こんにちは!
本日は前回お送りした【前編】を受ける形で、「DORSO(ドルソ) 齋藤力氏の魅力に迫ってみた!:後編」と言うテーマでお届けしたいと思います。
なお、「後編」ではDORSOの思想やスタイル、クオリティ、そしてラインナップや価格、今後の展開等について取り上げてみたいと思います。
それでは、まいりましょう。
■DORSOの思想
DORSOはMTMのオーダースーツ/ジャケットを主としたオーダーサロンです。現時点でオリジナルのアクセサリーや、セレクトしたオーダーニット、ネクタイ、ホーズ等も一部扱っていらっしゃいますが、メインはMTMのオーダースーツやジャケット。
なぜ、ビスポークではなくMTMなのか。なぜ、ビスポークを扱う老舗テーラーから独立し、あえてMTMを主軸としたDORSOを立ち上げたのか。そこには、齋藤氏なりのビジョンがありました。
それは「メンズファッションの素晴らしさや良さを多くの人に知って貰い、カッコ良い人を1人でも多く増やしたい」と言うもの。
齋藤氏は物心ついた頃から”ファッションに魅了”され、早い段階からファッション業界で働くことを意識していたと言います。そして、ご自身が行った様々なチャレンジの中で挫折を経験した際にも、自身に寄り添ってくれた”ファッションの持つ力”を信じている。
だからこそ、上記のようなビジョンを持つに至ったのだと思いますし、また「前編」に記載をした時間をかけて行う、質の高い、丁寧なコンサルテーションの裏側には”カッコ良い人を1人でも多く増やしたい”と言うビジョンが深く関係していると思うのです。
もちろん、ビスポークスーツを仕立てられるスキルを持つ齋藤氏ご自身も、ビスポークの持つ魅力は重々に理解されていらっしゃいます。しかし、1人で出来ることには限りがある。
ビスポークであれば、自分で仕立てられる数は月に数着と天井が自ずと決まってしまいますし、服を仕立てる以外にもトランクショーの開催や経営者としてのマネジメント業務などがありますから、顧客との接点を持ってファッションの素晴らしさを伝えたり、カッコ良い人を増やせる数も必然的に限られてしまう。
そこで、これらのビジョンを実現するための”手段”として、自身のフィッティングとカッティング能力を持って、高次元のDORSOのMTMスーツ/ジャケットを作り上げ、提案していると言うわけです。
MTMであればビスポークに比べて遥かに多くの顧客と接点を持つことが出来ますから、ビジョンを達成する上では理に適っていることは明らかですね。
■DORSOのスタイル
では、そんな思想を持つDORSOは、どういったスタイルを持つのでしょうか?
DORSOのMTMは齋藤氏がご自身の経験を元に、自分なりの工夫と美意識を反映させた独自のパターンがベースとなっているのですが、これまで所属してきたテーラーと、DORSOのスタイルは何が違うのか!?きっと、興味を持たれる方も多いのではないでしょうか。
齋藤氏の言葉を借りるのであれば、「(ご自身が感銘を受けた)イタリアのナチュラルな空気感」を多くに取り入れていると言います。
実際はどうなのか?店内にあったサンプルゲージを着用させて頂きましたので、普段からイタリアはナポリのサルトを好んで着ている私rm55の感性で評価をしてみたいと思います。
まず着せて頂いたのは、DORSOにおける最もベーシックなスタイルであると言う、こちらのスーツ(試着したのはジャケットのみ)。

ゴージラインはフィレンツェスタイルに見られるような角度がつけられ、ラペルの形状はミラノスタイルの雰囲気も感じられる、クラシックかつドレッシーな雰囲気を醸し出している一方で、肩周りはやや丸みを帯びたソフトな表情であることが特徴的。

ダーツは裾までは抜けておらず、ナポリスタイルのようなクセがないクリーンさは日本における多くのビジネスマンにとって受け入れられやすいスタイルのように思います。ナポリのど真ん中に居る私からすると端正さを強く感じますが、日本のどんな場所、シーンにおいても受け入れられやすいベーシックなスタイルとして設計されたのだと理解しました。

続いて着用したのはイタリア色をより強めたモデルだと言いますが、こちらはゲージではなく、齋藤氏の私物です。私と背丈が大きくは変わらないので着用させて頂いたのですが、ベーシックなモデルに比べるとゴージの角度、表情が異なりますし、袖の落ち方なども、よりソフトでイタリア的。スタイルで言うとナポリに近い印象です。

