トータルブランドとしての難しさ。:LUIGI BORRELLI(ルイジボレッリ ルイジボレリ )コットンストレッチギャバジンサイドアジャスター1プリーツパンツ
こんにちは!
本日は「トータルブランドとしての難しさ」と言うテーマを掲げてお送りしたいと思います。
それでは、まいりましょう。
■トータルブランドとしての難しさ
ファッションブランドの捉え方は様々ですが、展開しているアイテムと言う切り口を用いた場合、トータルブランドと専業ブランドと言う分け方が出来るかと思います。
その名の通り、トータルブランドとはジャケットからシャツ、ネクタイ、パンツ。そして中には靴に至るまで、頭からつま先までのファッションアイテムを全て自社ブランドとして提供しているブランドであり、専業ブランドとは、自社が強みを持っている特定のアイテムに絞って提供をしているブランドのことを言います。
例えば本日取り上げるLUIGI BORRELLI(ルイジボレッリ ルイジボレリ)は、今でこそアウターやスーツ、そしてジャケット、パンツにシャツ、ネクタイと言ったアイテムを全方位で展開するトータルブランドとして知られておりますが、元はナポリのカミチュリア(シャツメーカー)として評判を呼んだところからスタートしています。つまり、シャツの専業ブランドからスタートし、徐々にその取扱いアイテムを増やし、トータルブランド化したと言うことですね。
最近では、スティレラティーノやバルバなんかがトータルブランド化しておりますし、日本では専業ブランドのように見えても、イタリア本国などではトータルでアイテムを提供しているブランドもあったりします。
ではなぜトータルブランド化していくのか、と言うことを考えてみますと、ビジネス的に言えば、これまで養ってきたブランド力をベースとして他のアイテムを提供することで売上の拡大をスムーズに目指すことが出来ますし、ブランドとしての世界観を全てのアイテムに対して浸透させることで、ブランド力の更なる強化を行うことが出来ると言う点もありますね。
これに対して、愚直なまでに自社の強みにこだわっているブランドもあります。例えばインコテックスやPT01など、パンツ専業のブランドとして知られているブランド等がそれにあたります。
様々な新興パンツブランドが出てくる中で、ファクトリーブランドとしてトップの座を維持し続けているその裏側には、長年培ってきたノウハウを元に、強みに集中し、余計な事には手を出さないと言う姿勢が功を奏している部分もあるのかもしれません。
なぜならトータルブランド化する際には、その多くが自社生産ではなく、他社に生産を委託する形で取り扱いアイテムのラインを増やすことになります。それもそのはずで、ビジネス的に言えば新たなチャレンジをするのに多大な投資をして失敗をしてしまうと大きな傷を負いかねない状況になりますし、ゼロから立ち上げるよりも、得意なメーカーに生産を委託した方が立ち上がりのスピードが早いと言う側面もございます。
しかしながら、そこに落とし穴があるような気が個人的にはしています。
ブランドを立ち上げる際と言うのは、得てして高い志であったり、強烈な情熱に後押しされる場合がほとんどだと思うわけですが、その高い志、そして情熱をトータルブランド化する過程において、全てのアイテムに対して貫き通すことが出来るのか!?と言うと、中々難しい場合もあるのかなと。
つまり、製品としてのクオリティよりも、売上と言いますか、ビジネス先行にならざるを得ない状況もあったりするのだと想像するわけです。
すると長年のファンであった方々は、新たなアイテムを手に取ったときに、何か違うぞ!?と感じる。(こともある。)そうなりますと、元々の強みであったアイテムにさえ、大なり小なりの影響が出始める可能性もあるのかもしれないと。
なぜこんなお話をするのか、と言いますと、なんとなくそんなことを感じたことがあったからなのです。
■ルイジボレッリ ルイジボレリのコットンストレッチギャバジンサイドアジャスター1プリーツパンツ
ルイジボレッリと言えば、私に質の良いネクタイの素晴らしさ、楽しさを教えてくれたブランドであり、コストとクオリティのバランスが高次元でとれたシャツは今でも買い足すことがあるほど、気に入っているブランドの1つです。
この度、そんなルイジボレッリのドレスチノを購入してみることにしたのです。
