしっかりと元に戻し、「中縫い時」と同じ体型でトランクショーには臨ませて頂きました。
その背中側のフィッティングの感じが、こちらになります。昨年10月の中縫い時点では肩甲骨の張り出しによって引っぱられることで出来たシワが、以下の画像では綺麗に解消され、納まり、美しいS字カーブを描ていることが分かります。

※上記2枚の背中のフィッティング画像はシロさんに撮影を頂きました。
これには齋藤さんも「良かったです~」と安どの表情を浮かべられていたのが印象的でした。実際どのようなアプローチでシワを解消、納められたのかを伺ったのですが、中縫い時点から背中のパターンに修正を加えるとともに、肩線の位置を変更することで背中側に生地のボリュームを生み出していったのだそう。
人が着ている洋服はシワが出るのが当たり前。またウール×シルク×リネン生地のスポーツジャケットと言うこともありますので、多少シワが残ったところで「着ているうちに味になる」くらいの感覚もありましたし、「仮縫い」ではなく、「中縫い」時点における体型変化によって出来てしまったシワなので、正直に言うと完全に解消するのは難しいのかもしれない・・・と言う覚悟を持って臨んだ納品会でした。
ところが上記の通り、綺麗に納め、仕上げて頂いたことにはとても驚きましたし、正直、やっぱり嬉しかったです。この辺りは期待を上回ってきた点ですね。
なお、シロさんが仕立てられていたジャケットは「仮縫い」、「中縫い」時ともに綺麗に納まっていらっしゃったので、納品会においてもパーフェクトなフィッティング、とても綺麗なラインが出ておりました。私とは選んだ生地も異なりますし、スタイルやディティールも異なるために、私があまり詳細を語ってしまうのも違うと思っています。よって気になる方はシロさんに直接伺ってみてください。(笑)
と言うことで、約10カ月を経て納品されたジャケット。大変に満足のゆく仕上がりで、とても晴れやかな気持ちになるとともに、個人的には感慨深ささえも感じてしまいました。
ご対応頂いた齋藤さん、そして携わって頂いたCOL神戸の職人の皆様に、この場を借りて御礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました!
今後もCOL神戸さんは東京でのトランクショーを続けていかれると思いますが、まずは今回納品を頂いたジャケットを春先から着用し、現在メインとして着ているサルトリアソリート、そしてSharonの直井茂明氏によるサルトリアシャロンと比較、吟味等したうえで追加のオーダーをするかどうかを検討したいと思っています。
■フィッター兼カッターの強みと、柔軟性の高さを実感したCOL神戸 齋藤力さんによる納品会
・フィッター兼カッターの強み
ところで、スーツやジャケットを仕立てる際には、「採寸」「裁断」「縫製」と言う大きく3つのプロセスを経ることになります。
TPOや好みを踏まえて顧客が生地を選定し、ディティールを決める(※)とまず行うのが「採寸」です。これは読んで文字の通り、顧客の体型を把握するための最も重要なプロセスの1つになります。
※細かなディティールは採寸後に行う場合も有り
前にも書きましたが、どんなに高性能なコンピューターがあったとしてもインプットする値が間違っていればアウトプットされる結果も間違ってしまうように、顧客の採寸データ等、平面の生地を立体化する際の元データを取得する採寸は非常に重要です。これを間違うと、どんなに優秀なカッターや縫製職人がいても、良いスーツやジャケットが仕立てあがることはありません。
恐らく手縫いか否かにかかわらず、オーダースーツを扱う店舗では研修等でどこを、どのように採寸するのかを習うのだと思いますが、実際にはそんなに簡単なことではないように感じます。ここからここを測る、と言う”印が人体についているわけではない”ので、服の上から骨など、目安となるポイントを探して採寸することになりますし、計測する際には表れることのない”体のクセ”をいかに数字として入れ込むのか、カッティングに反映させる情報として取得するのかも重要です。
その点、サルトリアソリートのルイージ・ソリート氏もそうですが、COL神戸の齋藤さんはご自身でカッティング(パターン作成)をする事が出来ます。採寸データをもとに、ご自分でパターンをひき、生地を裁断することが出来る方は、それが出来ない方に比べてどこを、どのように採寸すべきか。またカッティングに反映すべき身体的特徴を含めて採寸データとして取得することが出来ますので、「採寸」から「裁断」へシームレスに移行することが出来るのです。
今回納品頂いたジャケットを着用した際に、中縫い時に発生してしまった背中側のシワが解消されており、これをパターンの修正等で対応していったと伺ったことや、私の身体のクセを踏まえてカッティングをして頂いたことによって綺麗なラインが出ていたこともあって、パターンをひき、裁断できる能力を有する方が「採寸/フィッティング」することの強みを改めて、強く感じました。
イタリアのサルトの中にはカッター(パターン作成・裁断)の能力は有してはいないが、フィッター(採寸担当)としての能力が著しく高い、専門職の地位にいる方も少なからずいると聞いたことがありますが、一般的にはパターンをひき、裁断することが出来る人のフィッティング能力をフィッターだけ行う人が上回ることはないと思います。
よって良いスーツを仕立てたい方は、どんな人が採寸を行うのか、どれくらいのフィッティング歴を有する人が採寸を行うのか、と言うことをチェックすることも大切かもしれませんね。
・柔軟性の高さ
また今回の納品会で強く実感したことが、COL神戸としての柔軟性の高さです。これまでも柔軟な対応については記述してきましたが、納品頂いたジャケットを見て、「聞く」だけではなく、それらをしっかりと「反映」させる能力が高いことも実感した次第です。

