Sciamat(シャマット)日本、本格上陸!!:後編
こんにちは!
本日は、前回に続く「Sciamat(シャマット)日本、本格上陸!!:後編」をお届け致します。
さて、本日は私が大変お世話になっているセレクトShopであるシャロンさんにて、世界のウェルドレッサーを虜にしているというブランド、Sciamat(シャマット)を扱うに至った経緯やその裏側などを、私rm55独自の視点と切り口にて捉えてみたいと思います。
■シャマットの哲学
まず、既にシャロンさんの公式HPにおいては、シャマットの特集ページが組まれておりますが、ご覧になった方はいらっしゃいますでしょうか!?8月14日(金)にアップされると伺っておりましたので、出来たてホヤホヤでございます。(笑)
※シャロンさんの公式HPより拝借しました。
前編に記載させて頂きました、シャマットのブランド・プロフィールの内容も、シャロンさんの特集ページとオーナーK氏のお話を踏まえて私が執筆させて頂きました。注目すべきは、この特集ページにはバイヤーであり、オーナーでもあるK氏によるシャマット取扱に関する経緯が、”バイヤーズ・コメント”として記載されていることです。
これによりますと、何年か前に日本に初上陸した際、シャマットには3つのラインが存在したと言います。
・ファーストラインはフルハンドラインである、「Valentino Ricci」
・セカンドラインは、8割がハンド仕上げである、「Sciamat」(サードラインとは異なる色のタグ)
・サードラインは、見える箇所のみハンド仕上げの「Sciamat」(オレンジタグ)
このうち、日本で展開されたのは、サードラインのみで、ジャケット単体のお値段が25万円~30万円程度という価格。一方のファーストラインであるフルハンドで仕上げた「Valentino Ricci」のスーツは、100万円越え・・・。さすがにこの価格ではごく一部の方しか購入することはできませんね。
当時は代理店がついていたそうですが、日本に展開されたのはサードラインのみ。そして、見える箇所のみがハンドになった理由は、「プライスを下げるために本意ではないが、そのような仕様になった。」と言うことだったようです。
確かに代理店というのは物量を増やすことで、売上が上がるわけですから、数を売るためには、”仕様を落としてでも、価格を下げる”ということは、ビジネス的にとらえれば十分に理解ができるわけですね。
しかし、現在シャマットは、全て「Sciamat」になったと。
つまり、セカンドライン、サードラインの展開を辞めて、全てファーストラインのフルハンドラインに統一されたそうです。
シャロンさんによるシャマットの(ちょっと紛らわしい!?・笑)ブランド・プロフィールには、下記のような記載があります。
『ブランド名の「Sciamat」は、ペルシャ語で「チェックメイト」を意味し、ブランドを常に洗練向上させて行く姿勢、そしてお客様への最上級の心配りへの思いが込められています。
Sciamat(シャマット)は、サルトの伝統なハンドメイド技術と、物作りへの教えを継承し、時代に左右されない、着る人の魅力を内から引き出すことのできるコレクションを展開しています。』
つまり、シャマットとしても、自分たちのブランドのコンセプト、考え方、これを表現できるのはフルハンドラインのみである、という判断をくだしたのではないか、とも思うのです。やはり売上の追求を第1に考えれば、仕様を下げてでも単価の低いラインをつくることは、取引量の増大に結びつきますから、企業と言う営利を追求する団体としては当然の選択肢だからです。
しかし、シャマットは売上の拡大を第一とせず、モノづくりとエレガンスの追求を第一とした。
そして、自分たちの良さを本当に理解してくれるパートナーと一緒にやっていく。その決意の表れこそ、ファーストラインへのブランド統合ではないか。
私は勝手に、そのように解釈致しました。
■シャロンさんの哲学
私は仕事柄、自ら企業を創業された、”創業経営者”と言われる方々に出会い、お話を伺う機会がこれまでも多々ございました。皆さま様々なタイプの方がいらっしゃいますが、共通しているのは強い「想い・こだわり」が明確にある、と言うことです。
そして、よく伺うお話が、売上を上げるため(収入を増やす)”のみ”であれば、別に独立する必要はなかったのだと。しかし、自らの”想いやこだわり”を実現する手段として、結果的に「起業」するに至った、というような趣旨のお言葉です。「起業」は”目的”ではなく、”手段”にすぎないと。
