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ファッションを通して自らの人生と向き合い、美しいと感じるスタイルを追及するブログです。

DORSO(ドルソ) 齋藤力氏の魅力に迫ってみた!:後編

こんにちは!
本日は前回お送りした【前編】を受ける形で、「DORSO(ドルソ) 齋藤力氏の魅力に迫ってみた!:後編」と言うテーマでお届けしたいと思います。

なお、「後編」ではDORSOの思想やスタイル、クオリティ、そしてラインナップや価格、今後の展開等について取り上げてみたいと思います。

それでは、まいりましょう。

■DORSOの思想
DORSOはMTMのオーダースーツ/ジャケットを主としたオーダーサロンです。現時点でオリジナルのアクセサリーや、セレクトしたオーダーニット、ネクタイ、ホーズ等も一部扱っていらっしゃいますが、メインはMTMのオーダースーツやジャケット。

なぜ、ビスポークではなくMTMなのか。なぜ、ビスポークを扱う老舗テーラーから独立し、あえてMTMを主軸としたDORSOを立ち上げたのか。そこには、齋藤氏なりのビジョンがありました。

それは「メンズファッションの素晴らしさや良さを多くの人に知って貰い、カッコ良い人を1人でも多く増やしたい」と言うもの。

齋藤氏は物心ついた頃から”ファッションに魅了”され、早い段階からファッション業界で働くことを意識していたと言います。そして、ご自身が行った様々なチャレンジの中で挫折を経験した際にも、自身に寄り添ってくれた”ファッションの持つ力”を信じている。

だからこそ、上記のようなビジョンを持つに至ったのだと思いますし、また「前編」に記載をした時間をかけて行う、質の高い、丁寧なコンサルテーションの裏側には”カッコ良い人を1人でも多く増やしたい”と言うビジョンが深く関係していると思うのです。

もちろん、ビスポークスーツを仕立てられるスキルを持つ齋藤氏ご自身も、ビスポークの持つ魅力は重々に理解されていらっしゃいます。しかし、1人で出来ることには限りがある。

ビスポークであれば、自分で仕立てられる数は月に数着と天井が自ずと決まってしまいますし、服を仕立てる以外にもトランクショーの開催や経営者としてのマネジメント業務などがありますから、顧客との接点を持ってファッションの素晴らしさを伝えたり、カッコ良い人を増やせる数も必然的に限られてしまう。

そこで、これらのビジョンを実現するための”手段”として、自身のフィッティングとカッティング能力を持って、高次元のDORSOのMTMスーツ/ジャケットを作り上げ、提案していると言うわけです。

MTMであればビスポークに比べて遥かに多くの顧客と接点を持つことが出来ますから、ビジョンを達成する上では理に適っていることは明らかですね。

■DORSOのスタイル
では、そんな思想を持つDORSOは、どういったスタイルを持つのでしょうか?

DORSOのMTMは齋藤氏がご自身の経験を元に、自分なりの工夫と美意識を反映させた独自のパターンがベースとなっているのですが、これまで所属してきたテーラーと、DORSOのスタイルは何が違うのか!?きっと、興味を持たれる方も多いのではないでしょうか。

齋藤氏の言葉を借りるのであれば、「(ご自身が感銘を受けた)イタリアのナチュラルな空気感」を多くに取り入れていると言います。

実際はどうなのか?店内にあったサンプルゲージを着用させて頂きましたので、普段からイタリアはナポリのサルトを好んで着ている私rm55の感性で評価をしてみたいと思います。

まず着せて頂いたのは、DORSOにおける最もベーシックなスタイルであると言う、こちらのスーツ(試着したのはジャケットのみ)。
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ゴージラインはフィレンツェスタイルに見られるような角度がつけられ、ラペルの形状はミラノスタイルの雰囲気も感じられる、クラシックかつドレッシーな雰囲気を醸し出している一方で、肩周りはやや丸みを帯びたソフトな表情であることが特徴的。
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ダーツは裾までは抜けておらず、ナポリスタイルのようなクセがないクリーンさは日本における多くのビジネスマンにとって受け入れられやすいスタイルのように思います。ナポリのど真ん中に居る私からすると端正さを強く感じますが、日本のどんな場所、シーンにおいても受け入れられやすいベーシックなスタイルとして設計されたのだと理解しました。
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続いて着用したのはイタリア色をより強めたモデルだと言いますが、こちらはゲージではなく、齋藤氏の私物です。私と背丈が大きくは変わらないので着用させて頂いたのですが、ベーシックなモデルに比べるとゴージの角度、表情が異なりますし、袖の落ち方なども、よりソフトでイタリア的。スタイルで言うとナポリに近い印象です。
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またダーツは裾まで抜けていますが、こちらはナポリを意識したと言うよりも、齋藤氏がイタリアで修業をした際の師匠の作り方がそうだったからと言うことでした。個人的には、こちらのモデルのスタイルが好みです。
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そして最後には、同じく齋藤氏の私物であるビスポークジャケットも着用させて頂きました。こちらは斎藤氏がカッティングを行い、縫製は別の職人さんに依頼しているのだと言います。
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スタイルは上記のイタリア色を強めた方のMTMモデルに近い印象ですが、こちらは手縫いで仕立てられている分、生地の違いを差し引いたとしても、MTMに比べると明らかに全体的に丸く、ソフト感が強く出ています。柄の合わせ方もかなり上手いですね。
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これまで齋藤氏が培ってきたスタイルをベースにしながらも、自身が影響を受けたイタリアの美意識を反映させることで、日常生活の中で心地良く着るためのリラックス感と、スーツ/ジャケットと言うクラシックな服が持つ凛とした表情を表現されたのだと想像します。