本ブログをお読み頂いている方であればご存知の通り、私はイタリアのナポリのスタイル、中でもサルトリアソリートのスタイルを自分の中心においています。よって、その観点から言えばイギリスのスタイルをベースとし、よりクリーンでクセのないスタイルを構築しているCOL神戸のスタイルは、正直私の好みのど真ん中ではありません。
しかし、齋藤さんとのインスタグラムにおける交流やお人柄、熱意、そしてイタリアンサルトへの理解もあったことから、私自身の経験と勉強も兼ねて、今回オーダーの機会を頂いたことはこれまでも述べた通りです。
以前も記載しましたが、COL神戸さんは昔から諸外国との交流が盛んであった港町に店舗を構えており、また顧客がイギリスに限らず、イタリアなど、様々な国の服を持ち込まれてきたと言う歴史や、齋藤さんご自身もイタリアに勉強に行かれていたと言うこともあって、イギリスやイタリア等、多くの国のスタイルに対する知見があります。
更に私がCOL神戸のサンプルゲージに対して修正を依頼したポイントに加えて、トランクショーのたびに私が着用していたソリートの服を確認、細かなディディールなどを把握したうえで、その雰囲気を反映するような努力を行って頂いておりました。
実際に縫製を担当しているのはCOL神戸のアトリエにいる職人さんだそうですが、齋藤さんから指示のあった内容をかなり忠実に縫製に反映させるスキルを有していることも、今回ハッキリと分かりました

※上記2枚の着用画像はシロさんに撮影を頂きました。
欧米や日本のテーラー、サルトのほとんどが自分たちのスタイルを有しています。ビスポークと言うと、スーツを好みの通りにデザインすることが出来ると思われる方もいらっしゃいますが、これは誤りです。生地選びはもちろん、細かなディティールを選ぶことは出来ますが(中には自分のスタイルに固執する職人もいる)、デザイン自体はテーラーやサルトのスタイルとなるのが当たり前。
つまり、そのテーラーやサルト、職人に仕立てを依頼することは、彼らの美意識やスタイルを買うのと同義だと私は理解しています。
このような中で、今回私が納品頂いたジャケットにもCOL神戸のスタイルは確かにベースとしては存在するのですが、そこから私の好みを多分に反映頂き、ある意味ではこれまで存在したことのない、唯一無二!?のCOL神戸のジャケットが仕立て上がったのではないかと感じています。それは、納品待ちでハンガーにかかっていたスーツやジャケット、またご一緒させて頂いたシロさんの好みを反映したジャケットとは大きく雰囲気が異なっていることが物語っているのかなと。

※上記画像は齋藤さんに撮影頂き、シロさんにもブログへの掲載許可を頂きました。
自分達のベースとなるスタイルは大切にしながらも、顧客の好みや要望を柔軟に受け入れ、それを仕立て技術として反映させる能力があるテーラー、職人はそう多くはないと思いますので、経験を重ね、自分なりの好みがある方にとっても依頼のしやすいテーラーがCOL神戸さんなのだと感じました。
※初心者はテーラーや職人のスタイルを受け入れることからスタートすることをお勧めします。
大分長くなってしまいましたが、納品会の様子と、納品頂いた際に感じた率直な感想をお送りさせて頂きました。後編では納品頂いたジャケットを改めて自宅において吟味をした結果感じたことを、こちらも一切の忖度無に記載してみたいと思いますので、是非ご覧頂ければ幸いです。
こんにちは!
本日は久しぶりに購入をしたダウンコートをご紹介したいと思います。
と言ってもタイトルに記載の通り、「レディース」物なので私のコートではなく、嫁さん用のアウターとなります。それでは、まいりましょう。
■モンクレール?ヘルノ?タトラス?デュベティカ?
さて、私はメンズファッションの中でもクラシックなウェアについては相応の経験を積んでまいりましたが、正直レディースファッションについては無知も良いところ。もちろん興味もございません。
よって知識などはまったくないのですが、家族内では「服好き」として知られていますので(笑)、たまに購入の相談を受けることがあります。その際にはなんら難しいことは考えず、自身の直感のみで回答をしているわけですが、この度相談を受けたのが「新しいダウンコートが欲しいのだけど、良いのある?」と言う嫁さんの一言でした。
レディース用のダウンウェアの中でも、比較的ドレッシーな雰囲気のブランドで目に付く(外でよく見かける)のは、モンクレール、ヘルノ、タトラスあたりが多いのかなと感じています。
定番のモンクレールやタトラスはデザイン性も高く、シルエットもスタイリッシュ。また腕に入ったロゴが目立ちますね。