またダーツは裾まで抜けていますが、こちらはナポリを意識したと言うよりも、齋藤氏がイタリアで修業をした際の師匠の作り方がそうだったからと言うことでした。個人的には、こちらのモデルのスタイルが好みです。

そして最後には、同じく齋藤氏の私物であるビスポークジャケットも着用させて頂きました。こちらは斎藤氏がカッティングを行い、縫製は別の職人さんに依頼しているのだと言います。

スタイルは上記のイタリア色を強めた方のMTMモデルに近い印象ですが、こちらは手縫いで仕立てられている分、生地の違いを差し引いたとしても、MTMに比べると明らかに全体的に丸く、ソフト感が強く出ています。柄の合わせ方もかなり上手いですね。

これまで齋藤氏が培ってきたスタイルをベースにしながらも、自身が影響を受けたイタリアの美意識を反映させることで、日常生活の中で心地良く着るためのリラックス感と、スーツ/ジャケットと言うクラシックな服が持つ凛とした表情を表現されたのだと想像します。
クセのあるナポリのスタイルが日常になっている私、rm55の感性からすると、直球ストレートのイタリアではなく、日本人としての感性を通して表現した、”端正な顔立ちのイタリア服”と言う印象です。日本の職場環境を考慮したスーツに合うモデルと、よりイタリア色を強めてジャケットモデルとして使いやすい2つのスタイルを用意していることも顧客にとっては魅力的な点でしょうか。
■DORSOのMTMクオリティ
そんなスタイルを持つDORSOのMTMクオリティはどうでしょうか。サンプルのゲージや、齋藤氏の私物を着用させて頂いた範囲ではありますが、忖度することなく私の感性で表現してみたいと思います。
まず率直な感想として、”想像していたMTMの着心地を良い意味で超えてきた”と言うのが正直なところでした。やはりマシンメイドのMTMの場合、イセを入れるにしてもミシンとハンドでは入れられる分量に違いがありますし、手縫いだからこそできる可動域を持たせる縫い方などには対応できません。
よって、ビスポークや手縫いに慣れた私の感覚からすると、マシンメイドのMTMだと肩回りや腕の可動域が限られ、腕を動かすと”つっかかり”を感じると言うイメージがありました。ところがDORSOのゲージでは腕組はもちろん、腕を前に出しても背中が全くつっぱらないのには驚きました。マシンメイドのMTMでもカッティング(パターン)でここまでのレベルが実現できるのかと。(※)

※実際、サンプルを何回も制作し、パターンの改良を繰り返すと言う作りこみを行ったそうです。
ベーシックモデル、そしてイタリア色が強めのモデルともに、腕の可動域の問題はほぼないと言っても過言ではありません。生活の中で一番動かす肩、腕周りの稼働が良いと言うことは、それは”着心地が良い”と評価することが出来るわけです。首へのジャケットの乗り方や肩周りもソフトなので、一般的なMTMモデルの中でもかなり着心地レベルが高く、私がこれまで着用したマシンメイドのMTM用のゲージ等の中では一番動きやすかったです。

ご自身のオーダーされたスーツやジャケットの着心地が堅苦しいと感じている方は、まずはサンプルゲージに袖を通してみられることをおススメします。
ではDORSOのビスポークモデルと比べるとどうなのか?と言いますと、試着したのは私自身の体型に合わせて仕立てられたジャケットではないと言う前置きを置きながらも、首回りや肩の入り方は、やはり異なります。ビスポークの方がしっかりと体が入る印象、体にフィットして納まってくる感覚があります。ビスポークとMTMは構造や生産工程、価格などが全く異なるので本来は比較してもしょうがないのですが、違いがあって然るべきなのかなと。
ただ、数十万円と言うお金と、時間をかけてわざわざビスポークをすると言うのは、ある意味では完全に趣味趣向の世界なので、実用品としてのスーツやジャケットと言う観点で言えば、MTMで十分に良いスーツが仕立てられると言うのが個人的にずっと思っていることです。

と言うことで、気になる方は是非DORSOのMTM用ゲージを試着し、ご自身の感覚で味わってみてください。所有する既製品やご自分のMTMスーツと比べてみれば、違いは明らかかと思います。
■DORSOのラインナップと今後の展開
MTMスーツとして高次元の着心地を持ち、ソフトかつ端正なイタリアンスタイルを持つDORSOのラインナップと価格はどうなっているのでしょうか?齋藤氏に聞いてきました。