クセのあるナポリのスタイルが日常になっている私、rm55の感性からすると、直球ストレートのイタリアではなく、日本人としての感性を通して表現した、”端正な顔立ちのイタリア服”と言う印象です。日本の職場環境を考慮したスーツに合うモデルと、よりイタリア色を強めてジャケットモデルとして使いやすい2つのスタイルを用意していることも顧客にとっては魅力的な点でしょうか。


■DORSOのMTMクオリティ
そんなスタイルを持つDORSOのMTMクオリティはどうでしょうか。サンプルのゲージや、齋藤氏の私物を着用させて頂いた範囲ではありますが、忖度することなく私の感性で表現してみたいと思います。

まず率直な感想として、”想像していたMTMの着心地を良い意味で超えてきた”と言うのが正直なところでした。やはりマシンメイドのMTMの場合、イセを入れるにしてもミシンとハンドでは入れられる分量に違いがありますし、手縫いだからこそできる可動域を持たせる縫い方などには対応できません。

よって、ビスポークや手縫いに慣れた私の感覚からすると、マシンメイドのMTMだと肩回りや腕の可動域が限られ、腕を動かすと”つっかかり”を感じると言うイメージがありました。ところがDORSOのゲージでは腕組はもちろん、腕を前に出しても背中が全くつっぱらないのには驚きました。マシンメイドのMTMでもカッティング(パターン)でここまでのレベルが実現できるのかと。(※)
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※実際、サンプルを何回も制作し、パターンの改良を繰り返すと言う作りこみを行ったそうです。

ベーシックモデル、そしてイタリア色が強めのモデルともに、腕の可動域の問題はほぼないと言っても過言ではありません。生活の中で一番動かす肩、腕周りの稼働が良いと言うことは、それは”着心地が良い”と評価することが出来るわけです。首へのジャケットの乗り方や肩周りもソフトなので、一般的なMTMモデルの中でもかなり着心地レベルが高く、私がこれまで着用したマシンメイドのMTM用のゲージ等の中では一番動きやすかったです。
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ご自身のオーダーされたスーツやジャケットの着心地が堅苦しいと感じている方は、まずはサンプルゲージに袖を通してみられることをおススメします。

ではDORSOのビスポークモデルと比べるとどうなのか?と言いますと、試着したのは私自身の体型に合わせて仕立てられたジャケットではないと言う前置きを置きながらも、首回りや肩の入り方は、やはり異なります。ビスポークの方がしっかりと体が入る印象、体にフィットして納まってくる感覚があります。ビスポークとMTMは構造や生産工程、価格などが全く異なるので本来は比較してもしょうがないのですが、違いがあって然るべきなのかなと。

ただ、数十万円と言うお金と、時間をかけてわざわざビスポークをすると言うのは、ある意味では完全に趣味趣向の世界なので、実用品としてのスーツやジャケットと言う観点で言えば、MTMで十分に良いスーツが仕立てられると言うのが個人的にずっと思っていることです。
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と言うことで、気になる方は是非DORSOのMTM用ゲージを試着し、ご自身の感覚で味わってみてください。所有する既製品やご自分のMTMスーツと比べてみれば、違いは明らかかと思います。

■DORSOのラインナップと今後の展開
MTMスーツとして高次元の着心地を持ち、ソフトかつ端正なイタリアンスタイルを持つDORSOのラインナップと価格はどうなっているのでしょうか?齋藤氏に聞いてきました。
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まずDORSOのMTM 価格(税別)は下記の通りです。

・スーツ:   14.5万円~ 中心価格:20万円
・ジャケット: 10.5万円~  中心価格:17万円
※2023年3月時点

製作期間としてはオーダーから1ヵ月程度で仮縫い、そこから2ヵ月前後で納品と言うことでしたので、合計3か月程度の製作期間と理解しておけば問題なさそうです。

そして大きな特徴としては、"1着目限定で仮縫いサービス"を行っていると言う点です。採寸をし、一旦”仮の状態”で仕上がってきたスーツやジャケットを着用し、フィッティングの微修正を行うのが”仮縫い”です。