他にもダウンウェアながらボリューム感が出過ぎずに、女性らしい上品さのあるデザインとシルエットを有すると感じているのがヘルノ。この辺りはかなり着ている方が多いブランドなのかなと。

これらにあえて加えるとすると、若干スポーティ色が強くなるイメージのある、デュベティカ。

更に、カナダグースや

ウールリッチのダウンもありますが、ヒップが隠れるくらいのショートダウンのイメージが強く、上記ブランドに比べるカジュアルなデザインと言う印象です。

もちろんインポートに拘っているわけではないので、水沢ダウンなども見せたのですが、実際に見て、着てみないと分からないと言うことで、昨年末に横浜へ行った際にバーニーズなどのセレクトショップへ訪問。デュベティカと水沢ダウン以外は、一通り試着をしてみていました。

デザイン的にはフードの周りにファーがあしらわれており、ベルトレス。また膝丈以下のロングコートを希望しており、艶(シャイニー感)のあるものや、化繊素材の、いわゆる”一般的なダウンウェア”と言うものよりも、異素材を組み合わせたものがお気に召した様子。
色々と見た中ではヘルノのダウンコートが気に入ったようですが、一番良さそうかな~と言うコートのサイズがなく、結局その時は購入には至りませんでした。やはり年末ともなるとセールも始まっていますから、いわゆるゴールデンサイズは欠品してしまうことも多いですよね。
ここ数年、毎年のように新しいダウンコートが欲しいと言う話は聞いていましたが、結局見送りになっていたので、今回も同じパターンかなと個人的には考えていました。
このような中で、ふと思い出して検索をし、提案してみたのが、本ブログの読者様であればお馴染みであろう、MOORER(ムーレー) のダウンコートでした。レディースのイメージはありませんが、私もムーレーのダウンは所有しているのでクオリティについては理解しておりますし、雰囲気やデザインもモダンさがって悪くはないなと。
今回は嫁さんが希望していたファーがついており、異素材の切り替えダウンかつ、膝丈くらいの長さのものが見つかりましたので提案したところ、とても気に入ったと言うことだったので、結局これを買ってあげることにしました。
■ムーレー の ウール×カシミア レディース ダウンコート
それがこちら。色は上品なミディアムグレーで、ウール×カシミア素材と化繊とのコンビネーションのデザイン。女性らしいデザインではないでしょうか。

カシミアの混紡率は10%ほどですが、それだけでも程よ良い光沢感と上品さが感じられるので、大人っぽさが増す気がします。

またフードの周りにはラグジュアリーなフォックスファーがあしらわれており、ボリューム感もあって良き。このフード回りのフォックスファーは取り外し可能ですので、化粧などで汚れてしまった場合には、ファーのみクリーニングに出すことも出来ますね。

裾の部分は化繊素材の切り替えデザイン。切り替えがあることでエレガント過ぎず、スポーティな雰囲気が出るのでデニムなどのカジュアルスタイルにも合わせやすそうですし、しゃがんだ際に裾が地面についても汚れが落としやすいと言う観点でも良さそうです。

モンクレールやタトラス、ヘルノのように外からブランドが分かるようなデザインではありませんが、これくらいがちょうど良いと個人的には思っています。

また2月には東京にも雪が降るのではないか?と言われていますが、フード付きなので雪や多少の雨でも心配なし。嫁さんの実家は雪が降るエリアなので、年末年始の帰省時にも活躍してくれそうです。

インナー部分の縫製も綺麗で、随所にパイピングも施されており、丁寧なモノづくりは相変わらず。

身体を入れると、しっとりと吸い付くような質感も私が所有するムーレーのダウンコートと同じでした。

ちなみに嫁さんはムーレーと言うブランド自体を知らず、「モーレー?どこの国のブランド!?」と聞いてきましたが、あまり服には興味がないので、きっと1年後には名前も含めて忘れていることでしょう。。。(笑)

なお、ジップを一番上まで締めるとすっぽりと顔がうまり、マフラーやストールいらずです。

実際に着てみるとかなり軽く、肩がこらなさそうな着心地や、フォックスファーや表地のウール×カシミアの質感、全体のデザイン、上品なグレーカラーなど、珍しく!?お気に召した模様です。私に比べるとモノ使いが荒い点が気になりますが、末永く愛用してくれると良いですね。
1月もとても寒かったですが、2月も寒さは本番中。薄着で風邪などをひくことがないよう、ガンガン使って貰えればと思っています。もし奥様やパートナーの方にレディースのムーレーも良いかも!?と思われた方は、是非チェックされてみてはいかがでしょうか。