それは、クールビズ用のドレスチノを探している中で、ネクタイやシャツの品質の良さを知っているルイジボレッリの2019SSアイテムの中で良さそうなものがあったと言う点と、それがセール対象となっており、お得に購入できるタイミングに出会えたからです。
本Blogをご覧頂いている方であれば既にご存知のことと思いますが、私個人としては手縫いのブランドや、スミズーラ(ビスポーク/パターンオーダー)によって仕立てて頂いた服を好んで着ております。
例えばパンツのブランドで言えば、前者はレ・スパーデがそれにあたりますし、後者で言えば、最近ではサルトリア・シャロンによるパンツが私にとっては非常に良いので、立て続けにオーダーをさせて頂いていたりするわけです。
シルエットや履き心地、雰囲気など、多くの面で大変に気に入っているのですが、唯一!?気を遣うのが、メンテナンス。
それは、クリーニング店に出してしまうと手縫い箇所の解れであったり、プレスによる履き心地の変化が気になってしまう・・・。よって、汗をかいてしまう電車移動の日には、気軽にクリーニング店に出せるファクトリーブランドのパンツを用いることが多いのです。
そのような背景から信頼のおけるブランドの1つであるルイジボレッリのパンツを購入してみました。特にクールビズ、スーパークールビスではカジュアルな装いが増えますので、チノパンの中でも自らのスタイルに合わせ易いドレスチノをセレクト。
生地はイタリア・ミラノの名門だと言うLARUSMIANI(ラルスミアーニ)の『コーマ糸を高密度に打ち込んだ、春夏用のコットン
ストレッチギャバジン』だそうで、程良い光沢感とクリーンな表情はカジュアル過ぎない雰囲気を出すのにひと役かっています。
今回特徴的なのは、『旬のサルトリアテイストを取り入れたサイドアジャスター付きの1プリーツパンツ』と言う点。普通、サイドアジャスターがつく場合は大抵がベルトレスパンツとなりますが、これは(日本側の企画だと私は思うのですが)日本のマーケットを
意識してベルトループがついているのです。
恐らくイタリア人からしたら「?」な仕様なのかもしれませんが、サイドアジャスターで絞ってベルトレスでも楽しめるし、必要に応じてベルトをして、ビジネスカジュアルにも使えますよと言うことなのだと理解しています。
穿いた後には気兼ねなくクリーニングに出せるマシンメイドのパンツであることに加えて、”ドレス”チノであること。そして、ワンプリーツと言う点が今回の必須条件でしたので、サイドアジャスターはおまけ的な位置づけなのですが、それもまた良しと。
実際に生産しているのは『誰もが知っているイタリアのパンツ専業ファクトリー』だそうで、ディティールや副資材も一定の物が揃っていたりします。
先日早速穿いてみましたが、太過ぎず、細すぎず、腰回りはプリーツが入り、ワタリもやや余裕がありながら、裾に向かってテーパードしていく旬のシルエットは合わせやすい印象。
この日はベルトはしませんでしたが、アジャスターで調整が出来るので”ほぼ”狙った位置でパンツを固定する事が出来ました。また、履き心地はチノパンであることを考えれば必要十分。
ではおススメか!?と言うと、実は個人的にはちょっとおススメ出来ないなと感じています。
私は、今回でボレッリのパンツは3本目。1本目はブラックデニムで、その後はチノを購入しているのですが、1本目のチノは穿いて1か月もたたない内に、3点留めのフロントの内側の釦がちぎれてとれてしまい、2本目のチノである今回は、丈のお直しをする際に股部が裂けているのに気付きました。。
実際によくよく目を凝らしてボレッリのパンツを見てみると、副資材はついていますが、縫い付けが雑。
釦の付き方も甘いように感じます。
『誰もが知っているイタリアのパンツ専業ファクトリー』ではあるものの、皆が知っているのとクオリティがしっかりしているのとは別問題。そこに相関性はないわけです。
個人的にはどこのファクトリーか推測がついているのですが、せっかくネクタイやシャツが良くて気に入っていたボレッリですが、今後ボレッリのパンツを買うことはちょっと難しいかなと感じた出来事でした。
他にも夏場の汗をかくシーンに使えて、気兼ねなくクリーニングに出せるグレーのウールパンツを購入しようと思っていたのですが、ボレッリや新興のパンツ専業ブランドではなく、クオリティが安定しているパンツ専業のファクトリーブランドのトップを走る、インコテックスやPT01がやっぱり良いのかなと思い直しています。
トータルブランドって、やっぱり難しい・・・。