まずDORSOのMTM 価格(税別)は下記の通りです。
・スーツ: 14.5万円~ 中心価格:20万円
・ジャケット: 10.5万円~ 中心価格:17万円
※2023年3月時点
製作期間としてはオーダーから1ヵ月程度で仮縫い、そこから2ヵ月前後で納品と言うことでしたので、合計3か月程度の製作期間と理解しておけば問題なさそうです。
そして大きな特徴としては、"1着目限定で仮縫いサービス"を行っていると言う点です。採寸をし、一旦”仮の状態”で仕上がってきたスーツやジャケットを着用し、フィッティングの微修正を行うのが”仮縫い”です。
高価なビスポークでは当然の工程ですが、MTMのスーツやジャケットにおいて有償オプションではなく、オーダー料金の中に”仮縫いサービスがついている(1着目限定)”店舗をあまり見たことがないので、そういう意味ではより良いスーツ/ジャケットをご提案したいと言うDORSOとしての姿勢を感じることが出来る点かなと思います。
ちなみに仮縫いオプションがあったとしても、前編に記述しましたように、担当者が相応のフィッティングスキルを有していないと仮縫いの意味が全くないので、注意が必要。大切なのは仮縫いの有無ではなく、フィッティング担当者のスキルです。
なお、ビスポークはMTMでの経験を重ねる中で、”趣味趣向の世界に入りたい”と言う方に対してのみ現在は対応しているそうですから、その辺りに興味がある方はMTMスーツやジャケットでの経験を積みながら、ご自身の感性と相談されてみてください。
※ビスポークはMTMの中心価格のそれぞれ2倍程度(納期は4カ月~半年)と言う理解で良さそうです。
主力のMTMスーツ/ジャケット以外には、様々なニットを試された中で齋藤氏が気に入ったニットであると言う、イタリアのミラノのニットメーカー idascratch(イダスクラッチ)のオーダーニットの取り扱いもありました。

現在はカシミア70%×シルク30%のハイゲージのクルーネック、タートルネック、モックネックを提案されており、バスト、袖丈、着丈の調整が出来て、

準備のある色の中から好きなカラーでオーダーが可能だそう。価格は9.5万円(税別)とのこと。

質感はかなり良く、色の出方も美しいです。私が愛用するマウロ・オッタヴィアーニも採用する、イタリアを代表する老舗紡績メーカーであるカリアッジの糸を使っていることもあって絶対的な価格は高いですが、高品質なカシミアシルクと言う素材と、イタリアのニットメーカーにオーダーが出来ると言うことを考えると、面白い試みかなと思います。

私のような標準体型の方ですとなかなかニットをオーダーすると言う感覚にはならない方が多いのかもしれませんが、スポーツ体型で既製品が合わない方や、自分だけのオリジナルニットが欲しいと言うコダワリ派は是非ご相談されてみてください。
また服飾アイテムだと齋藤氏が気に入っていると言うアットヴァンヌッチのネクタイや

イギリスのメーカーのホーズだと言う、PANTHERELLA(パンセレラ)の取り扱いがあります。

更に齋藤氏がデザインをし、アクセサリーの職人さんが作り上げたと言うオリジナルのオーダーアクセサリーの展開(税別4.2万円~)もありました。DORSOの世界観を感じる、端正な中にイタリアの香りがするシンプルなデザインが特徴的。シルバー以外にも、ゴールドもあるようです。

現在はベルトのバックルなども準備されているようなので、近いうちにDORSOのスーツやジャケットに合わせるオーダーベルトも注文出来るようになると言うことです。

今回個人的に気になったのが、こちらのブルゾン。172cm 60kgで着用しているゲージは「46」。もともとゆとりあるサイジングのパターンだそうで、リラックス感ある表情が気に入りました。こちらは齋藤氏がパターンを作ったわけではないそうですが、DORSOの提案する生地であるドラッパーズの生地をのせた秋冬用が14.5万円(税別)、

スペンス・ブライソンのリネン地をのせた春夏用が11.5万円(税別)だそう。こういったブルゾンにもネクタイを合わせたり、夏場はノーネクタイでブルゾンを羽織って仕事をすると言うスタイルも良いかなと思っています。

今後は岡山産の生地を用いたデニムなど、DORSOの考える世界観を体現するドレス、カジュアルのオリジナルオーダーアイテムを充実させていきたいと仰っていましたし、体制が整えばビスポークの門戸を広げることも検討されているそうなので、齋藤氏の作り上げるDORSOの展開には要注目です。

今回は久しぶりの再会となりましたが、日本各地のみならず、海外でのトランクショーなどでお忙しい中、長時間に渡ってお時間を頂いた齋藤氏には、この場を借りて御礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました!
また、そう遠くはない間にお会いできることを楽しみにしています。

