スーツも”所有”から”利用”する時代へ!?:suitsbox
こんにちは!
本日は、「スーツも”所有”から”利用”する時代へ!?」と言うテーマでコラム的にお送り出来ればと思います。
それでは、まいりましょう。
■自分のアタリマエは、世間のアタリマエにアラズ・・・
先日、「服に愛着を持つために大切なこと」と言うテーマで記事をお送りしておりました。
ファストファッションを中心に大量廃棄される服の存在が明るみになったことを契機として、「服に愛着を持つ」と言う感覚を自己分析してみた結果、大切なことは「手がかかること・手をかけること」であると。
日々スーツを着用した後のブラッシングやシワ伸ばし、そして陰干しなど、面倒だし手間なんですが、服と一緒に過ごす時間が増えれば増えるほど愛着を持って、大切に使う意識が自然と芽生えるのではないかと言う主張をしておりました。
そんなことを記載していたわけですが、もしかしたら自分のこの感覚は世間一般の感覚とはズレているのかもしれない。自分が大切に感じていること、アタリマエだと思っていることは、実は世間的にはアタリマエではないのかもしれないと、そんなことを感じたニュースを拝見したのです。
それは、紳士服(スーツ)の販売を主たる事業としている大手企業であるAOKIが、この2018年4月30日から『スーツとシャツ、ネクタイをセットにした定額のレンタルサービス「suitsbox」を開始する。』と言うものでした。
※画像はWWDの記事より拝借しております。
※スーツ3着とシャツ5枚、ネクタイ3本のアドバンスドコースは(月額2万4800円)
紳士服、とりわけ紳士スーツのマーケットが全体としては厳しいものであることは容易に想像が出来ますよね。仕事における服装の多様化によりスーツで仕事をされない方も増えておりますし、街中を歩いていても、クールビズ等によってネクタイをしない方も相当数いらっしゃると言う実感を持っていたりします。
そう言った事業環境を踏まえて紳士服を販売する大手企業は事業の多角化を行っており、AOKIホールディングスもこの例に漏れないわけですが、そのような中で社内の若手社員を中心に新規事業のプロジェクトを立ち上げ、マーケットリサーチ等を行った結果、事業化にこぎつけたのが冒頭に記載したスーツとシャツ、ネクタイをセットにした定額のレンタルサービスである「suitsbox」だったのだとか。
35歳と言う若さで事業を統括されていらっしゃる永沼大輔AOKI suitsbox事業部 事業責任者は言います。
『今の若者はモノの所有ではなく使用に価値を見出しているんだと感じたんです。~~~じゃあ、買う以外のスーツの選択肢というのを考えた時の1つがレンタルでした。しかも1回借りてやめるのではなく、サブスクリプション(定額サービス)がいいのではないかと。』
昨今よく聞くキーワードの1つが、「所有から利用(使用)へ」と言うもの。
モノを所有すると言うことに価値を見出さず、利用、使用することに価値を見出すと言う価値観が若者を中心に広がっていると。シェアリングエコノミーなんて言う言葉もありますが、自動車や自転車も所有することはせずにレンタルで済ます。フリマアプリに代表されるCtoCプラットフォームの普及も、実質的には一定期間利用したら売ると言う意味で広義のシェアリングに位置づけられたりしております。
要は、消費者にスーツを販売すると言う「スーツを(購入して)所有してもらう」と言うことを事業の生業にてしていた企業が、販売するのではなく「スーツを(レンタルで)利用してもらう」と言うことに取り組み始めたと。
これまでもleeapなどのメンズのファッションレンタルサービスはありましたが、スーツと言うドレスファッションの分野かつ、これまでスーツを販売していた企業がレンタルサービスを開始すると言う流れは、なんだか非常に大きな意味を持つような気がしてなりません。。
スーツもとうとう”所有”から”利用”する時代へなるのかなと。
■密かな期待と希望
このような中で、自身の収入の中で自分自身の為に使うことの出来る金額のほぼ全てを服につぎ込んでいる私rm55にとりましては、大手企業であるAOKIがスタートさせる「suitsbox」に対して密かに期待と希望を持っていたりするのです。それは、
スーツと言うメンズドレスファッションに興味を持つ方が増えるかも!
と言うものです。もちろん、興味を持った方が皆手縫いのスーツに行きつくことはないと思うのですが、それでもこのメンズドレスファッションに興味を持つ方が増え、少しでも業界が盛り上がったら個人的には嬉しい限りです。
「suitsbox」の事業責任者である永沼氏はターゲットユーザーについて、ある程度の収入はあるけれど、『ファッション非エリート』で、『大都市圏にいる25〜35歳』と言う表現をされております。
つまりスーツを着る機会があり、平均以上の収入のある大企業に働いている若手かつ、服、とりわけスーツの着こなしに対して苦手意識があったり、あまり興味を持っていない方と言うイメージでしょうか。
それでもマーケティングの一環として行ったクラウドファウンディングでは服が好きな方であったり、年齢層が高い方も多かったそうですから、実際に事業がスタートしてから顧客層を見極めたいともお話されていらっしゃいました。よって事業をいざスタートしてみたら、事前の想定ターゲットと現実的に利用する顧客層ではズレが発生することも大いに考えられますよね。
ところで、個人的には「所有から利用(使用)への価値観の変化」が本質的に起きているとは、実は思っていません。可処分所得の減少や将来に対する不透明感と言った背景が指摘されることもありますし、お金を使う先の多様化なども、その要因としてあると思うのですが、実際は自分の本当に興味のあるモノは買っているのでは!?と思っています。
つまり、限りある所得を何に使うかと言うことを合理的に考えた結果、自分の中で興味のある、優先度の高い分野にはお金を使うけれども、そうではない分野については出来るだけ配分するお金を減らすと。その結果、優先度の低いものはシェアを中心とした、所有よりも低コストで済むサービスを利用しているのではないかと言うことですね。
よって「suitsbox」のようなスタイリストが選ぶ旬なスーツ、シャツ、ネクタイのセットのレンタルサービスを利用することで、ドレスファッションが好きになったり、興味が湧き、自分の中での優先度が上がった方は、それこそ選んで貰ったスーツの”利用”から自ら選んだものを”所有”する方に移行していくのではないかと思うわけです。
もちろん中にはサービスとして利用し続ける方もいらっしゃると思いますが、「suitsbox」をきっかけとしてメンズドレスファッションにハマる方が1人でも多くなることを”密かに期待”し、そしてメンズドレスファッションの業界が少しでも盛り上がることに”希望”を持って、「suitsbox」のその後をウォッチしていければと思います!
※上記記事中の『』は、全てWWDの「AOKI初、異色のレンタルサービスはどうやって生まれたのか」より引用しております。