クラシックを再解釈。Sartoria Sharon によるカシミア ダブルフェイス アルスターコートが納品!
こんにちは!
本日は「クラシックを再解釈。Sartoria Sharon によるカシミア ダブルフェイス アルスターコートが納品!」と言うテーマで、先日納品を頂きました、Sartoria Sharon のアルスターコートをご紹介したいと思います。
それでは、まいりましょう!
■クリエイティブディレクターたる所以
実は私、昨年11月12日から14日にかけて開催されたSartoria Naoi / Sartoria Sharonのトランクショーにおいて、新たな商品として企画されていた、"Sartoria Sharonのカシミア ダブルフェイス アルスターコート"をオーダーしておりました。正直まったくオーダーするつもりはなかったのですが、店内に掛けられていたコートの何とも言えない柔らかな雰囲気に魅了され、試しに着てみた結果、気付いたらオーダーをしている自分がおりました。(笑)
ちなみに今回のサルトリアシャロンによるカシミアのダブルフェイス アルスターコートですが、自分の中での固定観念、既成概念が大きく揺さぶられる結果となったことを、まずは告白しておきたいと思います。
まず、そもそもSartoria Sharonによるカシミアのダブルフェイスを用いたアルスターコートの特徴は、『副資材は「ボタン」と「糸」のみ。究極の柔らかさと手縫い本来のアジを感じ』ることが出来る点にあると、公式HP(※)の中で謳われています。
※「新しい生活様式を見据えた至極の大人用コート Sartoria Sharon」
実際、着心地もビジュアルのそれを裏切らず、軽く、驚くほど柔らかい。コートと言うよりも、公式HPにも記載のある、”ブランケットを羽織っている”感覚に近いような驚くほどの心地良さがありました。
それはカシミア100%の生地による柔らかさと手縫いならではのソフトな仕立てに加えて、芯地や裏地などの副資材が使われていないことによって実現しているのだと思うのですが、個人的に驚いたことが、ハンガーにかかっている状態でも驚くような美しいナチュラルなドレープ感が出ている点。
一般的に、服の立体感と言うのはキャンバス芯などの芯材、副資材を使うことで実現していくものだと思うのですが、サルトリア・シャロンのコートは、そう言った副資材無しに、これを実現しておりました。
そのような軽くて柔らかい、まるでブランケットのようなコートが企画された背景には、時代の変化があると言います。
ビジネスマンの誰もがスーツを着てネクタイを締めると言うビジネススタイルは過去のものとなり、ビジネスウェアのカジュアル化はコロナ禍によって更に進行。今後もその大きな流れは止まることはないと思われます。
このような中でファストファッションではなく、化繊素材を使ったスポーティウェアでもない、それでも大人の男性がリラックスして着用することのできるコートとして考案されたのが、今回のコートになるわけです。
※これまでのクラシックなコートを否定するのではなく、新たな選択肢としての提案
私が普段着用しているような手縫いのスーツやジャケットに合わせることで、よりリラックスした表情をつくることも出来ますし、ノーネクタイのビジネスカジュアルスタイルや、ジャケットにタートルネックを合わせるような、よりカジュアルなスタイリングにばっちりとハマる。それでいて、しっかりと大人っぽい雰囲気を醸し出すことが出来ると言う点が新しい。
クリエイティブディレクター。
最近よく耳にする言葉の1つです。”クリエイティブ”ディレクターとは、決して既存のアイテムに対して、色や素材を変えたり、パターンの一部を変えて商品を企画することが本来の仕事ではないはずです。時代、社会の流れ、変化に対して新しいスタイル、ファッションを提案していくことこそ、本来クリエイティブディレクターが生み出す、最大の価値ではないでしょうか。
Sharonオーナーであり、プロデューサー的ポジションでもあるK氏、そして仕立て職人であり、サルトリアシャロンのクリエイティブディレクターである直井茂明氏が新たに生み出した、クラシックなドレスウェアを好む大人のためのカシミア ダブルフェイス アルスターコートは、数年後に時代の転換点における名作だったよね、と語られることになるのではないか、と大げさながら個人的には思っていたりします。
以前ご紹介をしたSharonオリジナルのブランドであるラテッラのスエードブーツ(※)もそうでしたが、何かを真似たり、トレースするのではなく、独自のフィルターを通して新たな付加価値をつけた商品を生み出し、提案をする。そんなとことろに、服好きとしてドキドキ、ワクワクしてしまう自分がいたりします。
※「LA TERRA(ラ テッラ) By イル・クアドリフォーリオ のスエードブーツが快適すぎた!」
そのような新しい価値、スタイルを提案するSharonさんの今後の展開には目が離せないですし、もしかしたら今年の秋冬や来年あたりには、ラテッラのスエードブーツやサルトリアシャロンの副資材を使わない手縫いのアルスターコートに似た商品が、他のブランドから登場することもあるかもしれませんね。
■クラシックを再解釈:Sartoria Sharon によるカシミア ダブルフェイス アルスターコート
さて、今回私が選んだ生地は、密な毛羽としなやかさに加えて、上品な光沢感を有するカシミア100%のダブルフェイス(目付は640g)になります。色はグレージュカラー。サンプルゲージに使われていたキャメルカラー(ヴィキューナカラー)も魅力的だったのですが、よりナチュラルな色合いと、1着分しかないと言う点に惹かれ(笑)、こちらを選びました。