と言うことで、「前編」「後編」の2部構成でお送りした「DORSO(ドルソ) 齋藤力氏の魅力に迫ってみた!」はいかがでしたでしょうか?価格や納期等の情報はしっかりと齋藤氏に確認(2023年3月時点)して掲載していますが、その他の記事内容については私の感性に基づき、独断で書いています。よって、あくまで参考程度として頂き、是非、ご自身の感性でDORSOの世界観を味わって頂ければ幸いです。
こんにちは!
先日、神戸の老舗テーラーから独立をされた齋藤力氏が昨年立ち上げたDORSO(ドルソ)へようやく訪問をし、”じっくりと”お話を伺ってきました!
よって本日は「DORSO(ドルソ) 齋藤力氏の魅力に迫ってみた!:前編」と言うテーマでお届けしたいと思います。
なお、本テーマは「前編」・「後編」の2部構成とし、「前編」では店舗へのアクセス紹介と、結論としてのDORSOの魅力、どんな人におススメしたいか?について記述させて頂き、「後編」ではDORSOの思想やスタイル、クオリティ、そしてラインナップや価格、今後の展開等について取り上げてみたいと思います。
それでは、まいりましょう。
■DORSO(ドルソ) へのアクセス
まずは、DORSOへのアクセスからご紹介します。
DORSO
HP:
https://www.dorso.jp/
住所:
〒104-0042
東京都中央区入船2-9-10 五條ビル3B
電話:
03-4446-6141
営業時間:
9:00 ~ 19:00 (完全予約制)
定休日:
月曜日
電車で行かれる場合、東京メトロ有楽町線 新富町駅もしくは、東京メトロ日比谷線 八丁堀駅がDORSOへの最寄駅になるのですが、私は今回”日比谷線の八丁堀駅”から歩いて伺うことにしました。
一番近い出口は「A2」。

「A2」の階段を登りきると桜川公園がありますので、その公園を左手に見ながら直進します。

そして4本目の道を左手に入ります。

すると程なくして「P」と言うマークの付いた機械式駐車場の建物が見えますので、

その奥、向かいの建物がDORSOの入るビルになります。

白いタイルの「五條ビル」がそれです。

エレベーターで3階に上があると、「3-B」がDORSO。オリーブの木が目印です。八丁堀駅の「A2」出口から歩いて6分前後と行った距離感なので、駅からのアクセスは良いですね。ちなみに近くにコインパーキングが沢山あったので、車で来られる方はそれらを利用されるのが良いと思います。

■DORSO最大の魅力と唯一無二の存在価値とは!?
事前に予約をした時間に訪問し、インターホンを鳴らすと、久しぶりに再会することとなった齋藤氏が笑顔で出迎えてくださいました。

入店するとDORSOの服を着たトルソー、そして昨年10月1日に店舗を構え、本格的にOPENされたばかりにもかかわらず、顧客からオーダーの入った沢山のスーツやジャケットが並んでいるのが目に飛び込んで来ました。本当はもう少し早く訪問したかったのですが、齋藤氏もトランクショーで各地を飛び回っており、また私も少しバタついてしまったこともあって、このタイミングとなりました。

店内は”大人のサロン”のような落ち着いた空間で、大きなカウンター越しに顧客との対話を楽しむことが出来る空間デザインをとっています。

今回私はかなり長い時間を取って頂き、齋藤氏とお話をさせて頂いたのですが、個人的には、この”DORSOの店内の空間の作り”が、そのままDORSO最大の魅力であり、唯一無二の存在価値を体現しているのではないかと、実は感じました。