高価なビスポークでは当然の工程ですが、MTMのスーツやジャケットにおいて有償オプションではなく、オーダー料金の中に”仮縫いサービスがついている(1着目限定)”店舗をあまり見たことがないので、そういう意味ではより良いスーツ/ジャケットをご提案したいと言うDORSOとしての姿勢を感じることが出来る点かなと思います。

ちなみに仮縫いオプションがあったとしても、前編に記述しましたように、担当者が相応のフィッティングスキルを有していないと仮縫いの意味が全くないので、注意が必要。大切なのは仮縫いの有無ではなく、フィッティング担当者のスキルです。

なお、ビスポークはMTMでの経験を重ねる中で、”趣味趣向の世界に入りたい”と言う方に対してのみ現在は対応しているそうですから、その辺りに興味がある方はMTMスーツやジャケットでの経験を積みながら、ご自身の感性と相談されてみてください。
※ビスポークはMTMの中心価格のそれぞれ2倍程度(納期は4カ月~半年)と言う理解で良さそうです。

主力のMTMスーツ/ジャケット以外には、様々なニットを試された中で齋藤氏が気に入ったニットであると言う、イタリアのミラノのニットメーカー idascratch(イダスクラッチ)のオーダーニットの取り扱いもありました。
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現在はカシミア70%×シルク30%のハイゲージのクルーネック、タートルネック、モックネックを提案されており、バスト、袖丈、着丈の調整が出来て、
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準備のある色の中から好きなカラーでオーダーが可能だそう。価格は9.5万円(税別)とのこと。
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質感はかなり良く、色の出方も美しいです。私が愛用するマウロ・オッタヴィアーニも採用する、イタリアを代表する老舗紡績メーカーであるカリアッジの糸を使っていることもあって絶対的な価格は高いですが、高品質なカシミアシルクと言う素材と、イタリアのニットメーカーにオーダーが出来ると言うことを考えると、面白い試みかなと思います。
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私のような標準体型の方ですとなかなかニットをオーダーすると言う感覚にはならない方が多いのかもしれませんが、スポーツ体型で既製品が合わない方や、自分だけのオリジナルニットが欲しいと言うコダワリ派は是非ご相談されてみてください。

また服飾アイテムだと齋藤氏が気に入っていると言うアットヴァンヌッチのネクタイや
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イギリスのメーカーのホーズだと言う、PANTHERELLA(パンセレラ)の取り扱いがあります。
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更に齋藤氏がデザインをし、アクセサリーの職人さんが作り上げたと言うオリジナルのオーダーアクセサリーの展開(税別4.2万円~)もありました。DORSOの世界観を感じる、端正な中にイタリアの香りがするシンプルなデザインが特徴的。シルバー以外にも、ゴールドもあるようです。
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現在はベルトのバックルなども準備されているようなので、近いうちにDORSOのスーツやジャケットに合わせるオーダーベルトも注文出来るようになると言うことです。
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今回個人的に気になったのが、こちらのブルゾン。172cm 60kgで着用しているゲージは「46」。もともとゆとりあるサイジングのパターンだそうで、リラックス感ある表情が気に入りました。こちらは齋藤氏がパターンを作ったわけではないそうですが、DORSOの提案する生地であるドラッパーズの生地をのせた秋冬用が14.5万円(税別)、
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スペンス・ブライソンのリネン地をのせた春夏用が11.5万円(税別)だそう。こういったブルゾンにもネクタイを合わせたり、夏場はノーネクタイでブルゾンを羽織って仕事をすると言うスタイルも良いかなと思っています。
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今後は岡山産の生地を用いたデニムなど、DORSOの考える世界観を体現するドレス、カジュアルのオリジナルオーダーアイテムを充実させていきたいと仰っていましたし、体制が整えばビスポークの門戸を広げることも検討されているそうなので、齋藤氏の作り上げるDORSOの展開には要注目です。
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今回は久しぶりの再会となりましたが、日本各地のみならず、海外でのトランクショーなどでお忙しい中、長時間に渡ってお時間を頂いた齋藤氏には、この場を借りて御礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました!

また、そう遠くはない間にお会いできることを楽しみにしています。
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と言うことで、「前編」「後編」の2部構成でお送りした「DORSO(ドルソ) 齋藤力氏の魅力に迫ってみた!」はいかがでしたでしょうか?価格や納期等の情報はしっかりと齋藤氏に確認(2023年3月時点)して掲載していますが、その他の記事内容については私の感性に基づき、独断で書いています。よって、あくまで参考程度として頂き、是非、ご自身の感性でDORSOの世界観を味わって頂ければ幸いです。