スーツの愛し方を、考える。:『紳士服を嗜む』:飯野高広氏著
こんにちは!
昨晩より始まった、粋な着こなしさんによる、ルイジ・ボレッリの全品半額セール(※)!半額でボレッリが購入出来ることは滅多にありませんので、私も思わず身を乗り出してしまいました・・・。今季は春夏に早く移行しようと思っていたのに、ダメですね。(笑)また商品が届きましたら、改めてご紹介させて頂きます。
※5日間限定で、24日の13時59分迄。
それでは本題に入りたいと思うのですが、本日は久しぶりの書籍紹介です。
3年ほど前に、「靴の愛し方、を考える。」と言う記事にて「紳士靴を嗜む」と言う書籍をご紹介させて頂いたのですが、本日ご紹介する書籍は同じ著者である飯野高広氏が執筆した第2弾と言うことで、昨年2016年の12月16日に発売されました。その名も、「紳士服を嗜む [ 飯野高広 ]」。
「紳士靴を嗜む」は、私にとりましての本格的な紳士靴の指南書として大変勉強になりましたし、今でも分からないことなどがありますと、ペラペラとめくって読み直したりしている、私にとっての靴のバイブルです。
そんな素晴らしい書籍を執筆された飯野氏の第2弾と言うこともありますし、本Blogの読者様からもおススメ頂いたこともありまして、この度購入して読んでみました。よって、本日は簡単ですがご紹介させて頂ければと思います。
それでは、まいりましょう。
■現状に対する危機感!?
さて、私が書籍を読む場合は、大抵「はじめに」と言った「序」にあたる部分と、「目次」をざっと眺めた上で、大よその話の展開と言いますか、全体像を頭の中に入れてから読み進めるようにしております。
今回も例にもれず、そのように読み進めて言ったわけですが、「序」を読んでみて、服飾ジャーナリストであり、服飾を心から愛する!?飯野氏の”現状に対する危機感”のようなものが、この書籍を執筆するに至らせたのではないか、と言うことをまずは感じたわけです。
『見た目の流行やコスト的な要望に溺れ、着心地や耐久性といったより本質的な機能を、むしろ作り手や売り手が退化させてしまったのではないか?』
『~スーツを身につける側にしても、「合理」にまで嗜好、もとい思考が及ばないばかりに、瞬間瞬間の浅はかなノリだけでスーツを買ってしまったり、ファッション雑誌やネットに出てくる大量の情報を鵜呑みにしただけでそれを着てしまうケースを非常に多く見受けます。』
『そしてその根本には、服を企画する側・売る側そして買って身につける側のいずれも大多数が、身嗜みを唯一絶対的に支配する「ルール」としてしかとらえていないがゆえに、それを反射的に敬遠している「幼さ」が潜んでいます。だからそれを「コワす」「ハズす」ことでしか、個性を発揮できないのです。』
などなど、飯野氏ならではの愛の鞭と表現したら良いのでしょうか、正直頭が痛くなるような厳しい投げかけに自戒の念を込めながら、自分自身の背筋をピンと伸ばす感覚で、この度書籍を読み進めさせて頂いたのでした。
なお、飯野氏はそう言った現状を踏まえて、本書籍において、
『十分な思索を通じ、時と場に応じた最適解を導くための指針』の1つを大まかに提示し、
それが結果として、紳士服を『嗜む』きっかけになれば、と言う想いを持って執筆されたようです。
■「紳士服を嗜む」を、ざっと眺めてみる!