つまり、それは
「齋藤力氏との対話である」
と。
既に独立される前から感じていたことではあるのですが、下記に記載する「3高」こそ、齋藤氏の最大の魅力であり、DORSOに服を仕立てて貰う本質的な価値だと思っています。
1:”高い”コミュニケーションスキル
2:”高い”コンサルティングスキル
3:”高い”フィッティングスキル
以下、詳述します。
1:”高い”コミュニケーションスキル
齋藤氏と話をされたことがある方であれば誰しもご納得頂けるかと思うのですが、とても高い「コミュニケーションスキル」をお持ちです。
一言で言うと、話が”非常に”分かりやすい。
その理由は2つだと思っています。
①論理的であること
②相手の言葉で話をされること
まず、服と言うのは感性が大いに発揮される領域であると思うのですが、齋藤氏はこれまで培ってこられた知識とご経験を踏まえて、感性に頼ったふわっとした内容ではなく、話がとても論理的です。
感覚的な内容をしっかりと”言語化”し、”理解のしやすい論理構造”で話をされるので、聞いている方は理解が促されるわけです。
また、相手の反応を見ながら、相手の”理解できる言葉”を選んで話をされます。
例えば私は素人の中でもオーダースーツやクラシックファッションの分野についてはある程度のマニアックな知識を有し、経験も豊富とは言えずとも、そこそこの数をこなしているほうだと自認しておりますので、専門的な用語を含めて大抵のことは理解可能です。
これに対して、相手がスーツやオーダースーツに関する知識、経験がない方であった場合には、その方が分かるような表現に置き換えて、理解が促される話し方をされます。これによって不安が解消され、オーダーする際には”納得感を持って注文をすること”が出来るわけです。
これは齋藤氏の知識、経験の豊富さはもちろんこと、顧客が「理解する」こと、「納得する」ことに重きを置き、相手の(理解できる)言葉を意識して、話をされているからだと思っています。
スーツに関する知識、経験がない方であったとしても、また多少の知識と経験を有する私のような人間であったとしても、齋藤氏とコミュニケーションをとることで、スーツ/ジャケットに対する理解が深まっていきますし、理解が深まることでより高度なオーダースーツの楽しみ方が出来るようにもなりますので、”顧客自身にとっての勉強、成長”と言う意味でも、齋藤氏とのコミュニケーションには価値があると感じています。
2:”高い”コンサルティングスキル
また、コンサルティングスキルも非常に高いと感じます。具体的には、顧客の”嗜好”や”悩み”をしっかりと把握しながら、現在のワードローブ状況を鑑みて、悩みを解決したり、これからの装いを見据えた一歩先の提案をしたりしてくれます。
私自身の経験談として、私の好みやスタイルを理解し、更には日々着ている服(=ワードローブ)を把握したうえで、私自身ではなかなか選ばないような新たなご提案を齋藤氏はしてくださいました。結果として、これが”自分の装いの進化”に繋がったことを実感しています。
もちろん、DORSO(=齋藤氏)として持つ美のフィルターを通しての提案になりますが、それらを強いることはないので、顧客の持つ嗜好を軸に、それを進化させたり、幅を広げるような丁寧なコンサルティングが期待できます。
この能力はかなり稀有なものと感じていますが、恐らくこれは後述する、齋藤氏自身が独立に至ったことと深い関係性があるように思います。
3:”高い”フィッティングスキル
そして、テーラーとして大きな安心感を持つことが出来る理由が、高いフィッティングスキルを有している点です。
ビスポークであれ、MTM(メイドトゥメジャー)であれ、良いスーツを仕立てる際の最も重要な工程の1つが、フィッティングと言う、採寸や、仮縫い時の確認作業です。
これは本ブログでも何回か記述してきましたが、どんなに良質なパターンが描けても、どんなに縫製技術が高い職人が仕立てたとしても、フィッターとしての能力が低い方がフィッティングをしたら、良いスーツは絶対に出来上がりません。これだけは、断言できます。
それは、ミスをしない計算機であったとしてもインプットを間違えれば、誤ったアウトプットがなされることと同じだからです。
その点、齋藤氏は顧客の採寸(フィッティング)からカッティング(パターン作成)、そして縫製まで、一気通貫で自らこなせる能力を持っており、その上採寸や、仮縫いなどのフィッティング経験がかなり豊富。
経験値と言うのは非常に重要で、機械ではなく、人間が行う作業は”量が質に転化”します。質を求めるには、必然的に量をこなす必要があるわけです。
もちろんオーダースーツを販売されている方の多くは齋藤氏のような仕立て技術を持っていませんので、仕立て技術の有無は高いフィッティングスキルを持つ上での必須条件ではありませんが、服の構造を理解しているからこそ提供できる高度なフィッティングスキルは存在すると思っています。
実際、私が好んで着ているサルトリア・ソリートのルイージ・ソリート氏も仕立て技術を持つフィッター(カッティングも担当している)ですし、サルトリア・ナオイ、サルトリア・シャロンを展開するSharonのクリエイティブ・ディレクターである直井茂明氏も、仕立て技術を持つフィッター(実際にはカッティング、縫製も自身で行っています)です。
まとめると、スーツやジャケットに詳しくても、詳しくなくても、”安心、納得感を持ってオーダー”することが出来、”顧客の装いを進化”させる「コンサルティング能力」があって、サイズ、着心地において高レベルなスーツやジャケットが提供可能な「フィッティング能力」を持つと言う、この3つの要素(3高)こそ、「DORSO最大の魅力であり、唯一無二の存在価値」であると私は理解しました。
事実、開業して間もないにもかかわらず、多くの注文や、既にリピートオーダーを獲得していると言う状況が、オーダーサロンであるDORSOの唯一無二の魅力が多くの顧客に伝わり、評価を獲得している証拠ではないでしょうか。
■どんな人におススメしたいか?
では、どんな人にDORSOをおススメしたいのか?と言いますと、逆説的ではありますが、上述した3つのポイントに不安や、不満を抱いたことがある方には、特に強くお勧めしたいと思っています。
例えば・・・
・オーダー時のコミュニケーションにおいて専門的な用語が多く、理解が出来ずに不安を感じた経験
・自分が依頼した内容と異なるディティールで仕立てあがってきたような、コミュニケーションミスがあった経験
・流れ作業のような感じで、オーダースーツにおける対話を楽しめていない経験
・生地選びやディティールについて相談をしても、納得感のある提案がなかった経験
※例:「今人気の生地、仕様です。」「これがカッコ良いですよ。」程度の返答しかない
・自分の好みが固定化しており、同じようなスーツやジャケットばかりのワードローブに不満を感じた経験
・せっかくのオーダースーツなのに、サイズが小さい、大きい、着心地がイマイチなどの経験
・仕立てあがってきたスーツに対して、”なんか違う・・・”と言う違和感を持った経験
などなど、これまで経験したオーダースーツに関しての不安や不満はもちろん、気になる点があるような方は、オーダーの有無は置いておいて、まずは一度、DORSOに相談をしてみてはいかがでしょうか。