シャロンのオーナーであるK氏も、「まさか自分が起業するとは思っていなかった。」と以前仰っておりました。自らのファッション業界での長い経験を踏まえて、本当に良いと思うものを、出来るだけ現地価格に近い感覚で提供し、ブランドや職人の生き様やスタイルを、直接日本の顧客に届けたい。この想いを実現する”手段”こそ、シャロンの開業だったわけです。
K氏とはファッションに限らず、ビジネスを含めて色々なお話を伺う機会を幸いにも頂いておりますが、色々とお話を伺う中でも、「ブランドの良さを大切にする」というお言葉が非常に印象に残っています。
どういうことか。
例えば、シャロンさんで扱うアイテムの中には、シャロンさんが企画したエクスクルーシブなモデルというのが多々存在します。私が2015年SSで購入させて頂いたレ・スパーデのストレッチ・チノパンもそうですし、先日ポケット・チーフを購入したことをご紹介致しましたジ・イングレーゼのシャツジャケットやそれをベースとしたスーツなどがそうですね。
こういった独自の企画を起こす際、最も大切にするのは、「そのブランド、職人さんに敬意を払い、その良さ(強み)をしっかりと残すこと。」というような趣旨のことを仰っておりました。
具体的に申し上げますと、日本のマーケットに展開する際に、サイジングと言った必要な個所の指摘はするけれども、こうした方がもっと売れる、ここの仕様はマシンにして値段を下げたい、といった所までは指示をしないのだと。色々と指摘をすると、それはそのブランドのモノではなく、指示をした側のモノになってしまうと。
つまり、ブランドのアイデンティティのみならず、イタリアの服飾文化や伝統的に引き継がれてきた職人さんの手仕事の素晴らしさに敬意を払いながら、彼らの持てる力を最大限引き出していくことが、シャロンさんの哲学なのかなと。
「本当に良いもの」を、「現地に近い価格で提供し」、それらを更に「ビジネスとして成立させる」という姿勢には、個人的に感動すら覚えます。正直こう言った「想い・こだわり」と「ビジネス」を両立させるのは、「至難の業」である、と自分自身のビジネス経験を踏まえて理解しておりますが、それを追求しているのがシャロンさんなんですね。
■シャロン meets シャマット
そして、そんな「想い」と「こだわり」を持った両社が出会ったわけです。
バイヤーズ・コメントの中でK氏は、下記のように記載しています。
『Sciamatのミラノのショールームへ訪れた時、彼らは「やっと来てくれたか!君たちの様な人が来るのを、本当に待っていたんだ!」と言って、シャンパンを開けてくれました。
彼らは、自らクオリティーを落として日本のマーケットに参入するのではなく、自分達のやっている事を『理解してくれるパートナーが必ずいる。』とずっと思っていたそうです。』
これには一服好きとしてだけではなく、一ビジネスマンとしてしびれました。
最高の物を、最高の状態で日本に持ち込む。この意思決定は早々にできるものではありません。
なぜなら、お話の流れの通り、シャロンさんで扱うシャマットは最高の生地と品質をを持ったフルハンドのファーストライン。つまり、代理店が入って、日本に持ってきて販売した場合は、ジャケットでも60~70万円、スーツですと70~80万円、コートに至っては3ケタ近くにもなる至高のアイテム。
これらを、直で輸入し、出来るだけ現地価格に近づけるため、更に大きな意思決定をされております。それは、K氏のコメントをお借りすれば、下記の一言に尽きます。
『要は、Sharonで展開するSciamatは利益が殆ど無いのです。』
私は、店頭で価格を見ましたが、本当に驚きました。素人ながら逆算をしていくと、「利益がない」と言うのは、パフォーマンスでもなんでもなく、「事実」だからです。恐らくファッション業界の方が見られたら、ぶっ飛ぶ!?のではないでしょうかっ。それくらい驚異的なプライシングなんです。
もちろん服の価格としては、安くはありません。ただ、既述した前編、後編に渡ってお伝えしてきましたシャマットの魅力、そして最高の生地と職人による手仕事の結晶がこの価格で購入できる、と考えると、ありえない位に魅力的な価格である、とも同時に
思うのです。
マネージャのD氏も、「現状の原価率をこのまま維持するのは難しいと思う。」と仰っていたように、現在の価格は、採算性というビジネス上の理論を度外視した、「想い」によるプライシングです。来期以降は、きっと本来あるべき採算性を考慮した価格になっていくと思われます。
恐らくコート、スーツ、ジャケットの各アイテムは、サイズ毎に1着のみの入荷だと思いますので、シャロンさんの「想い」を受け取りたい方は、是非とも店頭にて、ご自分の目でお確かめください。そして”感じて”ください。きっと驚きの世界が開かれることと思います。(笑)
もちろん私も、そんなオーナーであるK氏、そしてシャロン関係者の方々の「想い」をしかと受け止めました!!(笑)