本書は、大きく下記3部の内容に大別され、執筆されております。
第1部:体に合ったスーツを着こなす
第2部:目的に応じたスーツを着こなす
第3部:嗜好を生かしたスーツをきこなす
第1部では、スーツを着る我々人間の骨の構造についてのお話があり、続きましてスーツがどう言ったパーツで構成されているのか、と言う話になり、最後に、スーツが体に合う、合わないとはどういうことなのか!?合わない場合は、どう言ったところに、どのような皺(シワ)が現れてくるのか、と言うことを細かく、丁寧に説明されていらっしゃいます。
まさに、体に合ったスーツを着こなすために自分の体を知り、スーツを知り、自分がスーツを着た場合の状態を知る、と言うステップなのですが、かなりマニアな私でさえ正直驚いてしまうほどの細かな内容でした。よって、一般の方はもとより、スーツに興味がある方をもってしても若干戸惑ってしまうのではないか!?とさえ感じるほどです。
そして第2部では、繊維から素材の特徴について詳述され、ジャケットやパンツ(トラウザーズ)、ジレ(ウェストコート)の細かな仕様を簡単な歴史や起源を踏まえて分かりやすく説明し、最後にスーツの着こなしの基本について、色をベースにしながら”場にふさわしい装い”を提示します。
第1部に続き、繊維や素材、スーツの各仕様についてのお話ももはや辞書レベルです。個人的には名称や仕様の詳細を全て覚える必要は全くないと思っておりますが、馴染みのショップのスタッフさんや、テーラーの方とお話をする際に、互いに理解しあえる共通言語として最低限の言葉は知っておくと便利かなと感じました。
また、個人的には色をベースにしたスーツの基本の着こなしのパートは、自分の感覚だけに頼っていた部分に理論が補足されるような感覚を覚えまして目から鱗のようでした。
最後の第3部は、スーツの歴史にはじまり、時代や国によるスタイルの違いについての説明や現在国内で購入出来るスーツの種類やそれぞれのメリット、デメリットについて解説します。更に、お気に入りのスーツを長く着用するためのメンテナンスのテクニックに触れた上で、飯野氏によるスーツとの付き合い方の提案や最新のスーツ事情を最後に触れるという構成です。
第3部は、私も本Blogを執筆する中で以前調べたことなどが多数掲載されておりましたので、新たな知識を入れ込むと言うよりは、自分自身の知識の整理や確認、補完的な感覚で読み進めることが出来たパートでしたが、それでも第1部、2部同様に、かなり細かい(マニアックな)内容でした。
全体では300ページを超える大作ですので、上記に記述したようなたった数行で本書籍の魅力、内容をご説明さしあげることはことなど、私には到底出来るはずもないことではございます。ただ、目次のようなざっくりした全体像の把握くらいはして頂けるのではないか、と考えております。
■スーツの愛し方を、考える。
で、私rm55としておススメなのかどうなのか!?と言う点ですが、飯野氏がこれまでご経験され、蓄積された辞書のような詳細な内容に加えて、かなり丁寧かつ分かりやすく記述されている点は素直に凄い!!と感嘆しつつも、正直読者層と言いますか、ターゲットが私の場合はパッと思いつかない、と言うのが率直な感想です。
どう言う方におススメしたら良いのか!?と言うのが直ぐに思いつかない、と言う意味ですね。
内容がかなり細かいので、新入社員やスーツをこれから買って行こう!と言う方ですと、若干引いてしまうと言いますか、そんな事を知らないといけないの!?とスーツに対するハードルが上がってしまう気が致します。
では、散々スーツを仕立ててきた、または沢山買ってこられたようなプロレベルのスーツ好きの消費者向けか!?と言われると、そうでもないような気がしてしまいます。なぜなら、そう言う方は数ある経験を通して、書かれているような内容を感覚的には身につけてきていらっしゃる(もちろん中には理論も含めて)と思うからです。
じゃ、プロ向けなのか!?と言いますと、本書記載の内容を理解、知っていれば顧客の信頼も勝ち取れると思いますし、良い提案も出来るように感じますが、こちらも仕事を通じて既に知っているよ、と言う方も多数いらっしゃるように思うのです・・・。
とは言え、ここまで書いてきましたので、何か答えをださなければ!と勝手に1人で焦っているのですが、悩んだ末に出した答え!?は、
「アマ、プロ問わず、服を心から愛する、凝り性の方」
であれば、十二分に本書をお楽しみ頂けるのではないか!?と考えました。(笑・汗)
それこそ「スーツの愛し方」は千人いれば、千通りの”愛し方”があると思います。起源や歴史的背景、素材の詳細については知らなくたってスーツを着るのが好きだよ!と言うのも1つの愛し方だと思いますし、逆に起源や歴史的背景、素材についてはマニアだけれど、コーディネートは苦手。でもスーツが好きだ!と言うのもまた1つの愛し方ですよね!?
そんな数あるスーツの愛し方の中でも、色々なことを突き詰めてみたくなるような、凝り性の方であれば、アマ、プロ問わずに、詳細な内容を丁寧に分かりやすく執筆された飯野氏の『紳士服を嗜む』をチェックする価値は十分にあると思います!是非、ご覧になってくださいませ。