もちろん、上記には当てはまらない方であったとしても、装いの方向性やコーディネートなどのスタイリングを含めてご相談してみたい方や、後編にて記述するDORSOの思想やスタイル、世界観に共感される方々は、是非訪問されることをおススメします。

と言うことで、「前編」は以上となります。
近日中に公開予定の「後編」も是非、ご覧頂ければ幸いです。
こんにちは!
本日は「Kazami no(カザミノ) のビスポークバックが納品!」と言うことで、以前下記2つの記事にてお送りしておりました、「理想の鞄を求めて」の"完結編"をお送り出来ればと思います。
「理想の鞄を求めて:Kazami no トランクショー at Sharon:前編」
「理想の鞄を求めて:Kazami no トランクショー at Sharon:後編」
それでは、まいりましょう。
■理想の鞄を求めて:完結編
さて、昨年の5月に北参道にあるセレクトショップであるSharonさんで開催されたKazami no(カザミノ) のトランクショーに参加させて頂いてから9カ月が経過し、ようやく物語が完結することになりました。
先日、同じくSharonさんで開催されれいたイルクアドリフォリオのトランクショーのトランクショーに参加した際に、無事にビスポーク トートバックが納品されたのです。それが、こちらになります。

トランクショーに参加させて頂いた際の記事にも記載しましたように、ビスポークにおける大きな醍醐味の1つが「職人さんが培われてきた美意識や世界観を感じること」だと私は思っています。よって、基本的にはファーストオーダー時の要望は極力少なく、職人さんの作品(=スタイル)をそのまま受け入れることにしています。

今回もKazami noのアイコン!?的なバックの1つとなっているトートバックをオーダーし、唯一依頼した点は、PC等の重量物を運んだ際に、底面が折れてフォルムが崩れることを避けるための底面の補強。それ以外は、Kazami noの素の提案をそのまま受け入れています。


数カ月ぶりに対面したKazami noのバックですが、やはり当時の私自身の直感がブレていなかった、もっと言えば”自分の理想に限りなく近いフォルムと仕立を持つ鞄であることを再確認した”と言うのが率直な感想です。

私はファッションアイテムには大なり小なり”スタイルが存在する”と思っていることは、これまでブログに記載してきた通りです、今回のKazami noのバックも職人である杉山氏が目指している『柔らかさがあり、主張し過ぎない、しかし普通とは少し違う鞄』と言うスタイルをはっきりと感じることが出来ました。

例えば、柔らかなフォルム。今回はサンプルと同じ、ドイツのタンナーによる柔らかなシュリンクレザーを使って仕立てて頂いておりますが、この革の表情が活きる丸みを帯びたシルエットは、とても優しい印象を与えます。

私が好んで着用しているスーツやジャケットも、イタリアのサルトの中でも最も柔らかく、丸みを帯びた表情を持つと私が感じているサルトリア・ソリートなので、愛称は抜群です。