そして納品されたサルトリアシャロンのカシミア ダブルフェイルのアルスターコートがこちらです。何とも言えない優しく、エレガントなグレージュカラー。力が程良く抜けた、リラックスしたシルエット。
直井氏が工房まで行って職人さんに縫い方を指導することで実現した、不均衡の美を有するステッチ。
アルスターコートの襟型。クリエイティブディレクターであり、カッティング(パターンメイキング)を務める直井氏のスタイルが良く表れている襟の表情です。
ボタンと糸以外の副資材は一切使われておらず、もちろん形を整える芯材も使われていなのですが、このシルエット。好きな方にはたまらない表情かと思います。(笑)
このような美しいドレープ感が出せるのも、ダブルフェイスのカシミア生地の柔らかさ、そしてアイロンワークと甘く縫うことの出来る手縫い技術、そして副資材が一切使われないことによる賜物。
袖にはボタンがつかず、よりリラックスしたコートであることが表現されています。
肩ひじ張らず、ウエストを絞り込むこともないAラインの、”ゆるい”シルエット。この辺りまでくると、このコートが持っている本質的価値に気付き始めた読者様もいらっしゃるかもしれませんね。
ダブルフェイスのため、インナーにもカシミアが表れているのがとても贅沢。
そして芯材が入っていない、柔らかい襟。ここは、このコートの着用時における肝となるポイントです。
ご存知の方も多いと思いますが、ダブルフェイスの生地は通常と仕立て方が異なりますので、量産品ともなると、ダブルフェイスを扱うの専門技術を有するファクトリーが担当することが多い生地の1つです。特に仕立てにおいて手間、暇がかかるポイントが、この裾の処理。
ダブルフェイスはその名の通り、生地を2枚重ね合わせることで成立しています。実際、今回は640gのカシミア生地なので、320gのカシミア生地が2枚重ね合わさることで出来ています。これは特殊な機械を用いて下記の写真のように2枚の生地が縫い合わせれているのですが、裾の処理は2枚の生地を一旦剥がして、内側に縫い込むように整形していきます。
ダブルフェイスなので、2枚分の生地量を使いながら仕立てにおいても手間と暇がかかっている、非常にラグジュアリーなコートがカシミアのダブルフェイスのコートなのですが、これを今回のようなリラックスした仕立てにすること自体がとても贅沢なことだと思っています。
ただ、私が冒頭にて「自分の中での固定観念、既成概念が大きく揺さぶられる結果となった」と記載したのは、カシミアのダブルフェイス生地を用いているからであるとか、ボタンと糸以外の副資材を一切使っていないからであるとか、手縫いだからと言うことではありません。
私が上記のように記載した理由は、これまでのクラシックウェア、ビスポークと言う世界観を新たに現代の価値観、空気感でもって再解釈したコートだと感じたからです。
これまでの画像や、下記画像からもお分かり頂けると思いますが、肩幅が広く、落ちている点や、Aラインであることから、あえて"身体に沿うようなシルエットになっていない"点こそ、このコート最大のポイントだと思うのです。
英国で生まれたメンズクラシックウェアの世界におけるビスポークの基本は、その人の身体に合わせてスーツを仕立てること。肩幅を合わせることはもちろん、身体のサイズに合わせて、それぞれのテーラーやサルト、職人が考える理想の男性像を、スタイルと言う形で表現をする。例えば肩を広くとり、ウエストを絞ることで逆三角形の上半身を強調し、力強い男性像を表現したり、またはサルトリア・ソリートのように、ショルダーラインはナチュラルにとりつつも、ボリュームあるバストによって色気を出すアプローチ等、様々。
しかし、どんなスタイルであれ、基本はその人の体型、サイズに合わせること。
ところが今回のサルトリアシャロンのアルスターコートは、誤解を恐れずにいえば、そうはなっていないのです。着心地と言う意味では、首筋にしっかりとフィットさせることでコートの重量を支え、コートが身体からブレることのないポイントを作るのですが、肩を落とし気味につくり、Aラインとすることでウエストを絞らない、身体に沿わせないスタイルは、メンズクラシックウェアのオーダーアイテムとしては、これまでなかった在り方ではないでしょうか。
これを化繊やマシンではなく、手縫いのパターンオーダーかつ、ダブルフェイスのカシミア生地を使って表現することで、クラシックウェアが好きな大人が大人っぽさを失うことなく、カジュアルに、リラックスした表情を持って着用することが出来るのです。
恐らく、ビスポークの歴史が長く、本場であるイギリスやイタリアでは発想することの出来ない、日本人だからこそ出来た提案ではないでしょうか。
時代や価値観が変化していく以上、何かを維持するためには立ち止まったままではなく、自らも変化をしていく必要があると思っています。そう言う意味では、そんな社会の変化、価値観の変化を上手く取り込み、"クラシックをSharonと言うフィルターを通して再解釈する"ことで生み出されたのが、Sartoria Sharon によるカシミア ダブルフェイス アルスターコートである、と言うことが出来そうです。
今月18日から開催予定のサルトリア・ナオイ/サルトリア・シャロンのトランクショー(※)では、本コートに春夏用の生地を載せた新たな提案もなされる予定と伺いましたので、気になる方は是非、お問い合わせされてみてはいかがでしょうかっ!?
※「<Sartoria Naoi・Sartoria Sharon>トランクショーのご案内」
是非、Sharonと言うクリエイティブディレクターが新しい時代に提案する、"クラシックを再解釈"したメンズクラシックウェアを堪能されてみてください。