また、Kazami noのバックはほぼ全てが手縫いで仕立てられていますが、杉山氏の師匠であるオルタスの小松氏に学んだと言う技術が見て取れるとても丁寧な縫製。

そしてミシン縫いの精緻さとは異なる、手縫いならではリズミカルで味のあるステッチは、手縫いのスーツやジャケットを好んで着てる方にはたまらない表情であるように思います。

そのような手縫いならではの温かみを感じるディティールがある一方で、番手の違うヤスリを数種類使い、革の裁断面であるコバを丁寧に、手間暇をかけて美しく仕上げている様には、学びを得た師匠から高い技術が脈々と受け継がれていることも感じさせます。

そして杉山氏がデザインした、真鍮製のオリジナルバックルが備わったベルトが『普通とは少し違う鞄』 であることを唯一主張するディティールのようにも思います。

内部は小さなポケットが2つ備わっており、携帯や財布などの小物を収納しておく機能性も確保。

私はエレガントなスタリングを好んでいますが、柔らかさがあって、主張をし過ぎず、それでいてエレガントな雰囲気を感じるKazami noのバックはまさに理想のスタイル。首を長くして待った甲斐があったなぁと言う感慨深さを感じました。

これから仕事をメインに、活躍してもらおうと思っています。
■Kazami no(カザミノ) でビスポークする際に知っておきたいこと。
さて、まさに理想の鞄を仕立てて頂いたわけですが、実際に手元に届いて改めてじっくりと観察したことを踏まえて、今後Kazami no(カザミノ) でビスポークバックを仕立てたい!と言う方に向けて、事前に知っておきたいことをまとめてみたいと思います。
①オーダー後はのんびりと待つ!
私がオーダーした2022年5月時点では、納期は凡そ6カ月前後だと伺っていました。ただ、今回納品を頂いたのは、オーダーしてから9カ月ちょっと経過した、2023年2月後半でした。
以前お送りした記事に記載しましたように、記事の執筆時点では杉山氏がお一人で仕立てており、それもほぼ手縫いで仕立てています。よって1個/1ヵ月ほどの生産数であることに加えて、独立から間もないこともあって!?、私がそうであったように、口頭で伝えられた納期が多少ずれることが考えられます。
これまでスーツや靴の納期がずれたことがなかったで個人的にはちょっと驚きましたが、上記のような状況ですので、オーダーをしたらのんびりと完成するのを待つと言う心構えが大切です。(笑)
ちなみに現在の納期は2024年5月と言うことなので、オーダーから1年3か月ほどの納期となっているようです。
②スタイルを理解する。
実は以前、杉山氏の師匠が手掛けるオルタスでビスポークをし、納品を受けた直後のバックを拝見させて頂く機会がありました。オルタスのバックは見た瞬間、ただものではないオーラが出ており、ちょっとした感性の持ち主であれば、それが”普通のバックではない”ことは誰でも気づくのではないか言うほどの”圧倒的な存在感”に驚かされた経験があります。
これに対して、Kazami noのバックは”普通”です。恐らく、100人いたら99人がビスポークバックだとは気づかないと思いますし、オルタスのような圧倒的存在感もありません。
でもそれは、持ち主よりも前に出ることがない、つまり、杉山氏が理想とする”主張し過ぎない”と言う思想があるが故のスタイルだと理解していますし、分かる人が見ると気づく程度の”普通とは少し違う鞄”です。私にとってはまさに”このスタイルが理想”なのですが、この点をしっかりと理解してオーダーをすることが、高い満足度を得るためのポイントだと思っています。
構築的なブリティッシュスタイルや、精緻かつクリーンな表情を持つスタイルよりも、柔らかさがあり、どこかにスキがあるように感じる、まさにイタリアのナポリ仕立てのスタイルに合うように私自身は感じていますが、ご自身のスタイルや、Kazami noのバックの持つ特徴をしっかりと理解した上でオーダーすることをおススメします。
③今後はアトリエでのオーダーをメインに!?
実は、Sharonさんでのトランクショーは前回が最初で最後であり、今後は開催しないと言うことになってしまったようで、今回も納品は直接杉山氏から受け取るのではなく、Sharonさんに送られてきたものを受け取るスタイルでした。
せっかくビスポークをしたので、オーダー時と納品時には職人さんとの会話を楽しみたい自分からすると、この点はとても残念でした。
ただ、今後は品川にあるKazami noのアトリエをメインにオーダーを受け付けていくようなので、納期の件とスタイルを理解し、自分も仕立てて欲しい!と言う方は、是非、HPやインスタグラムから事前に連絡の上、品川の自宅兼工房に訪問されてみてください。
Kazami no 公式HP
私も今回はトートバックを仕立てて頂きましたが、リュックも良いなぁと感じていますので、次にオーダーする際には直接工房に伺ってオーダーをしたいと思います♪
こんにちはっ!
先日、セールで秋冬の定番小物であるグローブを追加購入しましたので、本日は「SALEでLA TERRA(ラ テッラ)のペッカリー・グローブを追加購入!」と言うタイトルで、これをご紹介したいと思います。
それでは、まいりましょう。
■7年ちょっとぶりに購入した、ペッカリーグローブ
今から遡ること、7年と3カ月ほど前に、自身初のペッカリーグローブを購入していました。
「LA TERRA(ラ テッラ)のペッカリー・グローブを購入!」
当時憧れていたペッカリーグローブを購入したことがとても嬉しかったであろうことが、文面から伺い知ることが出来ます。(笑)その際に購入していたのはベージュのペッカリーグローブでした。

他にもDENTSのディアスキンのブラウンカラーのグローブも所有しているのですが、やはりスタイリングの際に革小物の色を揃えることは基本中の基本。

これまでブラウン系の靴を履く際にはコーディネートの色合いによってベージュやブラウンを使い分けていたのですが、ドレッシーな黒靴を履く際にはブラックカラーのグローブがないために、寒いのを我慢してポケットに片手を突っ込むことでしのいでいました・・・。(汗)
しかし冬の乾燥した風の冷たさは歳を重ねた私にはキツく、これはブラックのグローブも買わないと体がもたない!と言う危機感だけは持っていました。それでも”我慢をしているうちに春が訪れる”と言うことを、ここ数年ほど繰り返していたのです。このような中で、先日Sharonさんに訪問した際にブラックのペッカリーグローブがセールになっていることを知りました。
いや、正確に言うとオンラインストア上でセールになっていることは認識していたのですが、手が大きくはない私のサイズは「7H」であるところ、ブラックで在庫のあったものは「8H」だったために、”大きすぎる”と言う理解でいたのです。
ところが、店頭にて何気なく手にはめてみると、「合う!」ではありませんかっ。(笑)
今回購入したラテッラのペッカリーグローブはイタリアメイド。どうやら、日本人の職人さんのような精緻さと言いますか、手先の器用さ?があるわけではないので、グローブのような小物アイテムはどうしても個体差にバラツキが出る傾向が強いようです。
確かにサイズ毎にパターンが存在していたとしても、グローブのような小物ですと縫い代が少しズレるだけで、サイズ感が異なってしまうことは容易に想像がつきますよね。
本来の「8H」サイズだと私には明らかに大きいのですが、今回はイタリアメイドならでは?の個体差によって、私にとってはとてもハッピーなお買い物となりました♪(笑)
■カシミアコートに合わせるなら、ペッカリー
と言うことで、早速連れ帰ってきたのが、こちらのグローブになります。

ペッカリーならではのシボの表情、しっとりとして、手に吸い付くような質感がたまりません。

今回私が購入をしたのは、ベージュのペッカリーグローブと同じ、アンライニング仕様。カシミアライニングもぬくぬくした感じも良いのですが、コートの胸ポケットに入れる際にどうしてもボリュームが出ることと、東京で過ごす冬であれば、アンライニングでも十分寒さをしのぐことが出来ると言う実感があること。そして、アンライニングならではの”手に吸い付く感覚”も魅力的でした。

なお、こちらは「7H」を着用した際のサイズ感。

そしてこちらが「8H」。確かに甲周りを中心にやや余裕を感じるのですが、指の長さなどには全く違和感がなく、バックを持ったり、交通系ICカードを取り出したりと言ったグローブをしたまま操作する動作には支障はないと言う判断でした。

実際に「7H」と「8H」を重ねてみても、大差がない・・・。(笑)

こういった良質な革小物は1度買ってしまえば、余程のことがないと買い替える必要はないですし、トレンドの影響も受けません。よって今回のようなセールでお得にマイサイズを購入することが出来るのであれば、その機会を逃さない手はないかなと思っています。

個人的にはカシミアのコートの胸ポケットにはペッカリーグローブを入れて歩きたいですし、手にはめても質感が合うように感じていますので、残り短い冬と、また数か月後にやってくるであろう冬に活躍してくれることを楽しみにしています。
ちなみに、私が購入した際にはセールは3月頭で終了予定と伺っておりますので、もしグローブの補充を考えている方は、是非店舗に訪問し、試着されてみてはいかがでしょうか?今週末あたりが最後のチャンスかもしれませんよ!?
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